森ゆうこ議員が必読すべき政治コラム

2019年11月11日 06:01

官僚の疲弊を招く国会質問

官僚が国会対応で疲弊している問題を、ネット論壇が厳しい論調で取り上げています。疲弊させている人物の一人が森ゆうこ参院議員(国民民主)であるとして、言論プラットホーム「アゴラ」主宰の池田信夫氏が攻撃し、「嘘をついたのは森ゆうこ議員である」とのブログまで掲載しました。

参議院ネット中継YouTubeより:編集部

森議員は「質問通告のデマ拡散をやめてください。証拠として保全する」と、ツイッターで反論すれば、池田氏はさらに「私を含む多くの人をツイッターで脅迫した」と、非難しました。事情がのみこめない人には、「対立の原因は、国会質問の通告の遅れのようだ。なぜそんな大問題になっているのか」です。大問題になるだけの理由がありそうです。

関係者の対立の構図は混線状態です。さらに、アゴラ側は「官僚に対する人権軽視は民主党時代から受け継いでいる」「職員の無制限労働に依存した国会運営」など構造的な根深い問題がある、との見方です。重大な問題なのに、「一般紙は注目していない」と、一般紙にも不満です。

反応が鈍い一般紙にやっと好コラム

その一般紙に問題の全体像が理解できる短いコラム(読売新聞11/9、夕刊・とれんど)が載りました。夕刊の目立たない面の掲載ですので、読まれていない人が多いと思い、詳しく紹介します。

執筆者は川嶋三恵子論説委員です。「9月、厚労省企画官の千正康裕氏(44)は同僚らにメールで自らの退官を報告した。また一人、官僚が霞が関を去った」。官僚の実名を明記した書き出しです。

入省19年目。医療政策や児童虐待対策を手がけ、充実した日々だった。自分のアイディアを政策にできる。そう考えると、月曜の登庁は楽しみだった。だが、管理職になると、現実は厳しさを増した。若い部下たちは大量の仕事を抱え、新しい仕事に取りかかる余裕もない。

企画官の話です。

とりわけ官僚の疲弊を招いているのが国会対応だ。国会議員が質問内容を連絡するのが遅く、答弁を作成する官僚は深夜まで帰宅できない。外部と交流する機会が減り、視野が狭くなっている」「的を射た政策論議ならまだしも、政権の揚げ足とりのような野党も質問も少なくない。

と、続きます。

嫌気した官僚がやめていく

森ゆうこ議員が絡む件とは直接、関係はありません。関係はなくても、あまりにも問題点は似ています。さらにコラムは企画官の思いを「長時間労働でやりがいも感じられず、退職する官僚は後を絶たない。役所の業務改善だけで済む話ではない」と、紹介しています。

通産官僚から参院議員に転進し、現在は慶大教授の松井孝治氏は、「官僚の劣化を考える」(日経新聞・経済教室、8/6)のシリーズで、同様の指摘をしています。霞が関(官僚)の国会対応事務の変化についてこう書いています。

「近年の野党対応の急増は官僚の徒労感を加速させている。官僚答弁は急速に減少し、国会論戦は対首相・閣僚質疑が中心にと、変貌した」「野党は官僚に罵声と資料要求の嵐を浴びせかける」「このままでは霞が関(官僚による政策機構)が維持されるとは思えない」。厳しいですね。

松井氏は一つの提案を書いています。「官僚は政策立案・分析に注力する」「与野党の議員側は国会調査スタッフ、政党シンクタンクを充実させる」と。専門的な能力や経験を持った官僚を、議員の質問取りのために遅くまで待機させ、その答弁を深夜までかかって作成させている愚に怒っています。

こうした人材の無駄使い、時間の空費が日本経済の停滞の一因になっているし、国会の機能低下を招いているともいえます。台風19号が襲来する前夜の10月11日、「森議員の質問が来ないので答弁が作れず家に帰れない」と、官僚を名乗る怒りの告発がツイッターなどで相次いだそうです(アゴラ側)。

森議員は、国家戦略特区ワーキンググループの座長代理、原英史氏に関する問題で国会質問をしようとしていました。その原氏との間でも対立しており、「間違いだらけの情報をツイッターで流した」「国会での名誉棄損、プライバシーの侵害」などと、原氏はアゴラに投稿しています。

さきほど紹介したコラムで、退官した厚労省官僚が「的を射た政策論議ならまだしも」と、嘆きましたね。池田氏は「生産的な国会審議をすべきだ。そのカギは野党が握っている」と。

メディアはこんな時こそ、主要国における国会審議を取材し、日本と比較した記事を書くべでしょう。国際部の記者が駐在先の日本大使館に出向している官僚に話を聞けば、「日本の国会審議は揚げ足取りで時間を空費している」くらいのことはすぐ指摘くれるでしょう。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2019年11月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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