岐阜市長インタビュー前編:岐阜市はなぜメルカリに職員を派遣したのか

2019年10月15日 06:00

今年2月、「MERPAY CONFERENCE 2019」で、メルペイは地方自治体との連携予定を発表しました。

メルカリ・メルペイが地方自治体と連携をスタートさせる

同日、メルカリとメルペイが、全国の自治体で最も早く包括連携協定を結んだのが岐阜市でした。その協定の具体化の第一弾として行われたのが、今年4月からの岐阜市職員のメルカリへの派遣研修でした。

岐阜市長は、どのような思いや可能性を感じて実施を決めたのか、この研修の実施によってどういった効果を期待しているのか、これからの自治体のあるべき姿や可能性も含めて、岐阜市長にインタビューを行いました。

柴橋正直 岐阜市長インタビュー

2019年9月4日 岐阜市役所市長室にて実施

インタビュアー:高橋亮平 メルカリ社長室政策企画参事(以下、高橋)>

今回は、とくに岐阜市からメルカリに来ていただいている職員の派遣研修についてなどお話を聞かせてもらえればと思っています。

メルカリには昨年、経産省職員が派遣研修に来て話題になりました。最近は経産省以外の省庁などからも派遣研修についての問い合わせが来るようになりました。こうした中で、岐阜市から来ている職員も非常に活躍してくれています。

そもそも市長はなぜ職員をメルカリに派遣研修させることを考えたのでしょうか。

【寄稿】経済産業省職員がメルカリ・メルペイへの派遣で学んだこと

これからの自治体はプラットフォームビルダーになる必要がある

柴橋正直 岐阜市長(以下、柴橋市長)> 岐阜市は基礎自治体です。子育て支援や医療の提供など、色々な基礎自治体ならではの業務があります。こうしたものを提供することは、これまでの自治体の行政サービスの役割でしたが、行政職員の数も段々と減っていますし、行政が何でも丸抱えでやるという時代ではなくなってきます。民間委託になったり、官民の連携であったりということを考えていく時代の中で、今は完全に「プラットフォームビルダーになろう」ということが言われるようになってきました。

ただ、こうした考え方は、今までの基礎自治体の中で当たり前のようにあったものではありません。日々真面目にコツコツと市民の皆様の方を向きながら決められた行政サービスを提供していくというあり方から、民間の同等以上のサービスが提供できるプレイヤーがいてもいいんじゃないかという時代になってきています。

では、いかにその場を創るか、そこには民間企業も、また半官半民のような方々も、行政やNPOなど色々なプレイヤーをプラットフォームに乗せて、活躍していただいて、結果的に市民サービスの充実につながるというものが創れるかどうかだと思っています。そのためには、職員がそういう発想を持てるかが非常に重要になってきますし、プロジェクトを一から積み上げて行くことが非常に大事だったりします。

 

高橋> 確かに、そういった経験や考え方は、岐阜市役所の中で得られることもあるでしょうが、今回のような民間への派遣研修で得ていけるのではないかということですね。

ベンチャーの意思決定や情報共有のスピード、結果へのコミットを市役所に

柴橋市長> とくに一定年度の岐阜市役所の中での行政経験がある職員が、さらに民間のメルカリさんで経験することで、これからの時代に合った新しい能力を身につけ、その経験を岐阜市役所に持ってきてもらう。このことを通じて、岐阜市役所の中でもどんどんと新しい提案や改革の提案をしてもらいたいと思っています。

もう一つが、岐阜市でも今、一年勝負ということを基本方針の一つとしています。例えば問題を1年先送りすると、課題は当然その分だけ解決が遅れます。今、一年一年が本当に早い時代になってきており、先送りすることはとてつもない損失になるため、「問題と解決策が分かっているなら一年でやろう」と、職員にも話をしています。メルカリさんを始めとしたベンチャーでは、意思決定のスピードや、問題についての情報共有をするスピードが、すごく早いじゃないですか。組織内でどうやって情報連携をしているのか、あるいは課題をトップから一社員までどうやって共有しているのか、そのプロセスはどのようにしているのかなどといったことは、まさに「一年勝負」と言っている岐阜市役所にとってはこれから必要なノウハウになるんです。

アウトカム(政策効果)ということも言っています。単に予算を要求してそれが査定され認められて、様々な条例化をしたりしますが、単にそれで終わりということではいけません。予算要求で請求するにしても、それによって「こんな成果やアウトカムが達成できる」などということをきちんと明示し、「だからこの予算が必要なんだ」と要求して初めて予算が認めらえるという形にしています。成果ということにどれだけコミットできるか、その部分については民間企業の方が遥かにシビアにやっているので、そういう文化も岐阜市役所の中に創って行きたいと思っています。

 

高橋> 今回、こうした思いで派遣研修を始めるに当たって、中でもメルカリを選ばれた理由や、また今回の派遣研修を実際に経験している職員に、派遣中に体験をしてもらいたいと思っていること、また岐阜市役所に戻ってきて担ってもらいたい改革などがあれば教えてください。

 

柴橋市長> メルカリさんは創業6年という新しい企業です。大手の企業の中には100年以上の歴史があったりするわけですが、そうではなく何十年と積み重ねられたというものがないからこそしがらみがありません。そうした今の社会の最先端の中でできた企業が、どう意思決定していて、社員同士がどんなコミュニケーションをしながらプロジェクトを進めているのかといったものを吸収して来てもらいたいと思ったからです。

