米国へ不法入国の悲劇:家族から引き離された5000人超の子供たち

アメリカ自由人権協会(ACLU)によると、2018年6月に米国サン・ディエゴの判事がメキシコとの国境で親から引き離されたこどもを親のもとに戻すようにという命令を出した時点で、2017年7月1日から2018年6月26日までに記録されているその子供の数は1556人と関係当局から管轄の弁護士に伝えられた。

その幼少児の内訳を見ると5歳未満が207人、1歳未満5人、1歳が26人、2歳40人、3歳76人、4歳60人となっているという。余りにも小さな子供を不法に入国しようとした親から引き離すというのは非人道的であるとしてACLUはそれを中断するように訴えている。

また、ACLUは昨年1年間だけを見ての親元から引き離された子供は2700人いるとも発表している。(参照:hispantv.com

その一方で、米国移民局の調査で2017年7月からメキシコとの国境で親元から引き離しされたこどもは5700人だという情報を米国政府がACLUに報告したという。(参照:lavanguardia.com

これらの錯そうした情報から見る限り、親から引き離された子供の正確な数字は誰も把握していないように思われる。しかし、トランプが大統領に就任したのは2017年1月で、トランプ政権になってから非人道的なこの親子の引き離しが積極的に実施されているということだ。

今年3月の時点で子供を対象にした5000人を収容できるように軍事基地にその施設を9月末までに設置するということが計画されていた。実際にはそれが5700人にまで増えているということだ。

スコット・アーレンとパメラ・マックパーソンの二人の医師が子供を収容している施設を訪問した報告書を発表している。前者は内科医で、後者は精神科医だ。彼らの報告によると、収容所の扉に挟まれて手の指に深い損傷を受けている子供、体重が3分の1に減った16か月の赤ちゃん、不適切は予防接種などの問題点を挙げている。

まず、手の指の損傷というのは収容されている施設は犯罪を犯した軍人らが収容されていた部屋で重い扉は頑丈にできていることから子供の力では無理があり指を扉に挟まれるというのが要因だ。体重が急激に減少した赤ん坊の場合は医師の診療が遅く下痢を繰り替えしていたということ。

「先進国の社会において罪のないこどもにこのようなことは絶対に起きてはいけないことだ。特に、これらの子どもが虐待を受けることは如何なる意味においても正当性はない」とこの2人の医師は主張している。ここでの虐待はその後も後遺症として残ることになる。(参照:expansion.mx

この被害を受けているのは特に中米諸国とメキシコからの不法移民のこどもである。好き好んで米国に向けて不法に移民しようとしているのではない。一番の要因は貧困からである。更に中米の場合は人を殺害するのも躊躇うことなく実行する若者の暴力組織の脅威から逃れるためでもある。

それをトランプ大統領は犯罪者呼ばわりして不法移民者を虐待している。その影響を間接的に受けて犠牲者となっているのが親から引き離されたこどもたちである。

日本のように平和な国ではこのようなこどもへの虐待が起きていることは日常の話題にさえならない。しかし、日本の幼稚園や小学校に通っている子供たちと同年齢の子供たちが通学することなく収容所に入れられているというのは悲惨である。

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家