バロンズ:米株安要因は、本物か否か

2019年09月30日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは専門家のラウンドテーブルを基にバイオテクノロジー株を展望する。同セクターは2015年半ばのピーク時から資金流出が続き、ナスダック・バイオテクノロジー指数は25%も下落した。 遺伝子治療やデータ解析で時代の寵児となったものの、アルツハイマー治療薬を始めとした失敗に加え、規制強化などの向かい風に直面した結果だ。

米大統領選挙を控え薬価引き下げをめぐる法制化の動きも懸念材料だが、2つの遺伝子治療薬が承認されるなど新たな動きも出ている。希少疾患の治療薬として代替製品が少ないという特徴も、忘れてはならないだろう。専門家が投資するバイオテクノロジー株など、同セクターをめぐる見通しについては本誌をご覧下さい。

(カバー写真:BrainMaY/Flickr)

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は米株安をもたらした複数の材料を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

実体のない懸念が、株式相場の大打撃に―Phantom Fears Take a Toll on Stocks.

古い市場の格言に、「強気相場は懸念の壁を上る」というものがある。足元では、たくさんの煉瓦が不安材料として積み重なってきた。ただし、こうした心配は正当化されないかもしれない。

トランプ政権が年金による中国株保有高の制限や中国企業の上場廃止を含め、中国への投資を抑制する案を検討中ブルームバーグが報じ、米株は下落した。資本フローを巻き込めば、追加関税を通じ何千億もの製品に影響を与えてきた米中貿易戦争を悪化させかねない。

中国ベージュブック・インターナショナルのレランド・ミラー代表によれば、投資家による中国企業エクスポージャーの制限について、しばらくの間議論されてきたという。実際に協議されてきた内容としては、中国企業に対する抜け穴を塞ぐため中国企業に米国企業と同等の情報開示を求めるものだ。情報開示をめぐる例外的措置はオバマ政権下、米証券取引委員会(SEC)が認めた。マルコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)が提示した法案は、米国の年金ファンドが不透明な中国企業に投資することを防ぐもので、ミラー氏は「ブラックホールに資金を投じるようなもの」と説く。

チャート:年金などの中国企業の投資もさることながら、ドル建て中国ハイイールド債の発行増に合わせ米国など海外からの引き合いも出てくる?

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(作成:My Big Apple NY)

こうした提案は、米中貿易交渉のカードとなりうるが、政府が中国を米国の資本市場から締め出したところで、効果は期待できないのではないか。中国当局は、国内企業に資金供給する手段を講じるだろう。何より、アジア・タイムズのコラムニストで、元債券アナリストのデビッド・ゴールドマン氏によれば、中国は1.3兆ドルの海外資産を保有しており、海外資本を必要していないと言える。

それでも、米国で上場する中国株は下落し、iシェアーズMSCIチャイナETF(MCHI)は2.2%安を迎え、アリババは5.2%安、Xトラッカーズ・ハーベストCSI 300中国A株(ASHR)も1.3%安となった。ゴールドマン氏いわく、今こそ中国関連株の買い時だという。

また、期待された大型新規株式公開(IPO)が株安の前兆となった。ペロトン・インタラクティブのIPOは典型例だ。結果、iシェアーズ 米国国債 20年超 ETF(TLT)が過去1年間のパフォーマンスが21.4%高に対し、S&P500は1.6%高でしかない。

マネーマーケットも、大いに注目を浴びた。信用市場の需要の強さのほか、税金支払いといった季節要因、米国債の発行増、四半期末の資金需要などが影響したと考えられる。中銀はレポ取引で資金供給を行ないつつ、銀行準備預金や通貨供給量など借入に合わせた保有資産の拡大で対応するのだろう。

米下院がトランプ大統領の弾劾をめぐる調査を開始し、市場を混乱させる材料を与えた。とはいえ、メイン・ストリートやウォール・ストリートへの影響は限定的だろう。消費者センチメントは、米株と同じく高止まりしたままだ。何より重要なのは、米国人の雇用と所得である。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BOAML)のエコノミストは、米経済が拡大し続ける上での需要と供給の均衡点として、非農業部門就労者数(NFP)の増加ペースにつき前月比12.8万人増と試算する。これは、Fedのエコノミストの推計である5万~10万人を上回る。ただ、BOAMLのアナリストは追加関税措置が雇用増加ペースを一段と鈍化させうると指摘、そうなれば失業率の上昇を招き支出を抑制させると警鐘を鳴らす。

今週発表予定の米9月雇用統計・NFPの市場予想は、15.0万人増だ。8月を上回るが、過去1年間の平均である17.3万人増には及ばない見通し。NFP以外で肝心なのは、週当たり労働時間と平均時給の伸びだろう。弾劾問題より、重要であるといっても過言ではない。


中国が海外資産を1.3兆ドル保有しているため、海外資本を必要としていないのかは疑問が残ります。足元でドル建てのハイイールド債の発行高は2018年からアジア諸国を凌駕し、2019年の年初来でも380億ドルと中国以外のアジアの204億ドルを超えるだけでなく、2018年の228億ドルも上回ります。さらに景気刺激策の一環で地方債の発行前倒しを承認するほか、特別債発行枠拡大を通じた景気支援も検討しているだけに、海外投資家の需要掘り起こしにかかってもおかしくありません。

約17兆ドルもの債券がマイナス金利の状況下、海外からの中国債券熱も高まっています。米中貿易摩擦が激化するなかでも、JPモルガンはガバメント・ボンド・インデックス・エマージング・マーケットに人民元建ての中国債券を2020年2月から組み入れる予定ですよね。トランプ大統領の弾劾調査よりも、中国企業への投資規制案が経済と金融市場を動かすドライバーとなりそうな雲行きです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年9月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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