バロンズ:感謝祭、足元の米株高を祝える理由

2019年11月25日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーは製薬大手ファイザーを取り上げる。同社は2000年初め、買収を通じドラッグストアの全ての陳列棚に製品を展開するようになった。そのほか処方箋薬も取り扱い、抗うつ剤ゾロフト、ED薬バイアグラ、高脂血症治療薬リピトール、その他チューイング・ガムのトライデントやマウスウォッシュのリステリンなども販売していた。

しかし、過去20年にわたり、ファイザーは思い切った再編を実施している。これら消費者部門のビジネスを売却するだけでなく、直近の1年間では同社最後の消費者向けブランドのアドヴィルやチャップスティックの売却に踏み切り、特許切れ医薬品部門のスピンオフを発表。同社は、何十年も続いたビジネスモデルに別れを告げ、自社開発の医薬品あるいは買収した会社の医薬品に注力している。

戦略転換は焦点の絞り込みを通じ成長加速への道筋を示す反面、リスクも残る。例えば、特許切れ医薬品アップジョンは、消費者部門と合わせ1~3月期の売上高の約3割を占めるだけに、アップジョンのスピンオフ発表後にファイザーの時価総額は1週間で280億ドル減少した。ファイザーの戦略転換は奏功するのか、詳細は本誌をご参照下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週は感謝祭を前に市場関係者が感謝すべきことを紹介する。抄訳は、以下の通り。

(カバー写真:Anne Helmond/Flickr)

米国の投資家が未だ感謝すべき、多くのこととは―U.S. Investors Still Have a Lot to Be Thankful for. Here’s Why.

米国人は今週、感謝するために集うのだろうが、株式に投資し富を蓄えた幸運な者は特に感謝すべきだろう。

景気後退懸念や追加関税、恨み節が募る政治とは裏腹に、投資家は米株高を謳歌できた。SPDR S&P500 ETF(SPY)は年初来で25.88%高を遂げ、テクノロジー関連も好調でナスダック100指数に連動するインベスコQQQトラスト・シリーズ1(QQQ)の年初来リターンは31.54%高に及ぶ。

ウィルシャー・アソシエーツによれば、米株市場の時価総額は年初来で6.2兆ドルに達した。投資の多様化は本来であれば有効だが、例えばポートフォリオの6割をSPYに、4割をiシェアーズ・コア 米国総合債券市場 ETF(AGG)に投資した場合、リターンは18.91%高にとどまる。

米株市場は、米中貿易協議の第1段階の合意をめぐる展開に釘付けの様相だが、その日が近いかどうかは微妙は情勢だ。トランプ大統領は拒否権発動をちらつかせているとはいえ、米上下院は香港人権・民主主義法案を全会一致で可決した。オッカムの剃刀(ある理論や法則が数多く損じあスる場合、より単純なものが良いという意味)は、単純な説明こそがしばしば正しいと説く。

米株が最高値を達成し景気後退が減退した明確は理由は、単純かつ純粋にマネーであるように映る。アナリストがマネー供給量に注意を払ってから何十年も経過したが、ストラテガス・セキュリティーズを率いるジェイソン・ディサナ・トレナート氏は、マネーサプライのM2(現金、貯金、マネーマーケット・ファンドなど)が過去3ヵ月間で年率10.4%のペースで拡大したと指摘する。

マネーサプライの伸びを支えているのが米連邦準備制度理事会(FRB)の保有資産で、同時期に年率31%ものペースで拡大した。

bs

(作成:My Big Apple NY)

Fedは毎月600億ドルの米財務省短期証券(Tビル)取得を量的緩和ではないと説明するが、トレナート氏は「リスク資産の保有者にとって、名ばかりの区別だ」と切り捨てる。エバーコアISIによれば、欧州中央銀行(ECB)や日銀の保有資産を拡大させており、世界的な動向と言える。

名目の米国内総生産(GDP)は前期比年率3.5%のペースで拡大するなか、マネーサプライはこれを上回る伸びで、金融市場に過剰流動性を生んでいることは間違いなく、トレナート氏によれば「リスク資産のショートを極めて困難となる」という。

こうしたマネーの伸びの大部分はマネー・マーケット・ファンドに現れ、足元で前年比22%増の3.6兆ドル達し、2009年3月につけた過去最大の3.9兆ドルが視野に入りつつある。トレナート氏は「足元における現金の水準は、大きな強気相場が天井を打ったとの予兆である陶酔した状態からかけ離れている」と説く。

マネーの拡大は、10~12月期の米実質GDP成長率を押し上げそうにない。アトランタ地区連銀のGDPナウは前期比年率0.4%増、NY地区連銀のナウキャストも0.75%増程度と予測する。

