小泉進次郎を首相に推す世論の軽さ

2019年09月16日 06:00

人気と政策能力は別物

安倍政権の改造内閣で小泉進次郎氏(38)が環境相に抜擢されました。組閣後の世論調査(日経)で「次の首相にふさわしいのは誰」と聞くと、小泉氏が20%でトップ、安倍首相が16%で2位でした。8月末の調査では29%、安倍氏が18%でしたから、人気では断然、他を引き離しています。

私は首相候補に関する世論調査が幼稚だと思ってきました。調査するなら、第1問で「首相として政策能力は誰が高いと思うか」、第2問で「首相に誰がふさわしいか」と、聞くべきでしょう。世論調査ではいろいろ前提をおくことは、回答を誘導することになるとして、避けたのでしょう。

「首相に誰がふさわしいか」とだけ聞くことは、人気投票としての情報価値しかありません。有権者は政策能力の高さを比較したうえで、回答しなければなりません。人気投票のような調査は要注意です。政治記者(新聞、テレビ)に同じ質問すると、やはり「進次郎」がだいたいトップになる。「世論調査の軽さ」より「政治記者の軽さ」のほうが罪は重い。

間接選挙の国だから安易に回答か

米国の大統領選挙のように、直接選挙の国なら世論調査の結果が選挙を左右します。ですから政策能力を考えたうえで、「だれが大統領ふさわしいか」を回答するのでしょう。間接選挙の日本では、政策能力抜きの印象だけで回答する人が多い。せめてメディアはそのことを記事に付記すべきです。

人気が絶大な小泉氏が初めて閣僚に任命されたため、ネット論壇では「首相になったりしても大丈夫か」「小泉氏には国家(外交安全保障、歴史認識、憲法など)が足りない」などの懸念が指摘されています。「国家」が足りないのは、政治家としてのキャリアが不足しているためで、今、心配することではないし、小泉氏が次の首相になることも100%、ないと断言したい。

かりに安倍政権がスキャンダルか何かで、自民党政権が崩壊するような危機に見舞われれば、人気だけに頼って、小泉氏を首相に立て、国政選挙に臨むことはありえても、それ以外はほとんどない。

狭い分野のキャリアしかない

そうではあっても、将来の首相の芽は多分にある。その場合、小泉氏の弱点は政策能力が未知数であることが問題です。復興政務次官(震災対策)、党農林部会長(農業改革)、党筆頭副幹事長、党厚生労働部会長(社会保障)は経験し、今回の初入閣です。この程度のキャリアから政策能力のレベルを判断できません。

経済の基本である未経験の財政・金融は、感覚とか饒舌さではこなせない。多難な国際情勢はさらに複雑化するのに、外相もやっていない。それらをこなしてから「首相候補」というのなら分かる。要するにテレビなどで、天性の人気が先行している特異な政治家です。

政策能力の面で気になったのは、就任記者会見で、原発問題に触れ、あっさり「原発をどう残すかではなく、どうやったらなくせるか」と発言しました。原発は単純な問題ではありません。廃止なら廃止に伴って生じる問題に対する周到な対策、準備が必要です。

原子力規制委員会は次第に、原子力禁止・廃止委員会といっていいほど、原発に厳しい政策に傾斜しています。地元住民も再稼働に対しては濃淡があっても、新増設は恐らく全面否定でしょう。

実際問題として、原発は縮小していく可能性のほうが、復活していく可能性より高い。その場合、再生エネルギーをどう拡充するか、エネルギー価格が上昇していく場合、経済成長率の低下にどう対処するか。

メディアは小泉発言を深追いしていません。深追いすると、小泉氏の原発廃止論を拡散することになるのを恐れているのか。原発肯定派の読売新聞などは触れないようにしているのか、記事を書いていない。連載「新閣僚に聞く」(読売、9月15日)に登場した小泉氏に、「プラスチックごみ、原発汚染土の中間貯蔵施設の搬入」などを語ってもらったものの、肝心の問題に踏み込んでいない。不思議です。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年9月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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