世界不和のシナリオ、2020年への考察

2019年12月03日 14:00

イアン ブレマー氏率いる世界最大の政治リスク コンサルタント、ユーラシア グループが2019年初頭に発表した「今年のリスク」は①英国のEU脱退、財政悪化加盟国の増加、アフリカ、中南米の政治不安による移民の増加、G-ゼロに伴う中国ロシアの台頭等の地域的不安定要因、②トランプ大統領に代表される国際協力より自国の権益等のナショナリズムの優先、③既存の国際的な組織制度、システム等における利害関係、存在価値等への対応の必要性、④異常気象等による自然災害の増加(日本税務協会のウェブより)となっていました。

akizou/写真AC(編集部)

12月に入るこの時期にこうやって見直してみると当たっているようで当たっていないところもあります。ちなみに私が毎年年初に発表している今年の10大予想のうち、政治に関してみると①2019年東アジア政治は台風の目、②分断化する世界、自己中心か共存か、③欧州の混沌をテーマに挙げていました。

地球儀ベースで世界の不和を見れば各地でいろいろなことが起きているのですが、私があえて挙げるのは二つ。一つは朝鮮半島情勢、もう一つはトルコであります。

まず、朝鮮半島情勢ですが、今年も半島をめぐり様々なことがありました。6月にトランプ大統領が板門店の軍事境界線を越え、金正恩委員長と接しました。GSOMIAや日韓をめぐる各種攻防もありました。問題はここからです。イアンブレマー氏はあまりアジア情勢についての強みがない気がしますが、私は朝鮮半島は再び政治利用されるとみています。

一つには香港人権法案をめぐる中国のアメリカへの報復です。何が飛び出すかわからないし、一つではなく、いくつものことがあるかもしれません。その中で中国の北朝鮮へのテコ入れは大いにあり得るとみています。

金正恩氏が数日前、飛ばしたミサイルの意図はGSOMIAに対する反発かもしれませんが、米中の不和に乗じて新たなる戦略を考えている節があります。更に金正恩氏は以前よりアメリカとの外交交渉に於いて「年内にアメリカから好条件を引き出せないなら考えるところがある」としており、年明け早々にも何か行動を起こす機運があります。その際、中国が北朝鮮をひそかに支援することはあり得ます。

韓国国内の混乱も視野に入ってくるかもしれません。韓国の政権の不安定化が更に北朝鮮に勢いづかせるかもしれないし、駐韓国駐留米軍の費用についても大きなイシューとなるでしょう。(日本にとって対岸の火ではないのですが。)

もう一つの不安材料、トルコであります。昔からこのアジアとヨーロッパの接点が巻き起こす火種は絶えたことがありません。それだけ様々な影響を受けやすい位置と歴史的背景があるから、と言えます。

トルコがEUに入りたくても入れないその理由の一つはイスラム教が主体の国家ということもあるし、NATOの関係もあるでしょう。特にロシアから武器、兵器を購入したことで西側防衛システムが破られると懸念されるところもあります。また、クルド人とシリアとの関係も常に不安定です。中東の移民がトルコ経由で欧州流れ続けることで欧州各国のトルコへのプレッシャーは大きいものになっています。

ではその背後にいる欧州はどうなのか、といえば離脱しそうな英国、傀儡のドイツ、メルケル政権、不人気のフランス、マクロン政権とリーダーシップ欠如感がはなはだしいと言わざるを得ません。

そんな中、アメリカのトランプ大統領は「世界の警官」はやらないと言いながらも「世界の検察」としての機能をより強化する動きに世界から反発と安ど感が漂う奇妙な居心地の良さがあったことも事実です。ところが再三、書かせて頂いているようにトランプ氏が置かれている状況は1年前とは明らかに違います。

私も数カ月前まではトランプ氏の大統領再選は間違いないと思っていましたし、今でもその確率は高いと思っていますが、一抹の不安を感じているのです。仮に民主党からブルームバーグ氏が大統領候補に選ばれ、トランプ氏と対峙した場合、接戦になりそうだとみているからです。

世界にとってアメリカの方針変更は地球儀ベースでは激震となることもあります。これが2020年に向けて読みづらく、守勢に回りたくなる理由であります。

ブレマー氏は「2019年はかなり良い年になる見込みです。敢えて申し上げると、特に政治的に危険な年ではありません。しかし、私たちは今後のトラブルに備えて準備をしています。大きな問題に備えて。そしてそれが私たちの一番のリスクです。」と述べていますが、私もこれに強く同感するのです。不和の種はあります。今まではその種が芽を出さないよう監視体制や強権などで押さえてきたものがオバマ体制の時のようにあらゆるところからあらゆる芽が育ってしまい、収拾がつかなくなったあの時代に戻る可能性があるのです。

そんなオバマ政権で唯一責められなかったのは経済で、就任期間中ずっと景気は回復し続けたという背景があることをしっかり理解する必要があります。(オバマさんが経済に強いわけではなく、イエレンFRB前議長の手腕とリーマンショック後の自律回復の波に乗っただけですが。)景気が悪化する要因があれば国際会議で玉虫色の共同声明は難しくなったはずです。

これだけ読むと確かに暗い陰鬱な気持ちになります。が、逆にこれに対策さえ打てれば必要以上に構えることもないと考えています。2020年は主義主張の対立ではなく、調整をすべきタイミングだと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月3日の記事より転載させていただきました。

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