恋愛もマーケも”嫌われる勇気”が大事 --- 三宅 隆之

2019年09月11日 06:00

マーケティング業界の方と話をしていると「マーケティングと恋愛って似ているよね」という話題がよく出ます。確かに人間が、その人(商品)に魅力を感じ、付き合い始め(トライアルし)、付き合い続ける(リピートする)という意味では構造が似通っており、共通点も多いような気がします。そこで今日は私の古くからの「モテモテ(古い?)」友人とのエピソードから得た、マーケティングでも使えそうな示唆について書いていきます。

この私の古くからの友人(仮にF君と呼びます)は私の幼稚園からの幼なじみですが、まあ小さいころからよくモテました。モテるという状態を正確に言うと「常に彼女がいる=彼女いない歴0ヶ月」の男でした。こういうと皆様は「それは相当なイケメン/運動神経抜群/超・人格者/勉強がやたらできる/実家が金持ち」のいずれかなんだろうと思うかもしれません。ただF君は、それのいずれでもありませんでした(※F君ごめんなさい)。にも関わらず彼はいつも彼女がいる、うらやましい男だったわけです。

そんな彼に私が社会人になってから「お前(F君)は、どうして女性に不自由しない(=彼女がいつもいる)のか?」と聞いてみたところ、彼の返事はこうでした。

簡単だよ。俺は俺を好きになってくれる相手がどんな人かが分かって、その相手が何をしてくれると喜ぶかを知っているだけだよ」というのです。

彼曰く、自分はイケメンでも、天才でも何でもないし、特に大したことがある人間ではない。でも何人(何十人?)かに1人ぐらいの割合で、彼のことを妙に気に入ってくれる女性がいるらしく、その女性には奇妙に共通点があり、彼は話して数分もすれば、その女性が「自分を好きかどうか」が分かるのだそうです。

なので彼は合コンにいっても、自分を好きな女性がその場にいなければ、ニコニコとその場はすごし、終わったら早々に引き上げて次の機会を待つ。そして合コンを重ねる間に「この女性は、自分を好きなタイプの人だ」と思った女性には、猛烈にアプローチをするということを繰り返して、結果として、彼女を絶やすことのない生活をしていたのだというのです。

そして猛アプローチをする前提として、モテるために自分を変えようと毛頭思わず「自分らしさ」は大事にしていたというのです。

まあ彼の行動をどうこういうのは置いといてですが(w)、これってマーケティングにもあてはまる気がしています。モノ余りといわれるほどの今、相当のイノベーションでもなければ、ほとんどの商品は「他の商品と、レベルが全然違う」というほどの差別性は生み出しにくい状況です。

また事業主の立場から言えば、研究開発でのイノベーションもなく、売り上げを立てるために予算・期間的に制約だらけの中で商品を作らねばならないシチュエーションも数多くあり、そこでは「競争相手よりずぬけてよい箇所がない=F君と同じ状況」の商品担当者となるケースは、しばしばあるように思うのです。

ただこの状況の中で、多くのマーケティング担当者が選択してしまうのが「あまり差別性がないからTVCMでも売って(=高額のプロモーションコストをかけ)、チカラ技で商品を知ってもらい・気に入ってもらおう」という行動です。さらにありがちなのは「どうせ差別性がないから、みんなが好きなタレントでも使って競合よりも目立つようにしよう」ということも、しばしば散見されます。

でもTVCMって、他のメディアから比べると、老若男女が見ている、オールターゲットのメディア。そこでみんなが好きなタレントを使うというのは、厳しい言い方をすれば「さして特徴のない男が、全方位外交で彼女を探している」という状況に近いと感じざるを得ないのです。

これ自体を悪いとは言いませんが、F君がはっきりと「自分を好いてくれそうな相手」に絞り込んで成功していたのと比べると、随分と目的志向でない(=彼女を作ろうという目的からはかけ離れた)ゆるやかなアプローチだと思います。

またこのような商品・ブランド担当者が、自身の活動の効果測定でフォーカスを当てがちなのが「自分達の商品を買ってくれた人の買っている理由」ではなく「自分達の商品を買ってくれない人の買わない理由」だというのも、見過ごせない状況です。

というのも、例えばF君の場合に当てはまるならば、F君を買わない(=選ばない)のは「イケメンでないから」「金持ちでないから」という回答が並ぶでしょう。でもそれを集めたところで、その商品が売れる(モテる)ようになる解決策のヒントが得られるのでしょうか?

むしろF君がしていたように「自分を買ってくれる(好きになってくる)理由」を突き詰め、ルール化したほうが、よっぽどその先の活動のヒントになるのではと思うのです。

以上のことから私が思うのは、

自分を好いてくれない相手(=消費者)に対しては、別に嫌われても構わないという「嫌われる勇気」を持ち、むしろ数少ない(?)、自分を好いてくれる人の動機・背景を深く掘り下げ、好いてくれる法則・ルールを見出し、その相手に出会った時にその法則・ルールに即した発信をしていくことこそが、自分がモテモテになる=商品が売れるポイントなのだ、ということなのです。

現在、好いてくれる=買ってくれている人に対しては、現在、インセンティブ提供によるCRMプログラムに留まっている状況が中心なように感じています。そこを一歩踏み出して「買ってくれている人の買っている理由」を明確化することで、新たな層の「買いたい理由」を作り出す出発点に立てるように思うのです。

三宅 隆之(みやけ  たかゆき)消費者行動アナリスト。株式会社インテグレート執行役員
2児の父。ランニング中毒者(月間走行距離は200km超)。「日本のマーケティングのここが変」「生活者に買いたいと思ってもらえるルール・コツ」についての気づきを発信していきます。株式会社インテグレートHP

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