京都市の“ステマ”ツイート騒動にみる、行政広報 根っこの問題

2019年10月30日 06:00

ツイッター(京都市サイト掲出画像)より

京都市が2018年株式会社よしもとクリエイティブエージェンシーと京都国際映画祭2018及び京都市の重要施策の周知・振興を目的とした委託契約が炎上している。

人気漫才コンビ・ミキに1ツイート50万円で仕事を発注していた件だが、口コミを装ったステルスマーケティングだという指摘や自治体広報についてはタレントなども無償で協力しているケースも多く、金額的に市民感覚とかけ離れているなどあちこちから非難が上がっている。ツイートの内容については事前に京都市が確認していることが発覚し、さらに炎上している。

ツイートの効果なし?

しかも、全部でミキのお2人がそれぞれ2つのツイートをしているが、うち一つはふるさと納税の特設サイトにリンクが張られている。確認が取れた事実だけ申し上げると、ツイートされて3日間でリンク先へ飛んできた件数は138件で、決して効果が高いとは言えない。(4日目以降は10月29日現在、確認が取れていない。)

そもそも、この年の京都市のふるさと納税はマイナス30億円という過去最低の流出額を記録し、その点からいえば効果は皆無に近い。当時、門川市長は「返礼品競争には組しない」としてふるさと納税には極めて消極的でほとんど予算を投入していない中、このツイートに100万円を支払っていることはいかにも解せない。

残りの2つのツイートは映画祭の告知だが、これも効果があったかは不明だ。かねてから吉本と様々な提携をしている門川市長の公式FBに仲良く3ショットが掲載されていることもあり、どういった決定プロセスを経たのかも今後確認していく必要がありそうだ。

門川市長とミキの3ショット(Facebookより)

公金に対する京都市民の怒り

私も市会議員をしている関係もあり、一昨日から電話、メール、SNS等を通じたお叱りのメッセージを沢山頂いている。「市民感覚がない」「議会はチェック機能を果たしているのか」など様々だが、とにかく貴重な税金がこのような使われ方をしていることに対する批判だ。正直、映画祭の全体予算までは審議するが、その内訳までは資料要求しない限り議会には報告されないとはいえ、結果的にこうした実情を見破れなかった我々議会にも責任がある。

一昨日から総合企画局と事実確認や議論を繰り返しているが、市役所側は「悪くない。適切だ」の一点張りで、また同じことを繰り返すのではと不安にすらなる。京都市側の反応は早く、早々にHPに事実関係を掲載しているが、謝罪もなければ反省もない。行政側に猛省を促す決議を我々の仲間で上程したが、各会派の賛同は得られていない(問題ないということか?)。

かくなる上は、今後の広報の在り方を見直し、しっかりチェックすることが我々の責任だと自負しているが、議会の反応は鈍い。

行政広報のあるべき戦略

行政広報は全国的に従来「堅い、難しい、面白くない」というのが定説で、行政の広報力の低さと広報費に対するパブリシティー効果の低さはかねてから問題視されていた。最近でこそ、行政の面白動画や意表を突くポスター、読みやすいマンガを起用した市民新聞などが散見するようになったが、実はこのきっかけを作ったのは、2012年に広島県が実施した有吉弘行さんを起用した「惜しい!広島県」からだ。

広島県では、湯崎知事の鳴り物入りで、映画製作やデジタルエージェンシの大手上場企業IMJで代表取締役を務めた樫野孝人氏を広報政策監に起用し、行政広報を積極的に仕掛けた。「レモンの生産量日本一なのに、ほとんど知られていない。惜しい!広島県」という惜しいシリーズの動画で全国的に注目を集めた。個人的には、デーモン小暮閣下の献血のポスターが衝撃的だった。

樫野氏が特に力を入れた首都圏広報は経費1000万円で広告換算額25億円分の露出を記録するなど効果的かつ刺激的な行政広報を進め、広島県は総務大臣賞を受賞している。こうした仕掛けに触発され、全国の自治体で、挑戦的な自治体広告が始まった。彼は、広島県を去ったあと、京都府参与として「海の京都、森の京都、お茶の京都」のプロモーションを成功に導いた。

ゼネラリスト養成で広報のプロが育たない

広報は年々複雑化しており、かつてのテレビ、雑誌、新聞、ポスターの時代からネット広告やインフルエンサーマーケティングなど、素人に扱える代物ではなくなっている。特に行政は3~5年周期で定期的に人事異動があり、不慣れな行政マンは結局出入りの広告代理店の言いなりになっているケースが多い。

結局、現在のゼネラリスト養成型の行政機構では、その道のプロは育たない。公共事業を発注する事業者側が、建築のことがわからないと適正な発注ができないように、広報事業を発注する側が広報のことをわかっていないと適正な発注ができない。ここにこの問題の根っこがある。

行政は、ゼネラリスト養成型からスペシャリスト養成型の人事制度に改めるか、任期付き職員として業界のプロフェッショナルと行政官として任用することがこうした問題解決につながる。特に、行政にとって広報は今後益々重要性を帯びる事業である点を考慮すると、行政は早々に広報官を任用すべきである。


村山 祥栄   京都市議会議員
1978年京都市生まれ。専修大学在学中は松沢成文氏の秘書を務める。リクルートを経て京都市議に(現在5期目)。2010年、京都党を発足。2020年2月の京都市長選に出馬を表明。公式サイトツイッター「@sho9722483」

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