北朝鮮・韓国・中国:外交のツケ払いで、師走を前にもう右往左往

2019年11月10日 06:00

師走にはまだ日があるのに南北朝鮮と中国が慌ただしくしているようだ。師走の語源は坊さんが忙しい時期だからとされる。だが、筆者には、その年に溜まったツケの払いに右往左往する時節という、落語によくある話の方がしっくりくる。

金正恩、文在寅、習近平(Wikipedia)

忙中の南北朝鮮と中国に共通するのは、先ずどれにも米国が絡んでいること、二つめは自ら蒔いた種なのに自分で刈ろうとしないこと、三つ目は傍からその焦燥ぶりを悟られないよう必死に屁理屈をこねることだ。

(参考拙稿:南北朝鮮の両首脳が震えながら迎える令和元年の年の瀬 日韓GSOMIA廃棄を撤回か?百年変わらぬ韓国政府の呆れた思考回路

自縄自縛に陥った金正恩

先ず北朝鮮。金正恩は10月下旬、再登板させた金英哲に「米国が金正恩委員長との“緊密な個人的関係”に乗じて年末の期限を無視するのは間違いだ」と言わせた。制裁解除にちっとも動いてくれないトランプの気を引くためだろう。

しかし、トランプは内外共に多忙な上、制裁は国連や米上下両院の意向抜きに弄れないし、折角打ちまくったミサイルにも射程が短いと構ってくれない。非核化というボールは北朝鮮にあるのだから、トランプにしても待つより他ない。

9月の「超大型放射砲」射撃訓練を指導する金正恩氏(朝鮮中央通信より引用)

焦れた金正恩、今度は日本担当の外交官、宋日昊の口から「安倍は多連装ロケット砲とミサイルの違いが判らない“奇形児”で“低能児”で“白痴”で“ならず者”」とこき下ろさせ、「悪態をつく安倍は平壌の敷居をまたぐことを夢にも見てはならない」と言わせた。

宋は「我々は日本を眼中に置かず、自分のすべきことをする」として「日本の上空を通過するミサイル」の発射も示唆した。が、言葉通りトランプ向けだ。日本は慌てることなく従前の監視を強化して備え、むしろ「発射前攻撃用ミサイル」検討の契機とすべきだ。

北は12月の米韓合同演習についても、「次第に消えつつある朝米対話に冷や水を浴びせ、対決の雰囲気を高める極めて挑発的で危険な行為だ」、「我々の忍耐は限界に近づいている」と哀訴調だが、米国防省は「米韓空軍が即応性を確保するための必要なあらゆる基準を満たす内容」と意に介さない。

金正恩は自ら区切った「年末」のせいで自縄自縛に陥った。内心は軍事演習などしたくない青瓦台も尻に火が点いては付き合わざるを得ない。ということで次は韓国。上記拙稿にここ最近の出来事を書いたが、いよいよ11月22日に日韓GSOMIAが切れる。

歴史問題を蒸し返す韓国の財団と日本の学者ら

米国はエスパー国防長官が13日から韓国などを歴訪すると発表した。ソウルで鄭景斗国防相らと会談するが、GSOMIA維持の他、在韓米軍の負担金問題などの件もある。GSOMIA維持派の鄭国防相だけで済むのか。文大統領が自ら会ったらどうか

体面を保ちつつGSOMIA維持の手立てを青瓦台が必死に探る様は哀れを誘うが、日本が毅然としている以上、米国に頼るしかない。だが、民間レベルでは、日本の非道を蒸し返そうと東北アジア平和センターが8~9日にソウルで「サンフランシスコ体制を越えて」なる会議を開いたという。

中央日報サイトより:編集部引用

参照:韓日葛藤の根源「サンフランシスコ体制」何が問題だったのか(中央日報)

同会議は「サンフランシスコ条約に批判的に焦点を当てる国際学術大会」で、後援は東北アジア歴史財団など。会議は、韓国併合100年の2010年の「強制併合条約は源泉無効」なる韓日知識人の共同宣言を継承していて、今度が4回目の開催という。

東北アジア歴史財団は、韓民族の古代史を奪おうとする中国の東北工程や日本の歴史歪曲など対抗するべく06年に韓国教育部傘下の公共機関として設立され、青瓦台が任命する理事長は閣僚級、事務省庁は外交部次官級と高位で、博士級の研究員だけでも46人いるそうだ。

