森ゆうこ問題:日程闘争の檻に住む55年体制の亡霊(前編)

高橋 富人

森ゆうこ議員の通告遅延問題から端を発した数々の事案は、問題が深刻化している原英史氏に対するプライバシー侵害等の問題を除き、ほぼ「詰み」の状態に収れんした。

国会中継(YouTubeより)

今回の記事では、前編では当該事案の現状を個別に俯瞰し、後編でこのような問題が発生する根本原因はどこにあったのか、という点について掘り下げて論じたい。

通告遅延について

森ゆうこ議員の通告遅延問題は、遅延を問題とする論者の論考は出そろった感がある。

多数の記事を一つ一つあげることにも一定の意義はあるが、ここでは日本維新の会の足立議員のTwitterで「ほぼ詰み」になった状態も含めまとめられているアゴラ編集部の記事を紹介するにとどめる。

これを受け、森ゆうこ議員が「嘘をついていない」ことを証明するために唯一できることは、音喜多議員が言う通り、「当日に送った通告内容の時系列での公開」だ。

その内容に基づいた反論でない限り、彼女が何を言っても時間稼ぎのための空騒ぎである。

まして、ブログの記事削除を求める圧力をかけるなど、もっての他である。

いわゆる「情報漏洩」について

これは、もはや「詰み」である。「情報漏洩」などそもそもなかったのだ。

原口一博議員などが鼻息荒く立ち上げた「情報漏洩調査チーム」は、ほぼ1カ月前に書かれた10月21日の産経新聞の記事に対して、状況を一歩も前に進めることができていない。

また、同日に高橋洋一氏が書いた記事に対する明確な反論もできないでいる。

おまけに、サンフランシスコ時間(太平洋標準時)を使った時間の取り違え(もしくは捏造)すら発生し、指摘を受けたら黙り込むという体たらくである。これは、国会という正式な場で「情報漏洩」の証拠として、森議員陣営が持ち出した情報である。池田信夫氏が指摘するように、「情報漏洩調査チーム」は、この「恥ずかしいでは済まされない大間違い」について徹底的に調査、公表する義務がある。

以上から、いわゆる「情報漏洩」事案は、森ゆうこ議員の「通告遅延」という問題をほとぼりが冷めるまで隠すための煙幕だった、と総括されるべきだろう。

いずれにしても、このような大きな問題を、発端の野次馬情報のみつまみ食いして、最も大切な総括について独自の見解を示さないでいるメディアは、義務を果たしているといえるのだろうか?

新聞でいえば、産経新聞だけが続報を追い続けているが、せめて大手5紙を構成するその他の新聞社は、本件をそれぞれの視点から総括すべきであろう。

原英史氏への名誉棄損やプライバシー侵害について

本件において非常に重大な問題に発展したのが、森議員による議員特権を使った原英史氏への名誉棄損やプライバシー侵害の数々だ。

これは、「私人の権利を侵害する権力者」の問題であるうえ、問題は深刻の度を深めている。

森議員自ら提起した議論(攻撃)であるにもかかわらず、原氏が求める「国会での当事者双方の証人喚問」に応じないようであれば、森議員は言論の府に籍を置く資格はない。

繰り返すが「当事者双方の証人喚問」に森議員が応じないようならば、党としての懲罰の前に、議員としてのけじめをつける意味で、原氏に謝罪の上議員辞職するべきだ。

前編をまとめる。

  • 「通告遅延について」は、森ゆうこ議員が「嘘をついていた」ことが国会で立証され、ほぼ詰みの状態。これを受けて森ゆうこ議員ができることは、「通告内容の時系列での公開」とそれに基づく反論のみ。
  • 「いわゆる「情報漏洩」について」は、そもそも「情報漏洩」そのものがなかったことが立証された形で終結。森ゆうこ議員、および国民民主党をはじめとする関係者は、非を認め速やかに謝罪する必要がある。
  • 「原英史氏への名誉棄損やプライバシー侵害について」は、「私人の権利を侵害する権力者」の問題として深刻化している。森ゆうこ議員は、原英史氏が求める「当事者双方の証人喚問」に応じるつもりがないならば、速やかに原氏に謝罪し議員辞職すべき。

後編では、少し大きな問題提起として、なぜこのような厚顔無恥な問題を次々と引き起こす「森ゆうこ的野党議員」が存在するのか、という原因を掘り下げる。

高橋 富人
千葉県佐倉市議会議員。佐倉市生まれ、佐倉市育ち。國學院大學法学部卒。リクルート「じゃらん事業部」にて広告業務に携わり、後に経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で広報を担当。2018年9月末、退職。出版を主業種とする任意団体「欅通信舎」代表。著書に「地方議会議員の選び方」などがある。