バロンズ:成長に重要なのは、金融政策より財政政策か

2019年09月17日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは鉄道企業を取り上げる。CSXと言えば190年の歴史を誇り、北東部と中西部の間を走る米国最古のボルティモア・アンド・オハイオ鉄道を有する。同社は、3.4万kmに及ぶ東海岸線のコストを削減した結果、利益が過去3年間で急増してきた。株価のパフォーマンスも同様で、S&P500種株価指数の4倍に相当する。

CSXだけでなく、ユニオン・パシフィックやカナディアン・ナショナル・レイルウェイなど、鉄道大手はウォール街のお気に入り銘柄といって過言ではない。生産性の拡大や運賃の引き上げ、経済成長に伴い輸送料の拡大を遂げてきた。

さらに、Precision Scheduled Railrading(PSR、これまでのハブ・アンド・スポーク・システムすなわち中心拠点に貨物を集中させ、そこから拠点に分けて配送する仕組みから、発送地から目的地の間で輸送を完結させ、稼働率の引き上げとコスト削減を目指す手法)と呼ばれる戦略が奏功した格好だ。

しかし、米中間の貿易戦争を背景に輸送量は減少傾向にあり、トラックとの価格競争も激化しつつある。今後、鉄道銘柄はどうなっていくのか、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は9月17〜18日予定の米連邦公開市場委員会(FOMC)に焦点を当てる。抄訳は、以下の通り。

中銀は経済的な影響力を失いつつあるのか—Are Central Banks Losing Their Economic Clout?

FOMCは約6週毎に開かれるが、9月17〜18日は一段と重要な会合となるだろう。とはいえ、Fedや世界の主要な中央銀行は、大きな転換を迎えつつあるかもしれない。

金融政策は、過去40年間と違って変化を遂げつつあるようだ。金利は過去最低水準にあり、マイナス金利の国債が溢れるなか、中銀が先進国の経済を導き、維持するといった役割は終焉に向かっていると考えられよう。代わって、財政政策こそが何より重要となってくるのではないか。

それこそ、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁が9月12日の定例理事会後の記者会見で伝えたメッセージだ。日本に至っては、30年にわたり世界で最も低金利の政策を続け経済停滞とデフレから脱却できていないところ、財政刺激策を検討しつつあるようだ。

米国での財政政策は、既に緩和的である。2019年度(2018年10月〜19年月)の財政赤字は11ヵ月間で1兆ドルを突破した。9月の年度末は財政黒字となる場合が多いとはいえ、国内総生産(GDP)比で4%超となる公算が大きく、これは景気拡大11年目としては異例と言わざるを得ない。

CBOの財政赤字見通し、2018年4月時点より悪化しないとはいえ・・。

cbo

(作成:My Big Apple NY)

ECBは10bpの利下げを決定し、中銀預金金利をマイナス0.5%に設定した。また、量的緩和の再開を決定、月当たり200億ユーロの資産買入を行なう。しかし、それが重要ではない。

ロンドンに拠点を置くシャード・キャピタルのビル・ブレイン氏いわく「欧州は、財政の超高速道路という新たな道ヘ踏み出した」という。その証左として、ドラギ氏による「財政政策が責務を負うべきだ」との発言を引用しただけでなく、政府に対し「効果的で時宜を得た方法で財政余地」を活用すべきと訴えたとの見方を寄せる。

欧州政治が財政刺激策で同調することを確実とさせるべく役割を担うであろうラガルド次期ECB総裁にとっては、完璧なお膳立てだ。ブレイン氏はまた、ユーロ圏での債券発行増が債務危機を引き起こす懸念するより、ECBが赤字を補填する上で発行された国債を吸収すべく買入枠を拡大すべきと主張する。

そうなれば、銀行にとって税金と化すマイナス金利状況下では、喜ばしい事態となるだろう。特に貯金に励むドイツ人にとっては、好都合だ。独ビルド紙は、ECBに関する記事で「ドラギリア伯爵(ドラキュラ伯爵をもじって)は、我々の口座を吸い上げてしまう」と伝えていた。

