バロンズ:FRB内で紛糾する利下げ論、反対派の考えとは

2019年09月23日 11:30

バロンズ誌、今週のカバーはオピオイド訴訟が与える投資家への影響についてフォーカスする。米製薬大手ジョンソン・アンド・ジョンソンのほか、イスラエル製薬大手テバ・ファーマシューティカルなどは、芥子の花から組成された鎮痛剤の一種オキシコドンを錠剤などのかたちで生産してきた。鎮痛剤として合法の医薬品を販売してきた製薬会社は、中毒に至るような乱用問題をめぐり責任はないとの立場にある。しかし、州・地方政府などがオピオイド中毒をめぐり訴訟を進め、ウォール街のアナリストは製薬会社による和解金などの支払いが1,500億ドルを超えると予想する。バロンズ誌がオピオイド訴訟問題に対しどんな見通しを示しているのか、詳細は本誌をご覧下さい。

アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週のカバーは9月FOMCで反対票を投じたボストン地区連銀のローゼングレン総裁の意見を軸に取り上げる。抄訳は、以下の通り。

(カバー写真:Phillip Pessar/Flickr)

Phillip Pessar/Flickr)

Fedはなにをしようと、集中砲火を受ける見通し—The Federal Reserve Will Get Flak No Matter What It Does.

米連邦準備制度理事会(FRB)は短期金利の上昇をレポ取引を通じた資金供給で解決に奔走し、注意を他へ逸らす手法に打って出た。焦点となったのは、成長著しい企業だ。ボストン地区連銀総裁で今年の投票メンバーであるローゼングレン氏は、20日に名前を明かすことなく「多くの都市で展開する共用オフィス運営」が与える経済的なリスクを取り上げた。言わずと知れたウィワークを挙げており、親会社のウィカンパニーは16日、評価額を470億ドルから4分の1へ引き下げ、9月中と目されていた新規株式公開(IPO)を延期すると発表した。同社の2025年に償還予定のジャンク債(クーポン7.875%)が6%も急落し、96.57セントへ沈んだ。

Fed高官が米株市場について言及するのは、初めてではない。2014年7月には、イエレンFRB議長(当時)が「著しく上昇したバリュエーション(substantially stretched valuations」と一部のセクター、特にバイオテクノロジー関連に対し発言し、話題になった。何より有名なコメントは、グリーンスパンFRB議長(当時)による1996年の「根拠なき熱狂(irrational exuberance)」だろう。

米株は足元、最高値に接近中。

(出所:Stockcharts)

(出所:Stockcharts)

ボストン地区連銀のローゼングレン総裁は、共用オフィス運営のビジネスモデルに対し、建物やオフィス自体を長期契約させた後、設立まもない中小企業に短期貸しするという観点からリスクが高く、経済の下振れ局面で脆弱性をはらむと指摘した。ウィワークとビルのオーナーは、家賃収入を確保できないリスクに直面しかねない。

ローゼングレン氏は、共用オフィス運営側が自社に債務が及ばないよう特別目的事業体を活用する可能性を挙げた。しかし共用オフィス運営が多くのビルに進出する裏側で、銀行側は不動産オーナーへの融資における債務不履行や損失を被りうる。つまり、次の景気後退で商業不動産市場ヘの著しい打撃を与えることになるだろう。

イエレン氏やグリーンスパン氏の警告は時期尚早だったため、ウォール街での失笑を買った。ITバブルが崩壊したのは、グリーンスパン発言から4年以上経過してからだった。バイオテクノロジー株はイエレン氏の発言から1年後に再び急騰したが、過去5年間のiシェアーズ・NASDAQ・バイオテクノロジー(IBB)のリターンは15.94%高に対し、SPDR S&P 500 ETF投資信託(SPY)は64.63%高である。

Fed高官によるカサンドラの警告とローゼングレン氏の指摘の違いは、過剰流動性がこのようなリスクをもたらす点だろう。ローゼングレン氏は「比較的安定的な環境での非常に低い金利」がリスクを取るにあたってインセンティブを与え、そのコストは次の景気後退に明確化するだろうと警告する。

こうした見解が、カンザスシティ地区連銀のジョージ総裁とともに9月FOMCで据え置き票という反対を投じるかたちとなったのだろう。逆に、セントルイス地区連銀のブラード総裁は50bpの利下げを求めたが。

2019年のドットチャートは、7人が利下げ余地を見込む状況。

(作成:My Big Apple NY)

(作成:My Big Apple NY)

Fedは短期金利の上昇より、大きな問題に直面している。パウエルFRB議長は再び、トランプ大統領から「やる気がない」などの批判を受けた。トランプ氏は、金利をゼロ以下へ引き下げることすら要請している。同時に、失業率は約50年ぶりの低水準にあり、インフレは2%付近だ。米株は過去最高値近くにあり、利下げが必要には見えない。一段の利下げは、ローゼングレン氏の指摘通りリスクを生み出しかねない。

——筆者も利下げが必要と認識していませんが、ドットチャートの人数配分が気掛かりです。これまでの発言などを振り返ると、2019年にFF金利誘導目標を1.675%と提出したのは、こちらで指摘した通りFRB指導部+セントルイス地区連銀総裁と考えられます。そうなれば、投票権をもつ10名中7名の投票で利下げを決定できるため、年内の利下げはゼロではないと言えるでしょう。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年9月22日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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