バロンズ:米株が最高値更新で、割安銘柄はどこに?

2019年11月11日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは資本財大手ハネウェルの変身を取り上げる。ハネウェルは世界でも屈指の資本財メーカーだが、元電気技師で53歳のダリウス・アダムチク最高経営責任(CEO)の下では、セールスフォースのモデルに倣う産業ソフトメーカーへ変貌を遂げる見通しだ。ハネウェルは、常に制御装置にソフトウェアを使用してきたが、今回は自社と他社のための生産拡大や維持費削減、確実性改善を狙いソフトウェア開発にいそしむ。こうした環境下、株主還元策が維持されれば、足元の180ドルから2020年には200ドル突破を果たし、長期的な成長を継続しそうだ。その根拠などは、本誌をご笑覧下さい。

(カバー写真:jpellgen (@1179_jp)/Flickr)

当サイトが定点観測する名物コラム、アップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週のテーマは米株が最高値を更新するなかで注目の割安株を紹介するほか、投資家の政治信条が与える影響を取り上げる。抄訳は、以下の通り。

米株は最高値更新、値ごろ感のある銘柄とは―Stocks Keep Hitting Record Highs. Where to Find Values Now.

過去最高値を更新する主要米株指数より、世の中には重要なことが数多く存在する。年初来で時価総額が6兆ドル増加し、ダウが年初来で18.7%高S&P500種株価指数が23.4%高ナスダックが27.7%高を遂げたことをないがしろにするつもりはない。ただし、主要株価指数が過去最高値を更新する陰で、安全資産は下落中だ。例えば、債券市場は長期金利が上昇するなどイールドカーブはスティーブ化し、マイナス金利の債券残高は夏場の17兆ドルから11.9兆ドルへ減少米10年債利回りも例外ではなく、Fedが利下げする過程で1.47%から1.94%へ上昇した。

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(作成:My Big Apple NY)

米2年債と米10年債の間での逆イールドも解消済み。Fedによる様子見姿勢への転換をサポート。

リスク・オフ相場の反転は、為替市場や貴金属市場でも明白だ。円や金先物市場などの安全資産は下落し、中国の人民元は11月6日には7営業日続伸し6元台を回復した。米中当局者の発言などを受けて、米中貿易協議・第1弾の合意をめぐり米中首脳が署名を交わす期待が市場で高まったためだ。

リスク・オン相場へ転換した根本的な理由は、ナンシー・ラザー氏率いるコーナーストーン・マクロによれば、米景気後退や世界経済減速をめぐる懸念の低下だろう。生産性拡大を目指したソフトウェアなどの設備投資は改善し、企業側の生産性は拡大し労働参加率も上昇中だ。さらに、利下げ効果が遅れて経済に波及するなか、米中貿易摩擦をめぐる不安も払拭されつつある。

一連の好環境下、バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチによれば、割安株はモメンタム株と比較して値ごろ感を強めている。割安株にここまで値ごろ感が現れているのは、2003年や2008年以来で、その後、割安株はモメンタム株をそれぞれ22%、69%上回っていた

仮にトランプ大統領の政策が米貿易赤字を削減させ、ドル高を抑制し、米金利とインフレを上昇させれば、投資家は米国株から海外株へ資金をシフトさせうる。少なくとも、ルーソールド・グループのジム・ポールセン最高投資責任者(CIO)はそう予想する一人だ。同氏は「長きにわたるアンダーパフォーマンスにより、投資家は米国株以外の出遅れ市場を敬遠してきたが、今はこうした市場や銘柄に割安感を与えている」と指摘する。

多くの投資家は、アンダーパフォームしていた金融セクターの比重が大きい時価総額加重平均型のETFを警戒してきた。それは、海外株の場合、価値のある銘柄を見抜くことができるアクティブ運用が有利である証左と言えよう。

ファンドマネージャーの政治信条が、リターンに打撃を与えるリスク―Your Fund Manager’s Politics Could Be Hurting Your Returns.

