バロンズ:米労働指標、景気後退入りを示唆せず

2019年10月07日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは米国のネット証券会社に焦点を当てる。チャールズ・シュワブをはじめE*トレード・フィナンシャル、インタラクティブ・ブローカーズ、TDアメリトレードなどネット証券会社は、手数料撤廃を決定した。投資アプリ大手ロビンフッドなどスタートアップ企業や大手証券会社との競争激化を反映したとはいえ、突然の措置に投資家やアナリストを驚愕させ、一連の株価は急落。10年以上に及ぶ強気相場から一転し、2020年に景気後退入りの懸念が高まり、米利下げにより投資家の資金の再投資で確保してきた純金利マージンも低下を余儀なくされれば、尚更だ。

ネット証券会社が活路を見出せるのか、そのヒントは手数料ゼロに最初に踏み切ったチャールズ・シュワブが握っているといえよう。同社は3.7兆ドルの顧客資産を抱え、そこには1.55兆ドルの投資会社の信託資産も含まれるように証券仲介業務のほか信託業務、アセットマネジメント、機関投資家向けのバックオフィス業務と多岐にわたる。その他ネット証券会社の展望など、詳細は本誌をご覧下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は景気後退をめぐる議論を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

(カバー写真:Ruben Diaz Jr./Flickr)

Fedが確実に回避を目指すと見込まれ、景気後退入りはない―There’s No Recession Coming. The Fed Will Make Sure of That.

ビートルズの”アビー・ロード”50周年記念版がリリースされた(全英チャートで1位を獲得)。筆者はオリジナルのレコードと2009年にリマスタリングされたCDを保有するが、恐らく最新盤を購入し、ヘッドセットではなく大音量で聴くのだろう。50年前と言えば、失業率は9月に1959年以来の低水準を記録した。米9月雇用統計・非農業部門就労者数(NFP)は予想以下だったが、過去2ヵ月分が上方修正されており、まずまずの数字と言える。平均時給は前月から鈍化したが、エバーコアISIいわく10年後に記憶されるのは、失業率だろう。

米9月雇用統計は、景気後退入りを連想させる他経済指標と矛盾する内容だった。米9月ISM製造業景況指数などは、その代表例で、米債市場のラリーを再発させ10月利下げ期待も高まった。ただし、ISM製造業景況指数はセンチメントという質的な指標であってNFPのような実態を数字で表すものではない。エバーコアISIは特に、黒人やヒスパニック系の失業率低下を指摘、経済活動の拡大が広範囲にわたっていると分析する。

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(作成:My Big Apple NY)

人々は、ジョニー・ペイチェックの名曲”Take This Job and Shove It”よろしく黙って職に就いているのだろう。もう一点、米9月雇用統計には明るい材料が隠されている。ルーソールド・グループのジム・ポールセン最高投資責任者(CIO)いわく、離職者数が急増(筆者注:ただし前月比7.6%増の84万人と、2000年以降の平均値85万人と概して変わらず)した。これは、同氏によれば労働市場への「大いなる信頼感」を表すという。他経済指標とは180度異なる数字だ。

確かに、労働市場は米中貿易摩擦の影響やFedの利上げ効果を受け遅ればせながら鈍化している。対中追加関税から派生する影響は今後も続くだろうが、Fedは利下げに転じ保有資産の圧縮も停止した。過去の米利上げと保有資産圧縮の効果は、MI2パートナーズのジュリアン・ブリッジェン首席エコノミストによれば合わせて7.5%ポイントの利上げに相当し、3%ポイントの引き上げはこれまで景気後退を招いてきた。

金融引き締めへの懸念は現状で利下げ期待に代わり、FF先物市場では10月29~30日開催のFOMCでの米利下げ織り込み度は77.5%に及ぶ。12月10~11日開催のFOMCでは約50%だ。

結果的に、誰にとっても経済拡大へブレーキを踏むことは好ましくない。長引かせることは、強気相場を意味する。過去、Fedはインフレ抑制と雇用安定の二択を迫られてきた。現状の問題であるインフレは、むしろ目標値以下で低迷していることにあり、それは経済成長を支えるための利下げ余地を与えよう。


労働指標は遅行指標であるとはいえ、米9月雇用統計は労働市場が失速していない実態をみせつけました。何より、生産労働者・非管理職の平均時給の力強さがそれを物語ります。米中貿易戦争や、10月18日以降の対EUとの貿易摩擦から生じる経済下押し効果を加味する必要があるとはいえ、ISM製造業景況指数など指標の悪化ばかりに注目しては、米経済を読み間違えてしまいかねず。消費者信頼感指数は低下していますが、過去の水準と比較し高止まりしており、米8月個人消費の鈍化の陰で貯蓄率が上昇し消費を下支えする可能性についても留意すべきでしょう。

(カバー写真:Ruben Diaz Jr./Flickr)


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年10月6日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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