デジタル化の反動、人間のつながりを求めるトレンドに

2019年11月03日 14:00

バンクーバー郊外のとある住宅街にセンスの良い飲み屋があります。ちょっと暗めのその店の名前にはSocialという言葉が大きく書かれています。今、各地で増えるこのSocialとかPublicというのはまさにかつての飲み屋の焼き直し版であります。(ちなみにパブという言葉はPublicから来ています。)

※画像はイメージです(acworks/写真AC)

この飲み屋に入り、バーをぐるりとかこむようになっているカウンターに腰を下ろしました。客を見渡すと見事に年配、そして多くの一人客がスマホをいじっている振りはしているけれど、手持無沙汰で飲み物を片手に大画面のテレビを何気なく見ています。家にいてもつまらないと思う層がごそごそと出てきて何らかの刺激を求めに来ているのでしょう。そのうち、アルコールのせいもあるのか、知らない客同士が会話を交わし始めていたりします。

最近の飲み屋のバーはこの店のようにバーカウンターをぐるりと丸く取り囲む設計が増えています。つまりそれだけバーカウンターに座りたい客が増えている証拠です。バーテンダーも概ね美男美女で愛想がよく、気配りも上手な感じがします。つまり、バーテンダーと目の前の大画面に映るスポーツ中継を介しながら人々は何らかのつながりを求めてやってくるのです。

日経に「若者集う令和のスナック 客同士が交流 楽しみ演出」という記事があります。いわゆるスナックの焼き直し版がはやりつつあるというのです。かつてのスナックを知っている人はおじさんの域に入っている方だろうと思います。酒を飲み、店の女の子を話し相手にする憩いの場という感じでしょうか?そのスナックはずいぶん前に無くなり、言葉そのものもほぼ死語となりつつあったはずです。

なぜ、今、またスナックなのでしょうか?記事によると客は男女が客同士のつながりを求めてやってくる、とあります。つまり、中にいるスタッフは媒介役である点がかつてのスナックと最大の違いということなのでしょう。

私のこのブログ、実は思うことがあるのです。それは私の日替わりの記事はネタ提供という媒介役なのだろうと。突っ込みどころ満載の私の意見に様々な方がいろいろな意見を述べ、その意見に対してまた意見という展開を皆さんが楽しんでおられるというのが伺えるのです。つまり、ブログが受動的なものではなく、能動的に遊びに来るところである点においてSocialであるのかもしれません。

それこそ、夜、グラスを片手に様々な書き込みを見ながら「うむ、なかなか面白い意見もある」「これは違うな」とひとり呟きながら自分のコメを入れると更にそれに反応があるからもっと面白いということになるのでしょう。

デジタル社会が生み出したものは効率と受動的行動だったかもしれません。情報と便利がそこにやってきてくれます。買い物に行かなくてもアマゾンで注文すればよいし、図書館に行かなくても欲しい本や雑誌はタブレッドで読み放題です。カラオケも今はユーチューブでかなり行けちゃいます。一日中家にいても欲しいもの、やりたいことがどんどんできてしまうのです。そのうち、ゴーグルをつけて仮想現実の世界に入れば世界旅行をした気分にもなれるでしょう。ほう、確かにすごいです。

だけど、それで本当に我々は満足なのでしょうか?リアルの関係が欲しいではないでしょうか?

日本人は〇〇会という少人数グループを作るのが比較的好きです。気の合う手が届く範囲の人たちが和気あいあいと一つの共通を通じて楽しみます。ここバンクーバーにもこの手の会は100以上存在していると言われます。日本でもあまり聞かない「県人会」も当地では活発なところもあるようです。

人間は孤独にはなかなか耐えられないところがあります。ところがデジタルは孤独にさせるテクノロジーであるとも言えます。若者のゲーム熱がいつまでも廃れないのはゲームが一人ゲームではなく、参加型となり、世界中の誰でもがそこに入り込み、一つのゲームを通じて対戦出来るからなのでしょう。言い換えれば若者はゲームを通じて社交しているとも言えます。

ただ、この人間のつながりもあまり濃くないところが大事なようです。友達以下で、その人のことはちょっと知っているという関係が程よいのでしょう。だから飲み屋で知り合って会話しても「携帯教えて」「メアドは?」なんてやらないのです。会いたければその店にまた来れば会えるのかもしれないという薄いつながりが好まれるのでしょう。

日本にはかつて住宅街の中に赤ちょうちんがあったりしたものですが、オヤジ臭いところが多かったと思います。そうではなく、初めての人や女性客がひとりでもふらりと入れるようなところは確実に求められているように感じます。繁華街から地元というUターントレンドは作り出そうとすれば確実に生み出せる土壌が出来つつあるように感じます。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月3日の記事より転載させていただきました。

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