自民党の自衛隊加憲案 解釈変更の余地あり --- 丸山 貴大

2019年09月09日 06:00

自民党の下村博文憲法改正推進本部長は2019年9月7日、立憲民主党の一部の支持者らが主催した憲法問題を議論する会合に出席した。そこで、自民党が示す自衛隊を憲法9条に明記する案について「自衛隊の任務とか職能的な分野が広がるのではなくて、あくまで位置づけるだけの話。生活とは全く直接関係がある話じゃない」と述べた(参照:JNNニュース)。

JNNニュースより

自民党憲法改正推進本部が発表した9条改正の「条文イメージ(たたき台素案)」では、9条1、2項を維持した上で、9条の2として「前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。

自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する」という条文を追加した。その条文は「現行の9条1項・2項及びその解釈を維持した上で、『自衛隊』を明記するとともに、『自衛の措置(自衛権)』についても言及すべきとの観点」に基づいて作成されたものだ。

9条の2にある法令用語としての「妨げず(妨げない)」は「ある規定が設けられた結果、他の規定や制度との関係がどうなるのか若干の疑問を生じるような場合において、その関係を法令上明確化しようとして用いられるもの」であり「その規定が設けられても、依然として、ある制度なり、ある規定なりが働いているものであることを表現している」(※1)

つまり、9条の2が追加されたとしても、9条1、2項の「戦争放棄」、「戦力の不保持」、「交戦権の否認」の規定は存続するということだ。その上で9条1、2項如何を問わず、自衛の措置については、その適用が排除されることはないということが明確に明文化されることになるのだ。

また、後法優先の原則により、現行9条に自衛隊の存在が覆い被さる形となり、それは戦力ではない、戦力とは異なる性質を持つ組織、という解釈が成立する。無論、優先である以上、それは占領とは異なる。

つまり、現行9条が全くもって無意味な存在となる死文化を意味するわけではないということだ。あくまでも、後法である9条の2の方が先んじられることになり、その下に現行9条が意味を成すということだ。

そこにおける最大の問題は、その範囲を誰がどのように決めるのかという具体的な指標や基準が明文化されていないことにあると考える。つまり、その範囲については、時の政権が決めるものと推察される。

例えば、立憲民主党の山尾志桜里衆議院議員(党憲法調査会事務局長)は「いわゆる自衛権の作用を画する概念として、『必要な自衛の措置』を憲法に入れ込んでいけば、自衛権の範囲に制約はなくなり、一層統制が利かなくなる。相当ゆゆしき事態だと、この案に強い危機感を持っています」(山尾志桜里『立憲的改憲』ちくま新書、2018年8月10日、41〜42頁)という見解を示している。

また、2012年に自民党が発表した「日本国憲法改正草案」の9条改正案における「自衛権」の意味について「新2項で、改めて『前項の規定は、自衛権の発動を妨げるものではない』と規定し、自衛権の行使には、何らの制約もないように規定しました。もっとも、草案では、自衛権の行使について憲法上の制約はなくなりますが、政府が何でもできるわけではなく、法律の根拠が必要です。国家安全保障基本法のような法律を制定して、いかなる場合にどのような要件を満たすときに自衛権が行使できるのか、明確に規定することが必要です」と説明している(※2)

以上のことから「イメージ条文」における「自衛の措置(自衛権)」について、条文上では何ら制約に関して触れられていないことに鑑みると、2012年草案同様、何ら制約の無い自衛権が明記されたことになります。つまり、その範囲については、法律に委ねられており、時の政権によって適宜変更可能ではないだろうか。

故に、自衛隊の任務や権限に変更が生ずるとはないものと考えているのは、現政権下においての解釈であり、方針に過ぎないのだ。つまり、未来永劫、政府がそのように考えられるわけではないということは明確に述べておきたい。

政権が変わればそこに変更を生じさせる根拠が「自衛の措置」という言葉に内在しているのだ。所謂「砂川判決」の言葉を借りれば、自衛の措置については「わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができる」余地は十二分に残されているのだ。

以上のことから、自衛隊の任務や権限の変更については、条文上、解釈次第によっては、変更の余地が大いにあると結論付けられる。そもそも、現状と何も変わらないのであれば、改正の必要性及び合理性は担保されないことは言わずもがなである。

(※1) 田島信威『最新 法令用語の基礎知識 三訂版』(ぎょうせい、2006年7月10日)95-96頁
(※2)自民党憲法改正推進本部HP「日本国憲法改正草案Q&A増補版」(2014年10月)10頁

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