130年という長い歴史のある岐阜市だからこそ、積み重ねてきたものに何がカスタマイズできるかということを持ち込んで欲しいと思っています。

岐阜市のメリットを明確にした職員の派遣研修は、積極的に継続させたい

高橋> 岐阜市では、他の企業や省庁などにも職員を派遣していますが、こういった行政職員の派遣については、むしろ減らしていこうという自治体も多くあります。そうした中で、岐阜市はあえてこうした取り組みを積極的にやっていこうとされているわけですが、背景には岐阜市や市長のどういう思いがあるのでしょうか。

 

柴橋市長> 岐阜市の場合は、目的をはっきりさせています。以前から行っていた派遣の中でも目的がハッキリしていなかったものについてはやめた所もいくつかあります。

一方で、例えばソフトバンクさんとは、きちんと包括協定も結んで、スマートシティーも進めて行こうと、教育でも一緒にやっていただいて、岐阜市の職員研修でも力をいただいています。

メルカリさんでは、新しい組織の風土、組織の運営のあり方を学ばせてもらっています。また、メルカリは地域にある社会問題を解決する企業でもあると思っています。

これからは行政だけの力で問題解決していくには、財政的にも限界があります。そこで、先程も話したように、全部を役所が抱え込むのではなく、プラットフォームビルダーになろうと思ってやっています。民間と組んで社会問題を解決していくことはとても大事なので、包括協定などももっと多くの企業と結んで行きたいとも思っています。そこには明確な政策目的の設定が重要だと思っています。

前任からの積み重ねで、私の代でもう一段レベルアップさせた取り組みもありますが、メルカリさんとはまっさらな状態から一緒に新たな取り組みを創っていきたいと思っています。

 

高橋> 岐阜市から一度に外に派遣研修に出せるのは、年に数人かと思います。岐阜市の職員全体の数から言ったらごく僅かな数にしかなりません。

一方で、職員全体が新しい考え方を取り入れながら新しい市役所や職員のあり方を考えていかなければならないとすると、メルカリとのこうした取り組みを継続していくことなども考えているのでしょうか。

 

柴橋市長> こうした取り組みは、継続していくべきだと思っています。職員一人だけが経験して岐阜市に帰ってきても、共感してくれる人が最初は少ないということになりかねません。下手したら私だけということになってはいけないので、一定の経過は見ながらも継続していくべきだと思っています。

また、メルカリさんの方もさらに成長していかれるだろうし、経団連などにも入会されて取り組まれていたりとか、鹿島アントラーズを子会社にされたりとか、「merpoli(メルポリ)」なども含め政策企画でも様々な取り組みを展開されている。我々としても大いに学んでいくべきことがあると思っています。

官民の連携というのはこれからすごく重要になってくると思っています。民間で仕事をしていて、途中で役所に転職してくる職員も一定数います。こうした職員はある意味では民間のことも分かっていますが、新卒から役所に入ってそのままずっと市役所で仕事をしていると、官民連携をしようにも民間というのはどういう思考で、何を求めてやっていくのかということがどうしても分からないということになってしまいます。そこを経験することには大きな意味があると思っています。

 

高橋> そういう意味では派遣中の職員がこうしたものを持ち帰るということも勿論ですが、さらにそれを他の職員に波及させるということが重要になってきますね。

それが代替わりで新たな職員を派遣し、2人目、3人目と増えることで、派遣から戻った職員同士が連携しながら岐阜市役所の風土に研修で得たものを反映していくという形になるのでしょうか。

 

自治体で起こるさまざまな問題の解決に民間の仕組みは大いに応用しうる

柴橋市長> はい。今、情報共有や連携のところでさまざまな不祥事が起きています。実は上司が知りませんでしたとか、問題発覚してから知りましたとかということでは、初期対応としてはとても問題があります。こうした際に情報共有をどうやって速やかにやるかということが大事です。

問題があった時に責任者まで情報が上がらないことや、そのことも含めて初期対応が十分に行えないところに大きな課題がありました。

こうした課題についても、技術的な仕組みでどう補うかというところが大事で、単に「問題が起こったらすぐに責任者に共有しなさい」という方針や指針をいくら作ったところで、それでは精神論で言っているにすぎません。

そうではなく、仕組みの中できちんとやるっていうのはどういう状況なのかということを考えていかなければならないと思っています。例えば、それはスマートフォンで入力して瞬時に責任者まで共有されるということかもしれない。メルカリではそういう情報共有をするのに当たり前のようにツールを使っているでしょうし、それがある種の文化じゃないですか。そういうものが自治体現場でも考えられるのではないかと思うんです。派遣した職員からフィードバックしてもらっていると、現場で起きている課題についての解決策について、こちらも開かれます。それも非常にありがたいなと思っています。

 

高橋> 派遣後だけではなく、派遣中の職員が途中で岐阜市に戻って中間報告を岐阜市役所内で行うとか、その際に我々メルカリ職員も同席して、メルカリ内でどういう事が行われているのかということを、派遣職員とともに岐阜市の職員に伝える研修を行ったりということも考えられますね。

 

柴橋市長> それはとてもありがたいです。全職員を対象にということまでできないかもしれないですが、まずは行政部とか企画とかそういった役割の職員に、途中段階でも共有できる機会があるといいですね。

(高橋 亮平)

 

『【岐阜市長インタビュー後編】最先端とつながる都市だと若者たちに発信したい』に続く

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編集部より:このエントリーは、メルカリの政策企画ブログ「merpoli(メルポリ)」の2019年10月10日の記事より転載させていただきました。掲載を快諾いただいたメルカリグループに感謝いたします。オリジナル記事をご覧になりたい方は「merpoli」をご覧ください。

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