値上げの仕方

2019年09月22日 14:00

カナダでたまに行くチェーン系のレストラン。以前の店舗が300メートルほど駅の近くに移転して新規開店になったので行くと店の広さは2倍ぐらいになり、大変おしゃれです。席待ちの客が入り口にあふれています。ただ、メニューを見ると移転前に比べて明らかに価格が違います。あれぇー、こんなメニューだったかなと内容も刷新し、違う店に入った感すらあります。

カナダ人はケチと言われています。高い住宅を購入するので無理なローンがあることが一因なのでしょうが、消費意欲は強いと思います。そして客が入る店、入らない店が明白に分かれる一つが飲食店です。チェーン店でも近年はどの店も同じの「金太郎飴」の時代ではないのだと思います。それぞれの土地や眺望、客層に合わせて店舗構成を考え、場所に合ったベストなものを提供するというスタイルに変ってきていると思います。

※画像はイメージです(GoToVan/flickr=編集部)

スターバックスのアップグレード版、Starbucks Reserve Bar(日本ではリザーブ ロースタリー)も同様でバンクーバーの場合、400㎡もある巨大店でゆったりコーヒーが飲めるということでホテルのラウンジのようなものを想像しがちですが、実際には長テーブルにすわってノートパソコンをいじる人がいる点は変わらないようです。しかし、プレミアムプライスを払っていることは間違いありません。

値上げする店とできない店の違いは値上げに対してクオリティを伴って変化させているかどうかがポイントではないでしょうか?

日本の場合、メディアなどが「同じ商品の価格や単価が上がる」という吹込みがなされがちですが、北米では品質やサービスを変える際に併せて価格を見直す(上げていく)という仕組みが多いと思います。

私がレンタカーの単価を車を変えるたびに少しずつ見直したり、マリーナの停泊料を少しずつ引き上げているのは単に値上げしているだけではなく、投資をしてよりお客様に喜んでもらえる付加サービスを増やすことでその一部を頂戴するということなのです。その場合、多くのお客さんにはご納得いただいています。

バンクーバー近郊のある店で一枚850ドル(約7万円)のピザを売る店があり、大変にぎわっているそうです。そのピザにはロブスターやキャビア、トリュフなどが満載されているようでもう少しお値段の安い1万円程度ならキングサーモンやロブスターなどが乗ったものもあるそうです。なぜにぎわうのか、多分大半の客はそんなピザは食べません。

しかし、それだけの品質を提供するんだというウリが重要なのではないでしょうか?つまり、あの店の一番高いものは買えないけれどこれは食べたよ、とか買ったよというのが消費者の心をくすぐるのだと思います。

oldtakasu/写真AC(編集部)

日本の皆さんが大好きなルイヴィトンでも何十万円もするバッグはホイホイ買えないでしょうけれど数万円ぐらいのものはプレゼントや自分へのご褒美で購入する人は多いでしょう。一つの戦略に「あの高そうな店」「サービスがしっかりしている店」で購入することに高い満足感があるからなのです。

バンクーバーのベンツの店に修理に持っていったところ、店先はValet Parkingになっており、車を横付けすると店の人がさっと駆け寄り「お車をお預かりします、どうぞ、お店にそのままお入りください」と言われました。店員も丁寧でゆったりしたソファーに座れば気持ちも大きくなります。つまりお金を取る仕組みがそこにはあるのです。

一方で何でもお金をかけていたら破産してしまいます。そのあたりのメリハリはみなしっかりしています。「金持ちほどケチ」というのはどこに価値観を見出すのか、このお金を払う理由はどこにあるのかをいつも考えています。なので日本で10円、20円の値上げを恐る恐るするならばいっそのこと、中身やパッケージを刷新し、50円、100円上げるのが正しいやり方だと思います。

日本は何が何でも安くするということにこだわりすぎました。おまけに公称価格と実勢価格があります。海外にもそれはありますが、日本の場合、結構それが多く乱発気味です。お得意様には破格、振りの客(馴染みではない客)にはフルチャージという発想そのものがいけてないと思います。(こちらではなじみの客にはもっとサービスして喜んでもらい、その代わりもっと払ってもらうというスタンスです。)

日本の取引先銀行からレター。インターネットバンキング使用料を今までの料金から3倍にします、と。3倍?3割増しでも高いと思うのに3倍?それも唐突に?下手なビジネスだと思います。そんな衝撃的レターを突然よこすなら担当が事前に電話かメールすべきでしょう。

日本はもう一歩、ビジネスセンスを磨いてもらえれば値上げに際して客も商売する側もウィンウィンの関係になれる方法があるのではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月22日の記事より転載させていただきました。

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