南太平洋の島ツバルを中国から守れ:台湾との関係を毅然と維持

長谷川 良

バチカンに次いで人口が少ない国家、南太平洋のエリス諸島の島国ツバルという国名を初めて聞いた。オーストリア国営放送の公式サイトに22日、「ツバルが中国の人工島建築計画を拒否した」という見出しの記事が掲載されていたからだ。

ツバルのコフェ外相と会談する茂木外相(2019年10月21日、日本外務省公式サイトから)

ツバルのサイモン・ロバート・コフェ外相はロイター通信とのインタビューで「中国のオファーは、台湾の南太平洋地域への影響を弱める狙いがある」と指摘、台湾支持の姿勢を明確に強調した上で、「中国は太平洋地域での影響力拡大を画策している」と警告を発した。

早速、ツバルという国がどのような国かサーチした。1978年に英国から独立を獲得し、9島から構成されている。現在は英連邦加盟国で、2000年に国連に加盟している。人口はというと、2011年の段階で9847人だ。確かバチカン市国の人口は2016年時点で809人だから少し多いが、バチカンは世界13億人の信者を抱えるローマ・カトリック教会の総本山だ。ツバルは人口1万人以下の太平洋に浮かぶ島国だ。

その国が人口14億人の大国・中国の要求を拒否するだけではなく、正々堂々とその理由を説明し、台湾支持を明確にしているのだ。それだけでも驚きだ。中国人民軍が軍事攻撃に出ればツバルは半日も持たないだろう。ペリシテ人の巨人兵士ゴリアテに対抗するダビデ少年のような組み合わせだ。

記事を読む。小国の太平洋の島国ツバルは人工島建設のオファーを断った。地球温暖化の影響もあって海面が上昇し、国が水没する危険性に直面するツバルにとって、人工島建設は重要な課題だ。

ツバルのコフェ外相は、「人工島の建設は台湾の影響を弱める狙いがあるはずだ。中国は太平洋諸国での政治的影響力を拡大しようとしている」と指摘し、軍事力を背景とした中国の覇権主義に警鐘を鳴らしているのだ。

ちなみに、今日、台湾と外交関係を締結している国は15カ国に過ぎない。 ツバル、パラオ、ナウル、マーシャル諸島のような小国ばかりだ。その中で、最近、キリバスとソロモン諸島が台湾と国交を断絶して中国と外交関係を締結した。

ツバル訪問時に歓迎された台湾・蔡英文総統(総統府flickrより引用)

中国の習近平国家主席は新しいシルクロード構想「一帯一路」を標榜し、アジア、アフリカ諸国に巨額のインフラ投資などを呼び掛けているが、中国側の財政支援を受けた国々は巨額の債務を抱え、財政破綻に陥る国が続出している。「中国は財政支援を約束し、道路や空港を建設するといって小国を誘惑している」と批判されている。

ツバルに対しても人工島を建設するというオファーを中国企業を通じて持ち掛けてきた。もちろん、その背後には中国共産党政権がいる。彼ら曰く、人工島建設には4億ドルが必要だという。ツバルが中国企業の投資案を受け入れ、人工島を建設した暁には、その債務返還と台湾との外交関係の断絶を要求してくることは目に見えている。

いずれにしても、超大国・中国のオファーを毅然とした姿勢で拒絶する超小国ツバルの主張に当方は感動すら覚えた。多分、台湾ばかりか、米国からも何らかの支援を受けているだろうが、それにしても勇気がいることだ。

ところで、そのツバルから先月の即位礼正殿の儀にコフェ法務・通信・外務大臣が招かれた。同外相は先月21日、茂木敏充外相と東京の外務省で会談している。

日本とツバル両国は今年、外交関係樹立40周年を迎えた。茂木外相は、「両国関係を更に深化させたい、来年半ばにフィジーで開催予定の太平洋・島サミット中間閣僚会合において、共同議長として緊密に連携していきたい」と若いツバルのコフェ外相に語っている。

コフェ外相は日本の支援に感謝を表明し、「ツバルにおいては先月新政権が発足したが、日本との関係を重視しており、引き続き協力を強化していきたい」と返答している。両外相は、「太平洋・島サミット中間閣僚会合、気候変動や国際場裡における協力等において、今後も緊密に連携していくことで一致した」という。

南太平洋の島国ツバルの中国との戦いは始まったばかりだ。中国側はこれからも様々なオファーでツバルを誘惑してくるだろう。日米と台湾は連携して“南太平洋のダビデ”を応援すべきだ。

※ダビデ=古代イスラエルの王、少年ダビデは敵軍の屈強な兵士ゴリアテを石投げで倒した。

ウィーン発『コンフィデンシャル』」2019年11月24日の記事に一部加筆。