日本に必要な9項目の基本政策:含み資産の活用で経済発展を --- 飯田 孝司

2019年11月20日 06:00

日本の含み財産

日本人は伝統的に「お上」に対する依存心が強い。さらに村社会意識も手伝って、どんな大きな災害にあっても暴動が起きない。これを世界の目から客観的にみると「国民に信頼されている日本政府」ということになる。

信頼はそのまま信用になり、これは大変な財産である。経済用語で言えば日本は膨大な含み資産を保有しているということである。だから、日本政府は膨大な借金を抱えていても、今のところ一部の外国のようにハイパーインフレや極端な通貨安になったりしない。果たして日本ではその膨大な含み資産は有効に活用されているのだろうか。

はむぱん/写真AC(編集部)

世界と日本の経済指標比較(負債とGDP)

下図(出典:野宮好堯/研究報告)に示すように、その国の債務とGDPは正の相関関係にある。それは資金を調達して(債務を負って)経済活動をすることでGDPを増加させているからである。その中で日本は債務に対応するGDPが最も少ないがその理由は何か。

債務を政府債務と民間債務に分けて、その動きを下図(出典は上図に同じ)に示す。中国のような経済発展期には民間債務残高対GDPが上昇する。日本のような経済減速期には民間債務残高対GDPは減少し続けるのに加え、政府債務残高対GDPの上昇が著しくなる。つまり日本は民間の事業活動の停滞に対する穴埋めに国が膨大な含み資産を毎年浪費している。

また労働者の賃金は下がり傾向にあるのは日本だけで、その他の主要国は順調に上昇している。国民の安全を守る防衛費についても上昇していないのは日本だけで、もうすぐ韓国に追い抜かれそうになっている。このように、民間事業者は国民の暮らしと安全を犠牲の上に、ひたすら利益の備蓄に努めている。

民間事業者はこのまま国の経済をけん引できるのか

民間事業者については創業者の「生みの苦しみ」の時代を経て現在の経営目標は「選択と集中」による利益の確保が第一となっている。利益を備蓄することは、ひと昔前までは経営資源の放置として「経営の怠慢」とされていたが、現在ではそれを指摘する声もわずかになった。

経営目標が利益の備蓄に集約されている現在、このままほっておいて民間事業者の企業マインドが創業者並みのチャレンジ精神に戻ることは期待できない。

そこで国民の頼りになる「国」のリーターシップが必要となってくる。国と民間事業者は明確に役割が異なる。民間事業者は自由な活動が一番力を発揮するにもかかわらず、国は各種補助金を使ったりした介入を見せている。しかし国による民間事業者支援政策は殆ど効果を得ていない。国の活動は国の政策の遂行に特化するべきであるが、日本の政治構造はそうなっていない。

日本の政治構造

国の政策に関連して日本を政治構造の面について下記のような説がある。もともと江戸時代までは、政治のかじ取りは幕府(今は官僚)が行っていた。明治以降に初めて民主主義が取り入れられた。その結果、国民は「たかり」となり、新たな職業である政治家はその「たかりの代表」となって、現在に至っている。

しかし、現在の優秀な官僚は国の基本政策を決断する機能を有していない。その基本政策を風に例えると、官僚は台風と同じで行く先は他人の風まかせであり、変化の激しい現代には対応できない。

官僚に限らず日本人は「何をやるか」を考えることは下手であるが「どのようにやるか」を考えるのは上手だ。何をやるか(基本政策)を決断する機能が日本には決定的に欠けている。基本政策をはっきりさせれば、それが風となり、その推進は官僚、民間事業者共に得意技である。

過去と現在の風の吹き方は

近代以降の日本で大きく風が吹いたのは、明治の文明開化と戦後の復興の時期である。その時日本は大きく発展したが、その風は外圧の風である。

現代は世界の国々は小さな得点を積み重ねていくため、日本に対して一度に大きな外圧の風は吹かない。つまり神風はもう吹いてくれない。

今までも風を吹かそうとして様々な基本政策の提案が幾度も多方面からなされている。しかし、日本人は調整が大好きである。どんなに立派な基本政策でも調整していくうちに、既得権者にも配慮をし、次第にバラマキとなっていき、やがて新たな利権の巣窟となっていくのが日本の政治の標準的パターンである。

