韓国大統領府サイト開設と日本の広報 --- 浦野 文孝

2019年09月23日 06:00

私が9月17日のアゴラに「韓国人と仲よくなるための想定問答:日常生活編」という記事を投稿し、「韓国社会に対する日本の外交力、発信力が弱い」ことを指摘したところ、翌日に韓国大統領府が「日本の輸出規制に対する韓国政府の対応」という日本語サイト(Korea.net)を開設したという報道があって、びっくりしてしまった。

Korea.netより

改めて、韓国政府の発信力を目の当たりにした。日本人に韓国の立場を広報しようという姿勢は、日本も見習うべきだと思う。

内容については、日本人のネットでの反応は散々だし、安積明子さんも「日本人には読みづらい構成」とコメントしている。肯定的なコメントは1つも探せなかった(野党もコメントなし)。

ただ、私は大統領府サイトの「日本の輸出制限に関する基本的な立場」の以下の指摘は気になっている。

大統領府サイト

根拠が不明確→ 韓国大法院(最高裁判所)の強制徴用判決に対する貿易報復

  • 両国間の信頼関係が損なわれた(7月1日)」、「フッ化水素の北朝鮮への横流し疑惑」(7月5日)、「通常兵器キャッチオール規制が不十分(7月12日)」などと、理由についての説明が二転三転している。
  • これは、日本政府の輸出規制措置が根拠もなく恣意的に取られたものであることを示している。
  • 日本は、韓国の輸出管理制度が不十分(不適切事案、キャッチオール規制の不備など)だと指摘しているが、具体的な根拠を提示していない。

日本が具体的な根拠を示していないのは事実である。このサイトは日本人にそのことを気づかせるぐらいの効果はあるわけだ。

日本政府の見解は、経済産業省サイトの「韓国向け輸出管理の運用の見直し」にまとめられている。7月1日、8月28日に発表している輸出規制の理由は以下のとおりである。

経産省(7月1日)

日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況です。こうした中で、大韓民国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生…

経産省(8月28日)

韓国の輸出管理制度や運用に不十分な点があることなどを踏まえ、日本の輸出管理制度を適切に実施するために運用を見直したものであり、日韓関係に影響を与えることは意図しておらず、ましてや韓国政府が主張するような「貿易報復」ではありません。

つまり、輸出管理強化の理由は、自分の胸に聞いてみろ、と言っているわけだ。経産省は、韓国の日本の輸出管理カテゴリーの変更については、以下のような質問を提出している。

経産省(9月3日)

産業通商資源部が8月12日に発表した戦略物資輸出入告示の改正案に関して、その(1)改正理由、(2)日本を「ガ2」地域に分類した理由、(3)制度の詳細について質問をしている…

日本が理由を示していないのだから、韓国の回答も期待できないだろう(水面下で落としどころは探られているのだろうか)。

日本側の根拠については、フジテレビが「韓国から戦略物資ダダ洩れ?」というニュースを流している。

韓国にとって「不都合」なデータを記したリストを我々は入手した。…リストには「戦略物資無許可輸出摘発現況」というタイトルが付けられている。内容は驚くべきものだ。2015年から2019年3月まで、韓国から戦略物資が無許可で流出した不正輸出案件は、何と156件もあったと記されているのだ。… このリストの事案は日本政府が主張する「不適切な事案」と一致するとは限らないが、韓国政府は大量の戦略物資が不正輸出されている現状と向き合うべきだ。

これが事実なら管理強化の根拠になるとも思われるし、逆にこれは韓国が不適切事例を取り締まっている証拠だと言われたらそうかもしれない。いずれにしても、現在の公開情報では、一般の日本人は韓国人から根拠がなく、徴用工問題の報復だと指摘されたら反論できない。

1例だけでもいいから代表的な事例を示した方が、日本人にも国際社会にも納得が得られると思う。

経産省のまとめサイトでは、日本人が韓国向け輸出規制について、日本政府の立場を理解するのも不十分だ。文書を並べただけで親しみはないし、参照したいと思わない。しかも日本語しかない。

確かに、安積さんのコメントにもあるとおり、日本外務省は竹島に関するYouTubeを5年前から12カ国語で公開していて健闘していると思う。しかし、当初は韓国外交部YouTubeに先行していたが、現在、英語版の視聴回数では完敗だ。

国内広報でも、日本外務省の日本語YouTubeは111万回、韓国外交部の韓国語YouTubeは人口半分以下なのに1230万回と、大差をつけられている。もちろん韓国の組織票はあるだろうが、日本人の関心を高められていないのは歴然としている。

日本外務省YouTube竹島について
日本語(13年10月、1分26秒) 112万回
英語(13年10月、1分59秒) 27万回
韓国語(13年12月、1分26秒) 11万回

韓国外交部YouTube大韓民国の美しい領土独島
韓国語(13年12月、4分18秒) 1230万回
英語(14年2月、4分56秒) 246万回
日本語(14年1月、4分21秒) 34万回

韓国外交部YouTubeは、開国前の古い記録にも触れているから説得力があるように見えてしまう。「美しい領土独島」というタイトルのつけ方もうまい。

韓国向け輸出管理問題も、日本経産省は早急に日本の立場を広報するサイトを、日本語、韓国語、英語で立ち上げ、日本人が自分の言葉で語れるようにすべきだと思う。レーダー照射問題の韓国国防部YouTubeのように、内容がないのに体裁だけよくしてくれとは言わないが、もう少し広報センスを発揮してほしい。

浦野 文孝  元ジャーナリスト
1961年生まれ、愛知県出身、千葉県在住。大学卒業後、団体職員・雑誌記者等を経て現在は食品会社勤務。政治や歴史に関心の高い一般市民。注目分野は外交防衛、年金、皇室等。

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