参加者は基調演説するガヴァン・マコーマック(豪州国立大)、李泰鎮(ソウル大)、フ・ドグン(武漢大)、ヤン・チャン(上海交通大)、徐勇(北京大)、和田春樹(東大)、戸塚悦朗(龍谷大)、アレクシス・ダデン(コネチカット大)、チャールズ・アームストロング(コロンビア大)、原貴美恵(ウォータールー大)各教授ら。

錚々たるあちらの方々ばかり。和田教授やちゃっかり教授に収まっている「慰安婦=性奴隷」発案の戸塚弁護士は説明を要さないが、筆者座右の「サンフランシスコ平和条約の盲点」を編んだ原教授がなぜこれに出るのだろう。そして、知る範囲で彼らの業績はこうだ。

李泰鎭:02年6月に米国で主催した「第3回韓国併合再検討国際会議」で主張した日韓併合無効論は欧米の国際法学者や日本の歴史学者によって退けられた。東大での講義録が出版されていて、学生の鋭い問いに事なきを得ようと「良い質問ですね」を連発。

マコーマック:専門が主体思想。朝鮮戦争で北の南進説を否定し、内戦に介入したと米国と国連を批判。李承晩を米国の傀儡と見做して木村幹神戸大教授に論破された。拉致被害者を政治団体と非難するような実に許し難い人物。(筆者も、李承晩は反共・反日・反米で、韓国は米国が好きでないと思う)。

ダデン:マコーマック同様、15年5月の米国研究者ら187名の「日本の歴史家を支持する声明」にも名を連ねる筋金入りの反日。ジョージ・アキタとブランドン・パーマーは「日本の朝鮮統治を検証する」(草思社)で「彼女の研究論文の随所に見られるのは、どうにも学者らしからぬ意味不明かつ一方的な記述の羅列と、時に史実の立証が不可能な出来事に基づく、単純にして怪しげな結論なのである」と酷評。

アームストロング:専門は半島を中心にした近現代東アジア。13年に「Tyranny of the Weak」がフェアバンク賞を受賞したが、盗作や情報偽造を含む引用問題が発覚して返上し、20年の退職を公表。

いずれ劣らぬ面子なので会議の中身は予想が付く。米国に一喝されて戦勝国に入れなかった恨みがあるだろうが、35年間は日本に合邦されていただけなので仕方ない。サ条約で日本が放棄するに当たり、台湾と違って「独立を認められた」だけでも感謝すべきだ。

米国、台湾、香港…中国は「内憂外患」の年末へ

最後は放棄されただけの台湾を勝手に領有した中国。米中交渉は双方の発表が食い違って不詳だが、知財盗取や補助金など解決なしに米国が妥協することは、北の核放棄の件同様にあり得まい。何故なら両事案とも米国議会が超党派で支持している。

蔡英文総統(台湾総統府HPより:編集部)

総統選を2ヵ月後に控えた台湾はといえば、大陸委員会が先月24日に発表した意識調査では「台湾独立」支持が27.7%と10年の調査開始以来最多となり、「台湾の未来と両岸関係の発展は2300万人の台湾人が決める」という政府主張に賛同する者も89.3%に達した。

中国の態度については、「(台湾)政府に友好的でない」が69.4%、「(台湾)人民に友好的ではない」が54.6%とこれも過去最多。中国が主張する「一国二制度」に対する意見は「賛成しない」が89.3%を占めた。

中国共産党は10月末の4中全会で「一国二制度」堅持を表明したが、大陸委員会は即座に拒否。この調査でも、香港に一国二制度が実行されていないとする見方に「賛成」が54.8%に上った。民進党蔡英文候補の勝利がますます濃厚といえよう。ということで最後はその香港。

Etan Liam/flickr

3日に北京語を話す男がナイフで市議ら6人を負傷させる事件が起きたが、翌4日には新界地区の駐車場で倒れている大学生が発見され、病院で死亡が確認された。当時、駐車場の外では警官隊とデモ隊が激しい衝突を繰り広げていた。

その4日に訪中した林鄭長官に習主席は「高い信頼」を伝え、香港統括の韓副首相は6日、「暴力制止と秩序回復」のため香港を率いて「再出発と再前進」するよう求めた。半年で3千人以上が検挙されついに死者まで出たタイミングで、林鄭が2人から褒められ激励されたことは抗議の助長しかしまい。

以上、師走を前に走り回る北朝鮮と韓国と中国の様子をまとめてみた。

高橋 克己 在野の近現代史研究家
メーカー在職中は海外展開やM&Aなどを担当。台湾勤務中に日本統治時代の遺骨を納めた慰霊塔や日本人学校の移転問題に関わったのを機にライフワークとして東アジア近現代史を研究している。

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