ドイツは、インフラと気候変動向け支出を財政規律に抵触しないよう捻出すべく独立した公的機関を立ち上げる方向で検討に入った。メルケル独首相も前向きとされ、5年に及ぶドイツの財政黒字に変化が現れつつある。

米国みずほ証券のスティーブン・リシュート米国担当首席エコノミストによれば、日本も財政刺激策を講じる可能性がある。安倍首相は消費税を8%から10%に引き上げようとしているが、同氏は東京出張中に現代貨幣理論(MMT)に絡み興味深い話を聞いたという。MMTは、中銀がファイナンスすれば、財政赤字を受け入れるというものだ。インフレ上昇圧力が高まる場面では有効ではないが、足元でインフレは低過ぎる水準にある。

Fedに視点を移すと、FF先物市場では25bpの利下げが89.6%織り込まれている。その裏で、トランプ大統領は追加関税措置が不確実性を高めるなか、経済を過熱すべくゼロ金利あるいはそれ以下を求めている。

Fedは既に保有資産圧縮を停止しており、満期を迎えた保有債券の元本を米国債へ再投資するのだろう。量的緩和の再開は、次の景気後退入り局面まで手控える見通しだ。いずれにしても、MMTと大した違いがあるようには見えないが。

米株高へ転じる一方、米債利回りが上昇中だ。米株の勝ち組はモメンタム銘柄や割安株で、モメンタム銘柄ではテクノロジー、公益、消費財関連が挙げられ、割安株と言えば金融とエネルギーだ。

9月9日週まで、米株市場は米国債利回り急低下を受けて二極化していた。ソシエテ・ジェネラルのクオンツ・リサーチ・ヘッドンのアンドリュー・ラプソーン氏によれば、経済鈍化へ懸念と安全資産への探究心から、低ボラティリティ・低リスクの銘柄に資金を流入させていたという。つまり、債券に近い銘柄に人気が集まり、公益や生活必需品といった配当銘柄がそれにあたる。その間に成長減速への警戒感から米10年債利回りはレーバーデ—前の8月末に1.47%へ低下、2016年につけた過去最低である1.36%に接近したものだ。

しかし、米10年債利回りは9月13日に1.88%へ急上昇した。さらに、ブルームバーグ USピュア・モメンタム・ポートフォリオ(過去1年間で高いリターンを遂げた銘柄のロング、低いリターンの銘柄のショート)も過去10日で最悪のパフォーマンスとなった。米経済減速見通しに基づいた米国債や配当銘柄などへの過剰な投資が行なわれてきた証左だ。

エバーコアISIによれば、米国債利回りの上昇は「3度目のミニ・リセッション」の終焉を告げるものだという。米債利回りの上昇に加え、9月FOMCでの25bp利下げにより、逆イールドへの懸念が低減するというわけだ。

Fedが利下げすればFF金利誘導目標のレンジは1.75〜2.0%となり、米10年債利回り水準のほぼ並ぶ見通しだ。さらに世界の短期金利が低下をたどるだけでなく、マネーサプライは拡大し、社債スプレッドはフラットなままだ。エバーコアISIは、これら全てが成長にポジティブと判断する。やはり、卵をひとつのバスケットに収めておくのは賢明ではないのだろう。

——一時期の景気後退懸念はどこへやらという趣きがありますが、それもこれも米中首脳会談が10月初旬に開催され、そこで何らかの妥結が生まれるとの期待に基づいているわけで。仮に2020年に大統領選を予定する米国、建国70周年記念を迎える中国、経済の急減速を回避したい両国が歩み寄れなければ、米株相場はトランプ政権の中間層向け減税策に期待を掛けるのでしょう。アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリートが指摘するように、米国も成長拡大を目指すにあたって財政政策に依存せざるを得なくなってしまうのか・・。

(カバー写真:WEBN-TV/Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年9月16日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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