財政制度分科会(平成30年10月)の防衛予算に関する資料を読む④

2019年10月29日 06:00

財務省の財政制度分科会(平成30年10月24日開催)において防衛予算に関しても討議されまた。その資料を財務省がHPで公開しています

引き続きこれについて重要な指摘とその解説を行います。

Wikipedia:編集部

防衛装備庁設置後の取組状況(③人材の積極的な育成)(P17)

○ 防衛装備庁が実施している研修は座学が中心となっており、実地研修を盛り込んだ研修であっても、原価の精査といった調達改革に直結するような実践的なものとはなっていない。また、こうした研修を受講しておらず、調達実務の経験も乏しい職員がプロジェクトマネージャーとなっているケースも見受けられる。

○ 国防総省契約監査局などの海外機関への長期の派遣や民間企業での実地研修に特化した専門的研修など、実践重視の研修を実施したり、調達実務経験を有する職員をプロジェクトマネージャーとするなど、「装備品調達のプロ」を育成していくべきではないか。

○ コスト管理に精通した民間出身者、公認会計士、米軍の専門家など、外部人材の活用も検討すべきではないか。

つまり、装備庁含めて防衛省、自衛隊には装備調達のプロが殆どいないとうことだ。質だけではない。量も問題だ。調達担当者は英独仏諸国に比べて一桁すくない。しかも頻繁に人事異動があるので知識や経験の蓄積ができない。

そもそも本当の意味での実務経験者が皆無です。ですから指摘があるように民間企業のプロを雇う。また諸外国の調達のプロを雇うべきです。また彼らに権限を与え、装備庁長官は外部から入れるか、政治家にすべきです。これまでの長官は技術屋ばかりで、行政も調達の実務の経験もありませんでした。

人員を増やすことが難しいならば陸自の部隊数を減らすしかないでしょう。能力のあるものは調達担当者と相応の教育を行う。そして装備庁や各幕僚監部の調達部門に移動させるべきです。まずは調達担当部署の人員を2倍に増やし、かつ人事移動期間を最低今の2倍に増やすべきです。

民需の減少を防衛装備品の単価上昇で賄う構造の是正(予定価格訓令の見直し)(P18)

○ 特注品である防衛装備品は、適正価格を算定するため、予定価格訓令において原価計算方式(直材費や加工費等に一般管理・販売費や利潤等を掛け合わせる方式)を採用。実務上、契約額は原価計算方式による価格(及びそれに基づく予算額)に強く影響されているが、そもそもこの価格は官側の見積もりに過ぎず、必ずしもこの額で契約しなければならないものではない。

○ また、加工費は、必ずしも防衛装備品の製造に要した費用のみで算定されるわけではなく、企業判断により防需と民需を合算した「加工費レート」によって算定されているケースがあるが、こうした扱いは適当か。
※「加工費レート」とは、防需・民需の期間費用(減価償却費など)を、防需・民需の期間工数で除したものをいう。

○ 防需にあっては、必要な設備投資は官が初度費として支払っているほか、少量生産でもあるため、期間費用は小さく、期間工数は大きくなる傾向。他方、民需にあっては、大量生産のための機械化と相まって、期間費用は大きく、期間工数は小さくなる傾向。
その結果、期間費用の負担が防需に偏りがちとなり、民需の設備投資を防需が実質的に負担する構造となっているのではないか。

※ 例えば、X社は課ごとに加工費レートを設定しており、防需と民需が切り分けられるケースが多い一方、Y社は工場単位でレートを管理しており、防需と民需を合算。工場単位でのレート算定の場合、他の工場との民需の割り振り方を調整してレートを高く設定する操作も可能となるのではないか。

○ 国内製造業の空洞化が叫ばれて久しい中、民需の減少を防衛装備品の単価の上昇で賄う構造は不健全であり、納税者への説明責任や調達改革の観点から、現行制度の功罪を検証したうえで、とりわけ量産段階の装備品については価格逓減を前提に適切に契約額を決定できるよう、予定価格訓令及びその運用を見直すべきではないか。

更に資料ではY社の例として2011年度の加工費レートを100としてその後上昇が続き、2017年度には125になっている例を挙げています。

実際の工数などは各工程で水増しされていることは多数の現場の社員から聞いています。また本来官の側が行うべき仕様書なども企業が書くことも多い。このような手間の分も経費に混ぜられていると見るべきです。

更に申せば防衛用として導入したジグで民生品を作ったり、防衛用に開発した技術を民生用に転用したりすることもありますが、防衛省には使用料は入っていません。

また、下請け企業の多くは利益が低いために、新規の設備投資ができず、これが技術が古いだけではなく、コストが高い原因となっています。例えば削り出しで作っている部品を3Dプリンタで生産すれば生産コストを大幅に下がるはずです。

後は民生品コンポーネントに置き換えることも必要です。防衛専用にすると高くなる。水筒は裸で7千円もします。民間で買えばカバー付きが1千円前後で買えます。であれば卸値は400円程度、つまり民生品の17倍以上するということです。

企業の多くは水増ししているのが現実です。これは内部通報者を募るべきです。大きな金額の通報をしたものには多額の報奨金を払ってもいいでしょう。それから高コストを官の側が是認しているケースも多々あります。空自のUH-Xなどその典型例です。

コスト査定は外部に任せるべきで、官製談合に協力した人間は懲戒処分を行い、刑事告発をすべきです。また合わせて、ずさんな調達に関してはその当時の関係者をさかのぼって処罰するようにシステムも導入すべきです。

■本日の市ヶ谷の噂■
海自艦艇向けのジャイロは民生品と同じだが、仕様書をわざと不透明にして、護衛艦、潜水艦は東京計器、支援艦艇は横河電子機器に、性能が劣って値段が高いにもかかわらず、棲み分けで発注。他国製品は値段が半額以下で精度も一桁高いとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年10月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。

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清谷 信一
軍事ジャーナリスト、作家

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