台風15号:駅前の行列の人たちは「社畜」ではなく「被害者」

2019年09月14日 06:00

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
■Twitterアカウントはこちら→@takeokurosaka

先日、Twitterを中心に「東京の各、駅前に長い行列ができた」ことが大きな話題になっています。その中でも、「津田沼駅」には特に長い行列ができており、並んでいる人たちをみた人が「社畜乙w」とバカにするような投稿がなされています。

しかし、私はこれらの投稿に疑問を感じました。間違っているのは行列を作っている人達ではなく、彼らの上司や会社の経営層の方であると感じているからです。

納得がいかない気持ちをTwitterに投稿します。

身をもって体験した、駅前の行列

私は普段は熊本県に住んでいるのですが、台風15号がやってくるタイミングには東京にいました。たまたまセミナーに登壇するため、上京していたのです。セミナー会場とホテルの移動は徒歩だったのですが、空港へ向かう際には高速道路も封鎖されて身動きができず、やむおえずこの駅前の行列の一人に加わることになってしまったわけです。

※写真は筆者スマホで撮影したJR秋葉原駅の大混雑

不思議なのは、夕方に近い時間帯になっても「この人はこれから出勤するのでは?」と思しき会社員風の方も見受けられたことです。今から出社して会社に到着しても、もはや仕事をする時間は残されていないはずです。それにもかかわらず、長い行列を作って会社にいく理由はあるのでしょうか?しかし、そこまで考えても私は彼らを「社畜乙」とバカする気にはなれませんでした。

彼らは自分の置かれた立場から、経済的合理性のある行動をとっています。つまり、会社員という立場からの生存戦略と言えるわけです。私は昔、会社員やっていたので、彼らの立場はよく分かるつもりです。従業員は、会社や上司の命令には絶対逆らうことはできません。

もしも台風が来て電車が動かず、会社や上司から何も指示がないと言うなら、彼らが取る合理的な行動は「仕方なく駅前で行列に加わる」ことだと思うのです。人間は利己的な生き物であり、自分自身の経済的利潤を追求するのが合理的な行動ですから、彼らは正しい行動をしているように思えます。

世の中には会社での働くことに「価値提供」より「働く姿勢」に重きを置く人がまだまだ多いです。「台風だからといって、自己判断で家に留まるのはケシカラン!他の人を見習ってはってでも出社しなさい」という価値観の人は会社で重役についている年代の人にも結構います。

台風襲来時の自分の行動如何で、会社での評価が変わるとなれば、「無理してでも並ぶ」というもっともリスクが小さい行動に出るのは不思議なことではないと思うのです。

上司や経営層はなぜ指示を出さなかったのか?

駅で行列を作る人達の行動を決めるのは、彼らの上司や経営層です。問題はこの行列が前日から予測できていたにも関わらず、具体的なアクションを取らなかったことにあります。

9月9日の出勤時間帯から、電車がまともに動かないことは前日からハッキリと分かっていたことです。私も当日東京にいたのでよく分かりますが、運行情報を検索すると、各鉄道会社がどのような運行になるのかを情報を出していました。

また、ホテルのロビーに設置されていたテレビニュースも、「通勤時間帯に影響が出る模様」と繰り返し報道されていました。

しかし、結果的には会社員の方が長い行列を作ってしまったのは、会社からの明確な指示がなかったからと思われます。今の時代、「何時間待ってでも来なさい」と指示があれば、すぐさま「ブラック企業からひどい指示が来た!」と騒ぎが大きくなるでしょう。

しかし、そのような投稿は見つけられませんでした。思うにこのようなSNS拡散リスクを考慮して、会社側も「なんとしてでも来なさい」とは言えない事情があるのでしょう。

台風直撃が月曜日で、前日が日曜日と休みだったのですが、台風が来ることは金曜日から予期できていました。「大型台風直撃で、通勤困難の際はこのように対応して下さい」と指示を出すことはできたはずです。会社によっては

「今日は一日、在宅ワークで業務を進めましょう」

「災害時の特別休暇が適用されます」

など、従業員の安全とビジネスの合理性を考慮した判断が出て、然るべきと考えます。

従業員に明確な指示を出さないのは上司の怠慢

上層部が判断を下し、後は関係者にメールで一斉送信をすれば済む話であって、このような意思決定の伝達に大きなコストが掛かることもありません。最悪、メールやビジネスチャットが使えなければ、手間でも電話連絡をすることは可能です。

結果として行列を作ることになってしまったのは、上層部が本来やるべき意思決定という仕事をせず、出社可否は本人の主体性におまかせ、というもっとも合理性から遠い行動を取った結果と考えます。

日本人の国民的気質から考えるに、何も指示を出さなければ、「はってでも出社が最適解」 と考える人が多数派を占めることは明らかであり、同じ状況に置かれればどの会社も「出勤は本人におまかせ」になることは想像に難くありません。

この時期、台風一過の暑い炎天下で、長時間並ぶことは健康被害もさることながら、的確な指示を出してくれない会社への忠誠心も下がりますし、さっさと在宅ワークをしていたらできていたであろう、ビジネス機会損失を考慮すると、並ぶことに意味はないどころか、むしろ大きなマイナスと考えます。

天災への対応力

会社組織システムです。システムですから、台風などの毎年起こるような災害に対応する仕組みや、発生時の対応について定めておくことで組織として合理的、経済的な行動を取ることが出来ます。特に台風のような、毎年同じように繰り返し発生する性質の災害は、事前にコンテンジェンシープランを容易に策定することができます。

いざ、今回のような大型台風が発生した時には、速やかに必要な連絡がなされて、従業員の安全とビジネスの円滑性を維持することが求められると考えます。地震のように台風より遥かに予測不可能性の高い災害には、水や食料をしっかり備える会社はそれなりにあるのに、台風のようにより身近で経験回数も多い災害に備えたシステムを持たない組織が多いのは不思議に感じてしまいます。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

■無料で不定期配信している「黒坂岳央の公式メールマガジン」。ためになる情報や、読者限定企画、イベントのご案内、非公開動画や音声も配信します。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

関連記事

アクセスランキング

  • 24時間
  • 週間
  • 月間

過去の記事

ページの先頭に戻る↑