韓国人と仲よくなるための想定問答:日常生活編 --- 浦野 文孝

寄稿

私は1990年にソウルに1年だけ住んだ。韓国は国として、歴史や事実を変えてまで、日本に対し自国の主張を押しつけてくるが、韓国人は個人としても、日本人に対して、議論をふっかけてくることが少なくない。

韓国に住んで分かったのは、持ちかけられた議論に反論することが重要だということである。議論を交わせば交わすほど、個人同士は仲よくなれる。アルコールが入れば完璧である(私はアルコールは弱いが)。険悪になっても、翌日にはけろっとしている。

思いがけないことを言われるから、予め理論武装しておかなければ議論できない。私の日常生活での経験から、私なりの想定問答を紹介したい(住んでいたのは30年前で、今は議論をする機会もなくなっているので、現在は変わっているようだったら教えてほしい)。想定問答の目的は相手を打ち負かすことではない。とにかく議論できるように準備することだ。

サムスン電子の本社がある水原市で開かれた日本政府を糾弾する決起集会(KBSニュースより:編集部)

想定問答例1

韓国人の主張:韓民族は単一民族である。日本にはアイヌ民族もいる。(単一民族であることを誇りにしている韓国人はこんな主張をしてきた。現在はそんな意識は低くなってきたようだ)

私の回答案:その通りだ。だが、世界の国は多民族国家の方が強い。犬も雑種の方が強い。第2次世界大戦で勝ったのはアメリカとソ連であり、負けたのはドイツ、イタリア、日本だということは思い起こすべきだ。

想定問答例2

韓国人の主張:日本人は漢字からひらがな・カタカナを作った。韓国人は独自にハングルを開発した。韓国人の方が独創的だ。

私の回答案:漢字からかなを作るのも独創性だ。日本人は8世紀にかなで日本語を表せるようにした。韓国人は15世紀まで韓国語を文字で表せなかった。韓国人がもっと早く文字を開発してくれれば、古代日本語と古代韓国語の比較ができたのかもしれないのに残念だ。

想定問答例3

韓国人の主張:外来語は日本語よりも韓国語の方が英語の発音に近い。(例えばマッカーサーは韓国語ではメカド、サッチャーはテッチョーになるのだが…)

私の回答案:英語のthの音を日本語はs、韓国語はdで表す。英語のfの音は日本語がh、韓国がpである。アメリカ人から見れば、どっちもどっちじゃないか。

ちなみに英語は日本人よりも韓国人の方がうまい。能力の違いというよりは、どんな時でも堂々と主張する韓国人のメンタルだと思う。世界では日本人ほど主張の下手な(よく言えば謙虚な)民族はないと思う。

一方、韓国人は漢字が書けない。1990年当時は勉強している人もいたが、現在はSNSを見ても若い人はまったく使っていない。日本語に比べて漢字語の比率が高いにもかかわらず、漢字語だと意識しないで使われている。日本人が漢字を書くと憧れの眼差しで見られる。

想定問答例4

韓国人の主張:日本人は馬を食べる。野蛮だ。…韓国人は犬を食べるけどね。

私の回答案:日本人は鯨も食べる。文化の違いだ(苦笑)

韓国人は自己解決して笑っている。住んでいた時はケタン(犬肉の辛い鍋はたくさん食べさせられた)。

想定問答例5

韓国人の主張:日本語は軽薄だが、韓国語は重厚だ。(これは説明が難しい。韓国人は軽薄を蔑み、重厚を貴ぶ。韓国語ではoの音は軽薄で、uの音は重厚に感じるのだそうである。同じ太っているという意味でも、tungtung-hada(トゥントゥンハダ)はぽっちゃりしてかわいいが、tongtong-hada(トントンハダ)はぶよぶよだというニュアンスになる。日本語は「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ…」のように「の」が多いから、軽薄に感じるのだそうだ)

私の回答案:韓国語は濁音が多いし、拗音(ゃゅょ)が多いから、日本人には乱暴に聞こえる。言葉は民族によって感じ方が異なる。でも、慶尚道サトリ(方言)に比べれば、ソウルの韓国語はきれいだね。

もちろん、定番の歴史の議論もよくあった。ここでは1つだけ。

想定問答例6

韓国人の主張:百済の王仁博士が漢字を日本に伝えた。韓国人のおかげで日本人は漢字を学ぶことができた。

私の回答案:(当時はこんなふうに答えた)中国の文字を取り入れたという点は同じだ。日本と韓国は生徒と先生ではなく、どちらも生徒だ。
(今ならこんなふうに答える)王仁博士は中国人だ。日本の古代の記録に残っている。百済の有識者は韓国人ではなかった。

