本性を現した文政権の末路、米朝首脳会談の行方はこうなる!

高橋 克己

大法院判決以降の青瓦台の一連の所業、とりわけGSOMIA破棄で米国にまで弓を引いたのを見れば、今回のチョ・グク氏の法相任命など驚くに当たらない。国内対立が激化しようが、日米との関係が悪化しようが、北朝鮮(と、その後ろ盾の中国)との関係さえ保てれば良い、というのが文在寅の本性だ。

チョ氏の法相任命を強行した文大統領(青瓦台Facebookより)

金正恩からあれだけ罵倒されても、ストーカーが相手に冷たくされればされるほど付き纏いの度を高めるように、文氏が反応も示さないどころかむしろ北に強く縋りつく姿勢を見せることの理由が、果たしていわれるような高麗連邦樹立への使命感だけなのだろうかということが、これまで筆者には判らなかった。

ところが最近ネットや雑誌で、文氏が金日成の主体思想の隠れ信奉者であるとの話が表に出て来た。事実とすれば文氏にとって北の金王朝は、オウム信者にとっての麻原彰晃のような存在だ。ならば2018年4月の板門店での南北首脳会談で文氏が金氏に見せた阿(おもね)り、すなわち主人に接する下僕の姿勢の理由が腑に落ちる。

青瓦台Facebook より

つまり、2人に親子ほど年齢差があろうと、南北の経済に40~50倍の格差があろうと、文氏にとっては問題でない。むしろ没落した宗家を成金の分家が扶養するような、或いは分家も宗家と同じレベルまで落魄しようとするような、そういったことをしようとしていると考えると、傍からは自暴自棄に見える昨今の青瓦台の所業が理解できる。

文氏やその側近や支持者らはそれで幸せかも知れぬ。が、一度でも自由の空気を満喫し、大量消費社会の豊かさを知った韓国国民が、餓死が日常化しているような金王朝の支配下で生きることを欲している訳がない。

韓国の世論調査を見ると、反日は100%として、左派(容共)と右派(反共)がそれぞれ3割、何も考えていない層が4割といったところではなかろうか。筆者は3割の左派の内、鉄板の容共は日本と同様に多くても精々1割ほどではないかと思う。

残りの2割は、北朝鮮の現状を知ってはいるものの、まさか文在寅政権がそんな方向へ行こうとしているとは露ほども考えていない者らではあるまいか。三八六世代といったところで、その多くは朝鮮労働党一党独裁下の満足に食べるものもない社会と同化したいとまで考えてはいまい。

筆者は野にいた文氏が扇動した朴槿恵降ろしの第一の理由は、教科書国定化の阻止にあったと考える。朴槿恵は行き過ぎた反日・容共を教科書の国定化で是正しようとした。だが、仮にろうそくデモが起こらなかったとして、容共の度合いこそ薄まったかも知れぬが、反日は一朝一夕にはなくならない。

ではどうするか。目下ベストセラーになっている『反日種族主義』にしても、その主張が事実かどうかには両論あろう。が、先ずはそういった書籍が韓国国民に広く読まれること、そして教科書にも両論ある場合はそれが併記されること、といった歴史教育の是正を韓国が試みることが必要だ。

キム・ワンソプの『親日派のための弁明』やパク・ユハの『帝国の慰安婦』の様に、図書が発禁にされたり著者が有罪になったりするような言論の自由がない社会を、普通の社会に改めないことには韓国民は救われない。検察改革などの前に、異論を封じない社会を醸成してゆかなければなるまい。

そして北朝鮮の話になる。米韓のマスコミはここ数日3回目の米朝首脳会談に関係する記事を報じている。7日の「Stars & Stripes」が「US-North Korea nuclear talks still stalled, Trump’s envoy says(米朝核協議は未だ延びている、とトランプの特使が述べる)」という「Bloomberg」の記事を報じた。

