ヤフーとLINEの経営統合に思うこと

岡本 裕明

ヤフー(ジャパン)とLINEが経営統合する最終調整に入った、というニュースのヘッドラインを見た瞬間、なるほど似合いのカップルだと思うと同時にLINEの親会社である韓国ネイバーがソフトバンクに本当に売るのか、と一瞬驚きました。韓国ネイバーは韓国内の検索サイトではかつてはトップだったこともあり(現在はグーグルの後塵を拝しています)、なかなかパワフルな会社であるだけに孫さんもよく口説いたな、と思ったのです。

公式ツイッターより:編集部

が、よく見るとそうではない、50:50で共同出資会社を作り、ヤフーなどを支配下に置くZホールディングスに出資するというものであります。ちょっと複雑なので説明を要します。もともとはソフトバンクがヤフージャパンを持つという支配関係でした。ソフトバンクはヤフーを含む様々な事業会社を形の上で全部並列で並べ、その全ての事業を束ねる会社として名前を10月1日付でZホールディングスに変えたのです。ですからのヤフーの上場銘柄コード4689がそのままZホールディングスにすり替わっています。

このZホールディングス傘下にはヤフー以外に前澤氏から買ったZOZO、PayPay、ジャパンネット銀行、アスクル、一休など20数社がずらりと並び、今回このラインアップにLINEが加わる、というのが新聞各紙に報じられている内容であります。また、このスキームはまだ、確定したものではなく、この方向で検討しているとされています。

正直、LINEを取り込むために孫さんはずいぶん無理をしたな、という気がします。確かに今回の取引でLINEをソフトバンクグループの傘下企業の一つに収めることはできますが、ネイバーとの新会社はソフトバンクと半々の出資ですからネイバーが自動的に日本のヤフー以下Zホールディングス傘下の企業に一定の影響力を持つことが可能になります。

(勘違いされないように申し上げますが、現在、ソフトバンクが持つZホールディングスの株式は45%程度ですから第三者割当をしない限りソフトバンク/ネイバーの持ち分比率は変わらないはずです。)

アメリカの動きを見るとGAFAなど支配企業が水平サービスを展開し、顧客の囲い込みを通じて独占しようとする傾向が強まっています。ネットポータル、検索からショッピング、金融、旅行、ゲーム、コミュニケーション…などをすべて抱き込むスタイルです。直近のニュースではグーグルがシティバンクと連携し、銀行サービスをスタートさせる、あるいはフェイスブックがフェイスブックペイを今週からにも始めると発表しています。

これらのスピード感はもはや、専門家でも追いつかないほどであり、一般消費者はほぼ置いて行かれているといっても過言ではないでしょう。一方の若い方はそれについていこうとしがみつき、右往左往しているようにも見えます。これは喜劇なのか悲劇なのかさっぱりわかりません。

企業が金融緩和で市場に溢れだした資本をもとにどんどん異業種を傘下に入れていくスタイルが主流になると極論すれば企業そのものの派閥化が進んでしまいます。古い言い方をすれば現代版財閥化とも言えます。これでは面白いビジネスへの夢や起業マインドを歪めかねない気がします。数多い起業家もそこそこ大きくなったら大資本家に売却して小銭を得るという本来の起業家マインドとは全く違う世界も垣間見える時代となっています。これではちっとも面白くないビジネスが世界で広がっているとも言えます。

ソフトバンクもGAFAに後れを取らないよう必死であることはわかります。ですが、これだけ日常茶飯事に資本による支配が続くのならば孫正義氏が苦労して自分で突き進んできた起業家マインドを次の世代に継承できなくなる気がします。非常に複雑な気持ちになります。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年11月14日の記事より転載させていただきました。