2001年12月18日の天皇陛下(当時)の記者会見での発言もあり、今は以下のような議論もふっかけられるだろう。

想定問答例7

韓国人の主張:桓武天皇の母は百済王家の子孫。日本の皇室は百済の分家だ。

私の回答案:韓国の三国史記によると、新羅の第4代王の脱解尼師今は日本人のようだ。王朝の血が混ざっているのは、古代の日本と韓国は民族同士の交流が盛んだった証拠だ。

正しい知識に基づいていることが望ましいが、こじつけでも構わない。韓国人とは議論することで仲よくなれる。 ただ、現在ではこんな珍説もあるようだ。馬鹿らしくなってしまうが、回答案は考えておかなければならない。

想定問答例8

韓国人の主張:日本の柔道、寿司、うどん、歌舞伎、ソメイヨシノ、折り紙、納豆、忍者、日本語などもすべて韓国発祥。(八幡和郎さんの「捏造だらけの韓国史」(ワニブックス)より)
私の回答案:キムチの素になる唐辛子は、ポルトガルからまず日本に持ち込まれ、16世紀の豊臣秀吉の朝鮮出兵の時に朝鮮に伝わったらしいね。

さて、こんなことばかり書いていると、語学テキストのコラムか、企業の赴任マニュアルになってしまう。アゴラの記事らしくするために、最後にこんな想定問答を問題提起したい。

想定問答例9

韓国人の主張:日本は過去の韓国併合を謝罪すべきだ。

謝罪すべきだという意見は多い。松本徹三さんはもちろんそうだが、八幡和郎さんも、橋下徹さんも、韓国併合は申し訳ないことだったという立場だ。

私は誤解を恐れずに言えば、友人同士の議論では、謝罪してはならないと思っている。

私の回答案:日本による韓国併合は、日本が強く、韓国が弱かったからだ。日本は明治維新から富国強兵で努力し、日清戦争、日露戦争で勝った。韓国は官僚は腐敗し、宮廷は混乱して、改革は進まなかった。いったいどんな努力をしたのだ。反省すべきなのは韓国だ。日本は謝罪する必要はない。

暴論に聞こえるかもしれないが、同じように考えている韓国人は少なくないというのが実感だ(おそらく日本人でもいると思う)。

特に印象的だったのが、帰国間際に旅行した鬱陵島で同部屋だった韓国軍のROTC(予備役将校)だ。2泊3日の予定が強風で船が出なくなり、何と6泊もずっと一緒だった。たまたま民宿のテレビで、政治家だったと思うが、日本を非難するニュースが流れていた。ROTCは「何を言っているんだ。韓国が弱かっただけだ」と苦々しい表情で怒っていた。

一般の韓国人だけではない。盧泰愚大統領(当時)が韓国大統領として初めて日本の国会で演説したのは1990年5月25日だ。

過去の暗い時代、わが民族に強いられた大きな苦痛と試練、その想像に耐えがたい悲劇を今、この席で話す必要はない。今日、われわれは国家を守ることのできなかった自らを反省するのみであり、過去を振り返ってだれかをとがめたり、恨んだりしようとは思わない。私が申し上げたいのは、両国民の真実に基づく理解であり、それを土台とし明るい未来を開くということだ。(日本経済新聞1990年5月25日夕刊より)

私はこの演説をソウルで知った。勇気ある演説に感動したことを覚えている。韓国で非難する声はなかった。天皇陛下(当時)が前日の晩餐会で語った「痛惜の念」に対しては「よく使う言葉じゃないだろう」という意見はあったが。

「日本は韓国併合を謝罪すべきだ」という議論に対し、私が「韓国が弱かったからだ」と反論しても、頭ごなしに怒り出す友人はいなかった。

もちろん、国を代表する政治家や有識者が言える言葉ではない。韓国の政治家が自らを弱かったというのはよくても、日本の政治家が言うのはご法度だろう。

しかもこの回答案には大きな弱点がある。竹島も北方領土も、現在、韓国やロシアが実効支配しているのは日本が弱いことが理由になってしまう。池田信夫さんは8月18日の記事で「日本はなぜ慰安婦問題で韓国に敗北したのか」を論破した。国際社会に対する日本の外交力、発信力が弱いからだ。

3月11日の日経ビジネス記事で女優の黒田福美さんが語っているように「韓国には日本人の怒りが伝わっていない」。伝わっていないのは、韓国社会に対しても、日本の外交力、発信力が弱いからだ。

なぜ日本の外交力、発信力が貧弱なのかと言うと、土台となる個人の発信力を鍛える訓練を日本人が受けておらず、議論に慣れていないという問題があると思う。謙虚が美徳だというのは国際社会では通用しない。

まず日常生活で議論するところから、日本人は変わっていかなければならない。人は議論しなければ分かり合えない。議論した後は握手する。日本には「竹を割ったような」という素敵な比喩もある。

浦野 文孝
千葉市在住。歴史や政治に関心のある一般市民。