今の日本は20世紀の遺物で、全ての面において日本を作り替える必要があると多くの人が感じている。しかし、現実は調整ばかりが多く、何をやってもうまくいかない。これを「失われた30年」とか「ゆでガエル状態」と指摘する人も多い。

神風は吹かないのだから日本人自ら風を吹かすしかない。特に国の基本政策はその国の生命線である。以下に今後の日本にぜひとも必要な基本政策を示す。

日本に必要な基本政策のコンセプト

  • 安全で安心できる豊かな生活の実現を目標とする
  • 国が実施すべき21世紀の新しい具体的主要政策目標を設定する
  • 残された日本の含み資産を大胆に活用する
  • 100年の計で実施する項目も取り入れる(⇒中国に学べ)
  • 調整型でなく行政トップの強い指導力の元に推進する
  • 国土計画の抜本改革を行い、日本の社会システムの効率化を図る

国の具体的基本政策目標9項目

A  国土政策

A-1  人の居住地区を都市部及びその近郊に集中

  • 道路等住宅関連インフラコストの低減
  • 公共サービスの集中による充実
  • 福祉サービスの集中による充実

A-2  現在の居住地をより安全に⇒より安全な居住地に移住(昔の日本に学べ)

  • 減災による安全の確保
  • 災害対策インフラコストの低減

 B  人の生活

  B-1  百坪(最低50坪)住宅の実現(世界に学べ)

  • ゆとりある生活の実現
  • 核家族化の大幅緩和
  • 少子化への歯止め
  • 屋内用産業(家具・屋内インフラ等)の発展

  B-2  労働者の給料の大幅引き上げ(他国に学べ)

  • 豊かな労働者生活の実現
  • 給与水準は現状の1.5倍を目標
  • 安易な国内外の安価労働力への依存からの脱皮
  • 国内消費の大幅改善

  B-3  終末医療等の改革(欧米に学べ)

  • 人生100年時代への対応
  • 医療費の大幅削減
  • 終末医療受診方法の自由化及び当該部分への混合診療の導入

 C  安全・環境

  C-1  防衛能力の充実(世界に学べ)

  • 米国依存からの脱却
  • 防衛費は世界主要国並みのGDP比2%程度に倍増(現状1%)
  • 国民の安全確保
  • 激動する国際情勢に対応
  • 兵器の国産化
  • 科学技術振興

  C-2  林業の復活(オーストリア等に学べ)

  • 日本の一次産業全体の発展のきっかけ
  • 国内の森林資源の有効活用
  • 国内で林業のノウハウを持つ特定の民間事業者に全面業務委託

  C-3  原発設備の安全性向上

  • 原発安全不安の払しょく
  • 当面数基のリプレース
  • 最新式の原発設備の導入
  • 安定電源の確保

 D 未来への挑戦

  D-1  宇宙開発の飛躍的推進(米国、中国に学べ)

  • 世界先端の軍事技術は宇宙開発が主導
  • 宇宙産業の先取り
  • 自主外交の促進
  • 科学技術振興

21世紀の日本の発展を願って

基本政策を決断するのは「たかりの代表」とも指摘されている政治家である。現在の政権は異例の長期安定政権であり、政治家は政治生命、その「命」を有効に使ってほしい。必要に応じて含み資産を湯水のように使って、大きな成果を出してほしい。

どんなすばらしい政策でも必ず副作用はある。「たかり」とも指摘されている国民は、その点だけを強調して偉そうに指摘しないでほしい。国が確かな基本政策をしっかり推し進めれば、日本経済は発展する。

飯田 孝司 一般社団法人ディレクトフォース会員
1947年生まれ。1971年早稲田大学卒業。1971年新日本製鐵入社。1999年三菱マテリアルに転籍(2011年退職)。2007年ディレクトフォースに入会(現在に至る)

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