共産党にとっては改憲が活路ではないか

2019年11月23日 06:00

今週初め18日に「人権問題くらいでは、左右の大同団結はできないのか」という題名の文章を書いた。他国での人権侵害の問題に憂慮の念を示すのに、国内政治における左右の立場の違いは関係がないはずだ、という趣旨で書いた。自民党の中には、憂慮を表明する勢力があるのだから、野党側が黙っているというのはおかしいのではないか、という趣旨であった。

正確を期するために言っておけば、共産党は、中国における人権侵害の実情に憂慮する声明14日に出していた。立憲民主党は代表談話を21日に出した。礼儀の問題として、私としてもそのことについて触れておきたい。

現在進行中の「桜を見る会」の話題では、他の野党の政治家たちのほうが騒いでいる印象があるが、もともと調査をして問題提起をしたのは、共産党の田村智子議員であった。いわゆる調査能力において、共産党が、支持政党層をこえて高く評価されていることは、周知の通りである。

参議院インターネット中継より

選挙法がらみの問題や不倫などの生活に関する問題などの「身辺問題」や、個人情報をさらす文書の公開や的外れの失言などの失態について、共産党議員の話は、あまり聞かない。国民の多くが必要だと考えている日米安保体制に真っ向から反対を唱えているため、国政において大きな勢力を築いたことはない。

しかし日米安保体制の評価が関係ない地方議会においては、共産党が巨大な勢力を持っていることも、よく知られている。地方議員数は2,800人以上で、特に市区町村レベルでは自民党より多い(公明党にわずかに及ばず2位)。

テリー伊藤氏が執筆した『お笑い革命日本共産党』(1994年)という本を読んだことがある。テリー伊藤氏が、冷戦が終焉したときこそ、最も注目すべき躍進が期待される政党は共産党だ、という主張をされていたと記憶している。

テリー伊藤氏の主張(もともと少しおどけたトーンが含まれていたわけだが)は、必ずしも現実のものになったとは言えない。しかし共産党が依然として日本の国政で独特の存在感を持っていることは、否定できない。

日本共産党の歴史には「裏話」としてしか語られない様々な暗部がある。「代々木」と呼ばれていた時代を体感として知っている世代には、特にそうだろう。鉄の結束のようなものを感じさせる反面、個人プレーがなく、長期に渡る同一党首の君臨とスター議員の不在が、構造的な問題ではある。

2019参院選共産党公約より

最近では、政党交付金拒絶の伝統を、『赤旗』購読者激減の時代の中で、どう維持していくか、と言った問題に直面しているとも言われる。だが何と言ってももったいないのは、共産党の外交政策観だ。

しかしひとたび改憲がなされてしまったら、どうだろうか。自衛隊の合憲性のみならず、日米安保体制の合憲性も明確になる改憲がなされてしまったら、どうだろうか。共産党も、改憲の暁には、新憲法に従うしかないのではないだろうか。その時は、共産党にも、新しい時代が訪れるだろう。

あやふやな憲法学通説の怪しい権威に訴えて自らの政治勢力の温存を図る勢力によって、日本の政治は停滞している。改憲が果たされれば、国政に新しい構図がもたらされるだろう。

2年ほど前に、「改憲の鍵を握るのは、枝野幸男氏だ」という文章を書いたことがある。野党勢力は、軍国主義を防ぎたいというのであれば、私の本でも読んで国際法による自衛権の制約をよく勉強していただいたうえで、むやみに改憲反対だけを唱えないことが得策だと思う。

篠田 英朗(しのだ  ひであき)東京外国語大学総合国際学研究院教授
1968年生まれ。専門は国際関係論。早稲田大学卒業後、ロンドン大学で国際関係学Ph.D.取得。広島大学平和科学研究センター准教授などを経て、現職。著書に『ほんとうの憲法』(ちくま新書)『集団的自衛権の思想史』(風行社、読売・吉野作造賞受賞)、『平和構築と法の支配』(創文社、大佛次郎論壇賞受賞)、『「国家主権」という思想』(勁草書房、サントリー学芸賞受賞)など。篠田英朗の研究室

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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