親子上場問題を中心とするグループガバナンスの課題

昨日の日経ニュースにて、東芝が2000億円を投じて上場子会社3社を完全子会社化する(TOBによって他の株主から株式を取得する)と報じられています。日立化成等、上場子会社の解消を急ぐ日立製作所と同様、企業統治改革の流れの中で「親子上場の解消」は他の産業部門でも進みそうです。

ということで(?)、本日発売のリスクマネジメント・TODAY117号(2019年11月15日発行)に「親子上場問題を中心とするグループガバナンスの課題」と題する論稿を掲載いただきました。LIXIL・CEO解任事件をめぐるガバナンス強化の課題については樋口晴彦先生(警察大学校)のご論稿に譲るとして、私は経産省「グループガバナンスの実務指針」や「公正なM&A指針」等のソフトローから、親子上場問題(正確には上場子会社問題)のトレンドを解説する、という体裁になっております。

マスコミの論調等では、どうしても上場子会社の少数株主保護に光が当たることが多いように思いますが、コングロマリット・ディスカウントを低減させることへの(親会社、支配会社に対する)機関投資家の圧力は思いのほか強いものがあります。なので、親子上場解消の場面では、親会社の役員にも相当強いプレッシャーがあるわけでして、そのあたり支配会社、被支配会社双方に公平な見方で執筆をしたつもりです。お読みになられる機会がございましたら、ぜひご意見・ご感想などお聞かせいただければ幸いです。

ちなみに(これは上記拙稿の内容とは無関係ですが)上場子会社に不祥事が発生し、グループ全体のレピュテーションリスクが顕在化した場合、親会社の役員に監督義務違反による法的責任が発生する・・・というのは、福岡魚市場株主代表訴訟事件のように、両社の役員を兼任するようなケースでないと認められない、というのが現在の常識的判断だと思います。

ただ、最近のガバナンス実務指針や公正なM&A指針に従って、上場子会社の社外取締役が動くことが主流となりますと、たとえばビューティ花壇株主代表訴訟の地裁・高裁判断過程などを前提に考えますと、うーーーん、親会社取締役も安閑としてはいられないのではないかと。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年11月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。