しかし、その他の経済指標が示す見通しはもう少し明るい。米11月IHSマークイット製造業PMIは51.9と分岐点の50を維持しただけでなく、4ヵ月ぶりの高水準だった。米10月住宅着工件数も改善し、同建設許可件数に至っては金融危機前の2007年以来の高水準を遂げている。

エバーコアISIの試算によれば、米株高と住宅価格の上昇に支えられ米家計資産が前年比10.4%増となる見通しだ。論争が起きやすい時を迎えるとはいえ、これだけでも感謝に値するのではないだろうか。

弱気相場が怖い?米株より米債相場のリスクに注意―Worried About a Bear Market? Bonds Pose More Danger Than Stocks.

米株高をよそに、気を付けたいのが米債市場である。ゴールドマン・サックスによれば、債券投資家は2020年の”ミニ弱気相場(baby bear market)に備えるべきだ。GSは米10年債利回りが50bp、2.25%へ上昇し、価格では4%の下落を見込む。

過去1年間の米債利回り低下の理由は、ターム・プレミアム(投資家が長期債保有に求める上乗せ金利)の低下にあった。例えば。米10年債利回りが2.5%ならば、投資家は短期債利回りが2%で推移すると想定し、ターム・プレミアムは50bpとなる。ターム・プレミアムは過去数年にわたりマイナスにあったが、JPモルガンのニコラス・パニギルゾグロー氏によれば、ターム・プレミアムの正常化は米10年債利回り2.5%へ引き上げるという。1990年代、Fedが「サイクル半ばの調整」と称して利下げした段階でも、同じような事態が発生した。

GSのストラテジストも、1995~96年と1998年のサイクル半ばの調整時期の過去を踏まえ、ターム・プレミアムの上昇を予想する。1995~96年の利下げから1年後、米10年債利回りは90bp上昇し、1998年の利下げから1年後には150bpも上昇した。GSは、仮に歴史が繰り返すならば、10月のFedの利下げ後に米債利回りが上昇に転じ、市場は利上げを織り込み始めると見込む

こうした利回り上昇は、痛みを与えるかねない。JPモルガンは投資家の債券アロケーションが金融危機前の水準より上回る米回る場合、10年債利回りが2.5%へ上昇すれば、S&P500種指数の現在の公正価値であり、21日の終値を8%上回る水準である3,355を2.4%下落させる見通しだ。逆に、米国債の価格は約6%下落し、下落幅はS&P500の2倍となる。その上、米債利回りは非常に低水準にあり、ここから一段と低下する余地は狭く、米債は過去のように米株安への強力なエッジとして機能しない公算が大きい。

そこで、注目されるのが非課税の地方債だ。カンバーランド・アドバイザーズのジョン・R・ムソー氏によれば。地方債は民主党のエリザベス・ウォーレン上院議員が次期大統領に選出された場合、ヘッジとなる可能性がある。ウォーレン氏は富裕税導入や最高所得税引き上げを掲げており、ムソー氏は最高所得税率についてはオバマ前政権時の39.6%を上回ると見込む。しかも、既に総所得25万ドル超えの世帯の投資収入のうち、3.8%は高齢者向け公的医療保険制度(メディケイド)税として徴収されている。

こうなれば、非課税の地方債が価値が高まること必至だ。足元の所得税率が37%であれば、2.33%の非課税の利回りは、課税債利回りの3.7%に相当する。利回り上昇局面では米国債同様に地方債の価格が下落することになるが、非課税の地方債には幾分のヘッジを提供するだろう。


バロンズ誌、米株の強気相場継続をメインシナリオに置いているようです。足元の民主党候補の支持率でも、ウォーレン氏やサンダース上院議員など富裕層の増税などを通じ格差是正を図るプログレッシブ寄りの候補が伸び悩み、バイデン前副大統領やブティジェッジ候補などの支持率が上昇してきました。少なくとも、2020年のスーパーチューズデーで、この2人が台頭するリスクは現時点で低下したと言えます。そうなれば、米株市場がウォーレン氏の支持率がバイデン氏と拮抗した10月初めのような米株急落は回避しそう。

目下のところ、問題はやはり米中貿易協議の行方なのでしょう。注目の香港人権・民主主義法案をめぐり、トランプ大統領は可決から日曜を除き10日以内、つまり12月2日までに拒否権を発動した場合、米上下院それぞれが3分の2が拒否権発動に反対すれば覆ることが可能となります。米上下院は全会一致で同法案を可決しただけに、トランプ大統領がどのような皮算用を働かせるのか、市場は最高値圏で固唾を呑んで見守っているに違いありません。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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