NBAの香港民主化デモ支援で、米中関係はターンオーバー?

2019年11月26日 16:00

またまた、10月執筆時点の記事を振り返り、加筆してお届けします。

(カバー写真:Gary Denham/Flickr)

10月4日、ヒューストン・ロケッツのゼネラル・マネージャー(GM)が香港の民主化デモを支持するツイートを投稿してから、太平洋を挟んだ世界の経済大国がにらみ合いの様相を呈しています。

かつて中国人の有名選手が在籍していたロケッツとNBAは、すぐに謝罪したものの(NBA側は米国の反応を見て表現自由を支持する姿勢へ変更)、NBAシーズンの独占放送権を有する中国国営の中央電視台は10月10日開催のエキシビジョン試合の中継中止を決定。シーズン開始後も、ロケッツの試合は放送していません。その他、NBA選手数人とスポンサー契約を結ぶスポーツ衣料メーカーの安踏体育用品などは、NBA関連での契約更新を取り止める方針を表明していました。

唯一、10月時点でNBAへの姿勢を緩和させた企業はストリーミング動画テンセントで、騒動を受け一時的に配信停止に踏み切りましたが、10月14日からロケッツの試合以外の配信を再開させています。同社が7月にNBAと5年間の契約を更新するなか、ストリーミング配信停止を受け、約5億人のファンのうちNBA関連サービスを継続させていた一部が払い戻しを要請したためです。SNS上で騒動となり、テンセントの株価は一時、年初来安値に迫りました。

未だ火種が燻るロケッツGMの香港ツイート問題ですが、米国では静観を決め込んだトランプ政権と対照的に、全米の世論は初動で中国に謝罪したNBAや中国の強硬姿勢に非難轟々。ロケッツのお膝元、テキサス州のテッド・クルーズ上院議員(共和党)をはじめ民主党の複数の大統領候補がNBA側の人権より金儲けを優先する初期対応を強烈に批判しておりました。マリオット・ホテルやスターバックス、ダイムラーなどが台湾問題、チベット問題で謝罪を余儀なくされた場面でも、それほど関心を示さなかったのに、なぜ今“怒れるアメリカ人”に変貌を遂げているのでしょうか?

足元で、中国の好感度が低下していることは確実です。ピュー・リサーチ・センターによれば、中国の印象について「ネガティブ」と回答したアメリカ人の割合は60%と、少なくとも2005年以降、ダントツで最悪でした。対中追加関税の影響で中国の実態を扱うニュースが劇的に増加したことが一因でしょう。

NBAのファンが他スポーツより格段にリベラル派が多く、企業利益より基本的人権や表現の自由に敏感だった可能性もあります。政治専門誌ナショナル・ジャーナルが投票結果をもとに調査したところ、PGAゴルフやNFL、NHLなど共和党支持者が多い半面、NBAは民主党支持者が優勢でした。

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(出所:National Journal)

大のロケッツ・ファンであるクルーズ議員が中国とNBAに猛抗議した通り、保守派や共和党支持者であれば人権問題に鈍感とは申しません。ただ、トランプ政権下で気候変動や格差問題などで彼らの基本的人権を侵されているとするならば、リベラル派が怒りの丈をぶつけたとしてもおかしくない。NBA選手の巨額年俸だって、度々法外だと批判されてきました。

いずれにしても、今回の件は無視できません。NBAのスター選手、ロサンゼルス・レイカーズ所属のレブロン・ジェームズ氏が15日、表現の自由を認めつつツイートでの立場表明に慎重であるべきとの見解を示唆すると、米国の世論は大バッシングで反応しました。ロケッツGMの香港デモ支持ツイートから約2週間以上経過したものの、中国側に配慮したと捉えられ「もはやキング・ジェームズではない」と、痛烈な言葉がSNS上を飛び交ったものです。

米議会は、世論と整合的です。米上下院は10月19日と20日に、香港人権法案を全会一致で可決しました。問題は、トランプ氏が香港を支援する法案に署名するか否か。ペンス副大統領は注目の演説でNBAを引き合いに出し中国を批判しましたが、トランプ氏は煮え切らない様子。仮に拒否権を発動すれば米国人の猛反発は必至で支持率に影響する余地を残しつ、拒否権を発動しても米上下院が再度採決し3分の2が賛成するる公算が大きく、トランプ氏の意思に反し拒否権を覆すことは可能です。

ワシントン・ブレッツ(現ウィザーズ)がNBAのチームとして初めて中国を訪れ、北京と上海でエキシビション試合を開催してから40年。2015年からは春節に中国語のユニフォームを着用するシーンなどがみられましたが、NBAが繋げた米中関係は香港の民主化デモをきっかけにターンオーバーを迎えつつあるようです。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2019年11月26日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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