中国が香港市民の要求拒否?米国対中危機委はトランプに抗議の書簡

2019年09月03日 06:00

林鄭月娥行政長官(Wikipedia)

市民の抗議デモが続く香港では8月27日、林鄭月娥行政長官が記者会見で「緊急状況規則条例」の発動に言及した。

同条例には、香港政庁が抗議デモを「緊急事態」と判断すれば、議会の承認なしに、デモや通信、経済活動や人の移動などを制限できると定められている。

これに呼応するかのように、29日未明に中国軍のトラックや装甲車などの車列が香港の主要道路を走行する写真が30日にマスコミ報道された。中国当局は香港に駐留する部隊の交代としているが、収まる兆しのない香港市民の抗議デモへの威嚇が目的であることは明らかだ。

が、デモ隊は動じず1日午後に香港空港ターミナルを数千人が包囲した。短時間で警察に排除されたものの、出入り口にバリケードを築くなどして空港利用者にも影響が出た。授業が始まる2日朝には学生への授業ボイコットや労働者へのゼネストが呼び掛けられていることが報じられている。 

こうしてますます香港市民の抗議活動が深まる中、30日のロイターは「香港政府の抗議デモ対策案、中国政府が拒否=関係筋」との見出し記事を掲載した。記事にはこうある。

林鄭月娥行政長官は今年夏、抗議デモの参加者が掲げる「5大要求」について検討した報告書を中国政府に提出し、「逃亡犯条例」改正案を撤回すれば抗議デモの鎮静化につながる可能性があるとの見解を示した。ただ、中国の中央政府は、改正案の撤回に関する同長官の提案を拒否5大要求の他の項目についても、要求に応じるべきではないとの見解を示した

改めて香港市民の「5大要求」とは、①逃亡犯条例改正案の完全撤回、②警察と政府の、市民活動を「暴動」とする見解の撤回、③デモ参加者の逮捕、起訴の中止、④警察の暴力的制圧の責任追及と外部調査実施、⑤林鄭月娥の辞任と民主的選挙の実現、のことをいう。

そもそも要求の①を目的に始まった抗議デモだが、すでに香港の人口の3人に1人が参加する規模になっている上、数百名に及ぶという逮捕者や警察の暴力による多数のけが人を出している以上、②~④も抗議者側としては断固譲れまい。⑤は過去に挫折した雨傘革命の実現を目指すものだ。

それにしても林鄭長官が中国政府に条例撤回によるデモ鎮静化の可能性を報告し、それに対して中国政府が条例撤回どころか5大要求全ての拒否姿勢を示していたとの報道に、筆者は大いに驚くと共に、その報道がなされたことが、香港市民に更なる抗議活動の決意をさせる呼び水になるだろうと思う。

CPDCサイトより:編集部

このロイター報道とタイミングを同じくして、米国のCPDC(「Committee on the Present Danger: China」対中国危機委員会) が米国時間30日に、「Sends Open Letter to President Trump Urging Him to Stand With Hong Kong:トランプ氏に香港と共にあることを促す公開書簡を送る」(拙訳、以下同様)と題する記事を公表した。

トランプ大統領に宛てたその公開書簡は次のように書き出される。

極東における自由と米国の利益にとって危機的な時期に、私たちはあなたに手紙を書きます。ご承知の通り香港の人々は、その地域が英国の植民地でなくなった時に中国が尊重すると約束した自由と自治を維持するために闘っています。彼らがそうするのを私たちが支援する好機です。

中国共産党の指示の下、香港政府は香港の人々の要求を無視することを選びました。香港市民の自由はもはや尊重されず、そしてそのことは香港の自治権が極限状態にある証拠です。つまり中国共産党は1997年の引渡しの時点で英国と署名した協定に基づく約束を破っているのです。

そして手紙はトランプ大統領に、林鄭長官以下の香港行政府の法務長官、安全保障長官、警察長官そして中国政府の香港駐在員事務所王志民らを制裁するよう促している。制裁内容には、彼らの米国への入国禁止や米国資産の凍結などが盛り込まれている。

続けて手紙は、「香港の抗議者の5つの要求を直ちに公然と支持すること(Immediately and publicly support the five demands of the Hong Kong protestors.)」及び「1984年に調印された中英共同宣言協定の条件を順守し、実施することを中国共産党に要求する」よう促している。

この公開書簡の署名者には、CPDC委員会のBrian Kennedy会長、副会長のFrank Gaffney前国防副長官、Steve Bannon、著名な中国史研究家のArthur Waldron教授など23名が名を連ねる。

本年3月に、外交、軍事などの専門家や元政府高官、上下両院議員ら約50人で発足したCODCは発足時に「過去40年間、米国は貿易と経済に関して中国の好きに立場を与えて来た」とし、その結果「何兆ドルもの富が(米国から中国に)移転し、中国は米国との戦争・・に向けた世界レベルの軍隊を構築して来た」と声明した。

加えて声明は、「習が舵取りをしようとしまいと、中国共産党が権力を握っている限り、その政権は米国の破壊をその中核の目標として持つだろう」として、中国共産党の打倒を同委員会の目的にしていることを隠さない。そしてその姿勢は今回のトランプ大統領への公開書簡でも貫かれている。

トランプ大統領の対中貿易不均衡是正はその選挙公約ですでに明らかにされていたが、本年3月末と5月末の第二弾、第三弾の対中追加関税によってさらに強化された。CPDCがちょうどそれと同じタイミングで設置されたことは、CPDCのトランプへの影響力を窺わせる。

そのCPDCが、香港が生きるか死ぬかの瀬戸際にあるこの時期にトランプへの公開書簡を出したことの意味は大きい。日本も拱手傍観することなくCPDCに歩調を合わせて、政府や議会そして民間も加わって香港市民の支援に声を上げるべき時ではなかろうか。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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