麻薬取締官がテレビの“下僕”になったのは民主党政権の影響?

田中 紀子

この度、大騒動になっている田口淳之介さんと小嶺麗奈さんの捜査にあたった麻薬取締官通称マトリの大チョンボ。なんせ、証拠のために撮影した動画を、テレビ制作会社の依頼によって渡したっていうんですから、呆れてものが言えないですね。

JNNニュースより引用(編集部)

田口淳之介被告らの自宅映像提供、麻薬取締部課長ら刑事告発(TBS NEWS) 

要求する制作会社も、それにうかうかと答えるマトリも、本当にレベルが低いというかなんというか、品位やモラルのなさはもちろんのこと、すでに遵法精神も失っていますね。

一体何で、お二人の裁判が突如延期されたのか?
様々な憶測が飛び交い、田口さん無罪説まで出てましたが、蓋をあけてみたらまさかのマトリの情報漏えい…

当事者の二人はとんだ災難ですよね。

だって執行猶予って刑の言い渡しがあった日から、刑の執行が猶予されるわけですから、こんな宙ぶらりんの状態で待たされて、やっと判決でそっから執行猶予期間でってどんどん伸びちゃうわけじゃないですか。

執行猶予なんて早く切れた方が、ご本人たちはサッパリするわけですから、私だったら「冗談じゃない!」と怒ると思いますね。

大体、最近は逮捕前にマスコミに情報が流れたり、速報が異様に早く出たり、どう考えても、マトリ側から情報を垂れ流しているとしか思えませんよね。完全な「癒着ルート」があるはず。

今度の件は、早速、田口さんらの担当弁護士さんが、刑事告発されたそうですが当り前ですよね。
是非とも徹底した捜査が行われることを願っています。

そして、この薬物事犯に対して「何やってもいい!」という、スケープゴート的血祭りを、テレビ局もいつまでも許されると思うな!と、声を大にして言いたいですね。

我々依存症界だって変わってきてますよ。
高知東生さんの「来てくれてありがとう」事件をきっかけに、アルコール・薬物・ギャンブルの大同団結ができたんですが、アルコール、ギャンブル依存症者の推計はスクリーニングテスト上ではおよそ600万人いますからね。

そこに薬物の当事者と依存症者全体の家族をあわせたら、なんと人口の1割以上となるわけで、我々は決してマイノリティなんかじゃありません。これからますます顕在化してくることでしょう。

そして、アルコールとギャンブルにはなんといっても「基本法」ができたことで、社会はどんどん変わっていきます。法律があるとないのでは大違いです。

さらにはネットメディアやSNSの台頭により、地上波の強引な手法が許されなくなったこと、そして我々自体も、こうやって毎回闘っているうちに、どんどんスキルも身につけていきますからね。
テレビ局の薬物事犯に対するやりたい放題時代は、必ずや終わりにさせたい!と全力でやっていく所存です。

厚労省麻薬取締部サイトより:編集部

マトリの自己顕示欲が増大した政治的背景

そもそも何故マトリはこのように矜持を失い、自己顕示欲と承認欲求が増大し、マスコミの下僕へとなりさがったのか?

それは民主政権時代「事業仕分け」が社会を席巻したことに関係があると我々は考えています。
あの政策には賛否両論あるかと思いますが、あの時、実は麻薬取締官通称「マトリ」が仕分けの対象にあがったことを皆さんはご存知でしたか?

あれ以降マトリは自分たちの存続の危機を感じたと思われ、必要以上にマスコミに急接近しアピールするようになっていったのではないでしょうか。

そして今回の様に、情報はマスコミにリークされるようになり、国家公務員法に定められている守秘義務や、人権に対する配慮はどんどん軽視されていくようになりました。

今回の件も、マトリの言い分は「広報のためにやった」と言っていますが、広報のために逮捕の証拠映像を使うなんて、聞いたことありません。この広報とは、マトリのアピールという意味の広報としか思えません。

また、自分たちの老後のためなのか?引退したマトリはタレント気取りで、まるで芸能人が逮捕されることを喜んでいるかのように、嬉々としてワイドショーに出まくり、大麻やコカインの自己使用者がまるで凶悪犯であるかのような間違った情報を垂れ流すようになりました。

タレント気取りの元マトリは、薬物依存症は回復できること、回復している人達はいくらでもいること、またその家族やお子さんたちも苦しみの中にあるのだから、人権には当然に配慮が必要なことなど、社会のためになる情報は一切発しません。

だいたい今どき、薬物依存のこと「薬物中毒」なんて平気で言ってますからね。
どれだけ勉強してないんだ?と驚くばかり…それを使うテレビ局もまたレベルが低いという悪循環に陥っています。

確か、マトリというのは全国に100人もいない小さな組織だったと思いますが、そもそも存続が危うい感じの組織は、どんどん過激なアピールばかりを繰り返すようになります。今後も情報が垂れ流されるような犯罪レベルの行為が繰り返されるようなら、今こそマトリを仕分けて頂いたらどうか?と思います。国の予算も大変なようですし、警察が頑張ってくれればそれでいいじゃないですか。

今回の事件の刑事告発を機に、このマトリの情報漏えいの常習化を是非ここで終わらせたく、どうか、この刑事告発を真摯に受け止め、警察は捜査に踏み切って欲しいです。

このマトリとずぶずぶの関係にある制作会社との癒着を暴き、二度とこのようなことが起きぬよう、警察の捜査力に心から期待しております。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト