どう見る、ソフトバンクGの戦略

岡本 裕明

ソフトバンクGの7-9月決算。どれほどの下方修正をするのか、孫正義氏がそれをどう説明するのか注目されていました。営業利益は155億円の赤字(前期比1.4兆円悪化!)、最終利益はほぼ半減の4215億円、悪いのはファンド事業で5726億円赤字などとなっています。

ソフトバンクG「2020年3月期 第2四半期 決算説明会」動画より:編集部

「今回の決算の発表内容はぼろぼろでございます。真っ赤っかの大赤字。3カ月でここまで赤字出したのは創業以来始めてではないか。まさに台風というか大嵐の状況で、ソフトバンクやウィーワークは倒産するのではないか、ソフトバンクは泥沼だ、などと報道されている。ある意味正しいのかも。」

とずいぶん謙遜した言い方でスタートした説明会でしたが質疑まで見るとまだまだ強気であることがうかがえます。

私は孫氏のビジネススタイルは嫌いではないのですが、正直、このところ、負けが目立っているように感じるのです。スプリント、ウーバー、そしてウィワークです。(個人的にはアームも加えたいが。)孫氏は会見の中で「損益面の勝ち負けを言うと、3勝1敗。このビジネスは10勝0敗はそもそもありえない」と述べているので自分が完ぺきではないことは認めていますが、この自称3勝1敗を今まで手掛けた総案件数でみるのか、時系列で並べた傾向でみるかにより色合いは変わってくるでしょう。

私がウィワークより懸念したのはウーバー。特に11月6日以降にロックアップといわれる株式公開以前の株式所有者の売買停止期間が終了し、大量の売り圧力が出ます。見込みでは7億株ぐらいの売りが出る可能性があり、直近の決算を含めて考えれば株価には厳しい状況となりそうです。ちなみに1週間ほど前にロックアップが終わったビヨンドミートは好決算にもかかわらず株価が一日にして20%下がったことを考えると目先下値模索となります。

ウーバーはもともと売り上げに対する人件費が高く、これにどう太刀打ちできるのか、私にはあまり想像できません。ノーベル賞を受賞した吉野氏が述べていたような無人の自動運転の車が呼べばやってくる時代がさほど遠くない時代に来ると思われ、ビジネスモデルの激変期の過渡期を埋める一時的ブームではないかと考えています。

次いでウィワークですがこれはスプリント事業の立て直しで功績のあったマルセロ クラウレ氏を会長に据えて再建するようです。クラウレ氏の手法はコストカッターで切りまくるはずで、すでにその兆候は見えています。これは今のウィワークとってはある意味正しいのですが、顧客がサービスのメリットを得られないと感じ始めたとき、ウィワークにいる必要がないと考えるリスクはあります。

何度かウィワークの事務所に行って思ったのは自分が格好良くふるまわなくてはならず、「踊らされている」気がするのです。要は自分の仕事場なのに気楽になれず、疲れるのです。つまりウィワーク型シェアオフィスはショーケースともいえ、このイメージを維持するのか、変えるのか、難しいかじ取りだとみています。

ではソフトバンクG全体の経営方針はどうなのでしょうか?たまたまヘッジファンドの世界では世界有数であるブリッジウォーターのレイ ダリオ氏が「資金と信用力がある人にはマネーは基本的にフリー(無利息)だが、金と信用力のない人には本質的に利用できない。これは富と機会、政治的な格差拡大の要因だ」(ブルームバーグ)と強烈な発信をしています。これはソフトバンクにそっくり当てはまる言葉であり、アメリカの有力層がかじ取りを少し変えようとする動きがあるように見えます。

とすればビジョンファンド2号、ひいては3号と鼻息がまだ荒い孫氏にとって2匹目、3匹目のどじょうはいるのか、という話になるかもしれません。先日孫氏が中東で投資家向け講演をした際も会場はガラガラだったそうですが、マネーの満ち引きは我々が想像する以上に激しいものであり、人々のマインドは揺られるというなかで孫正義マジックがどこまで輝きを保てるのか、正念場にあるように感じます。彼のようなごり押し強引ビジネススタイルには私はやや古さを感じています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月7日の記事より転載させていただきました。