朝鮮中央通信より引用

記事はスティーブン・ビーガン特使が金曜日(6日)、「我々は彼らから話があれば直ぐに応じる用意があることを北朝鮮に明らかにした」、「準備はできているが、自分でこれを行えない」と述べたと報じ、非核化協議を行うための取り組みをここ数か月、米国が行っていることが確認された、とした。

またビーガン氏がこの演説で、「合意に達したら米国が北朝鮮の経済を支援する用意がある」ことを強調し、「米国は両国間の関係を数十年の紛争から引き離すために取ることができる措置について話す用意がある」と述べたが、それらの動きが何であるかについて詳しく述べなかった、とした。

9日の東亜日報も、同じ6日にポンペオ国務長官が、「北朝鮮の核保有は彼らが望む安全を提供しない。北朝鮮が核を放棄すれば、彼らが望む安全を保証する」と強調したと報じた。ポンペオは「正恩氏は非核化を、米国は北朝鮮住民の明るい未来を約束した。正恩氏が約束を履行することを心から望むと再度呼びかけた」と報じた。

記事は、米国務省が今月の国連総会で北朝鮮に新たな圧力をかける措置を考えていること、民主党議員らが5日、トランプ氏に書簡を送り、北のミサイル発射が安保理決議違反であることを総会で確認し措置を要請すること、ミサイル実験は米国を直接には脅かさないが、韓国と日本には明白な脅威であると強調していること、も併せて報じている。

青瓦台の機関紙?ハンギョレの9日の記事「ビーガンの“説得と圧迫”は北朝鮮を動かせるか」は更に詳細で次のように書いている。(一部捨象した)

トランプとポンペオも、ビーガンの講演前後に「我々は北朝鮮の政権交替を望まない」(4日トランプ)とか「すべての国は自らを防御する主権を持つ」(6日ポンペオ)と強調した。先月、韓米合同演習の前後に北朝鮮側が浴びせた不満と反発を念頭に置いた発言だ。

米国の返信は“ニンジン”ばかりとは言えない。ビーガンが、朝米核交渉が失敗すれば韓国と日本が核武装に乗り出す危険性に言及したことが代表的だ。現職の米行政府の高位要人による「韓日核武装憂慮」言及は前例がない。

(*ビーガンは)「非核化の相応措置として在韓米軍兵力縮小は可能か」という問いに「我々はそれとは大きく離れている」と但し書を付けて、「“戦争準備態勢の維持と訓練”から“持続的な平和に向けた建設的で安定した役割”への転換には多くの戦略的再検討が含まれる」と強調した。さらに「緊張緩和は我々の兵力が戦争に備えるために絶えず準備体制を整える必要がないことを意味する」と説明した。

事案の敏感性を考慮して、(*ビーガンは)抽象的で慎重な表現を使ったが、要は非核化への相応の措置として「在韓米軍再調整」を排除しないという意味だ。在韓米軍の再調整問題は、韓米同盟はもちろん朝鮮半島平和体制構築、北東アジア戦略地形に重大な影響を及ぼす。

シンガポールでの米朝会談から早1年以上が経ち、金氏の鼻先に「ニンジン」をぶら下げて我慢強く北の軟化を待つトランプだが、そろそろ限界に近づいていることを暗示する一連の記事だ。2年前の「斬首作戦」ではなく、日本と韓国の核保有の可能性を北への圧力として仄めかし始めたということだ。

板門店に終結した3首脳(2019年6月30日、青瓦台サイトから)

韓国のGSOMIA破棄や一部の在韓米軍基地の早期返還の動きに加え、今後予想される駐留経費交渉での韓国の態度如何では、在韓米軍撤退が現実化する可能性もある。そうなれば「斬首作戦」の再浮上や米国による日本の核武装容認すらあり得ない話ではない。何しろ米国大統領はトランプだ。

果たして金正恩は中露側に付くか、日米側に付くか。筆者は間違いなく日米側に付くと思う。だとすればストーカー文在寅の存在は鬱陶しいに違いない。だから「シッ、シッ」と追い払っているのだ。この先もずっと日米朝に疎まれるかも知れぬ韓国民、この革命政権を選んだ不明に早く気付くべきだった。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。