政治は宗教のようなもので、人々は社会生活でこの2つの話題を回避しがちである。「無宗教」派が増えているなかで、後者はそれほどタブー視されなくなっているが、政治は違う保守派とリベラル派の分断がこれまでになく広がるなか、そうなる傾向が強く、金融市場で投資家の見方に政治が強く反映されれば、尚更だろう。著名な投資家であるレオン・クーパーマン氏など、富裕税や国民皆保険を掲げる民主党大統領・有力候補のエリザベス・ウォーレン候補などを攻撃してきたものだ。クーパーマン氏は、ウォーレン候補が大統領に選出されれば、米株が25%下落すると見込む

その他の億万長者のポートフォリオ・マネージャーも、2020年の米大統領選を控え株価への影響を予想する。ポール・チューダー・ジョーンズ氏は前週、投資家カンファレンスにて同氏率いるチューダー・インベストメントが投資家向けに実施した世論調査の結果を紹介した。調査によれば、ウォーレン候補の勝利でS&P500は2,250、11月4日の最高値から27%下落する見通しだ。バイデン候補やブティジェッジ候補など穏健派が当選した場合は2,700程度の下落、つまり12.5%安にとどまる公算。逆にトランプ大統領が再選すれば、S&P500は3,600、19%高が見込まれている。なお、この世論調査は、マイケル・ブルームバーグ氏が民主党候補として出馬を検討する前の結果である。

近年の大統領で米株パフォーマンスを振り返るとまちまちで、党派による違いは指摘しづらい。CNNが10月31日までのS&P500のリターンを基に報じたところ、トランプ大統領の任期中は34%高で、ブッシュ大統領(父)の場合は51%高だった。最高のパフォーマンスを見届けた幸運な大統領はクリントン氏で、任期中のS&P500はITバブルを追い風に210%高を遂げた。逆にブッシュ大統領(息子)の任期中は、リーマン・ショックが痛手となり40%安となる。オバマ大統領の任期中は、逆にリーマン・ショックからの回復期にあたり182%高だった。レーガン政権では、118%高を記録した。このように、過去を振り返ると政治的信条で市場動向を決めつけるべきではなく、それは個別銘柄でも同様である。

カンザス大学ビジネススクールのM. Babajide Wintok教授とフォーラー・カレッジ・オブ・ビジネスのYaoyi Xi教授によれば、投資信託のマネージャーは投資対象の取締役が自身の政治信条と近い企業を選ぶ傾向があるという。しかも、ポートフォリオに政治的バイアスを取り入れれば取り入れるほどアンダーパフォームしやすく、ボラティリティ上昇のリスクにさらされやすい。

(チャート)世代別の宗教分布

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(作成:My Big Apple NY)

ではなぜ、合理的で利益の最大化を目指す投資のプロが自身の政治信条を銘柄選び反映させてしまうのだろうか。理由の1つに、社会的アイデンティティのある人物を好ましいと捉える傾向が強いためだ。こうした人々は近所に居住している場合や、同様のネットワークを共有している場合が多く、必然的に情報交換の機会も増えるというわけだ。

共和党寄りのポートフォリオ・マネージャーは、共和党寄りの銘柄を民主党寄りのマネージャーより8%多く保有し、民主党寄り企業の銘柄を3%少なく保有している。ポートフォリオ・マネージャー全体でみると、政治信条が近い銘柄の保有比率は全銘柄の43%を占め、逆は33%程度だ。

政治的信条に基づく銘柄選びでのアンダーパフォーマンスはそれほどでないが、政治的信条が近い銘柄が下落していても、長く保有してしまう落とし穴が隠されている。また、ボラティリティ上昇に弱い点も気掛かりだ。

明るい材料としては、年齢とともにポートフォリオ・マネージャーが政治的信条を銘柄選びに取り入れる傾向が弱まる点だろう。共和党寄りのマネージャーの多くは、民主党支持者のウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイの株式を保有している。

ポートフォリオ構築に自身の政治的信条を反映させるという示唆は、インデックス投資の新たな議論となりうる。一方で、環境・社会・ガバナンス(ESG)など経済以外の条件に基づく銘柄選びは、利益を最大化させるという信条から乖離したものだ。しかし、少なくともポートフォリオ・マネージャーでなく投資家は、経済以外の理由で投資先を選択しつつある。

――割安株と言えば、バロンズ誌では指摘されていませんが、個人的に中小型株指数のラッセル2000の出遅れに注目しています。外部環境に左右されない内需株で構成されながら年初来りたーンは18.6%とダウをわずかに下回り、未だ最高値を更新できず。景気後退入り懸念が低下するなかで今後上昇余地があるように見える半面、鈍いパフォーマンスにとどまっているのは気掛かりです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月10日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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