金融庁による真の規制改革

金融機能と金融機関の機能とは、峻別されるべきである。金融機能は、金融機関によっても、非金融機関によっても、供給され得るし、金融機関は、金融機能だけでなく、非金融機能も供給し得るのである。

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そして、現在の金融庁の行政の目的は、金融機能の強化を通じた経済の持続的成長の実現と国民の経済的厚生の増大とされていて、真に国民の利益の視点にたち、金融機能を強化することが政策課題になっているのだから、金融機関は、金融行政の発現においては、その対象であるというよりも、その通路にすぎなくなったのだと考えられる。

例えば、金融行政の手法に「見える化」が掲げられているが、これは、金融機関が提供している金融機能の質の差を見えるようにすることにより、金融機能の利用者である国民の選択行動を合理化し、健全なる競争を促すことによって、金融機能の高度化を顧客の視点で実現するものだから、ここでは、金融行政の対象は国民なのである。

それに対して、従来の金融庁は、金融機関を行政の対象としてきたので、金融機関に対する規制等の強制の方法により、金融機能の高度化を実現しようとしてきたのである。確かに、それは、一方で、一定の効果を生んだにしても、他方では、金融機能の供給に関する金融機関の特権的地位を前提としたものである限り、真に顧客の視点にたった改革にはならなかったわけである。

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規制改革とは、基本的に、顧客の利益を守るという規制の本旨が機能しなくなり、逆に、規制によって保護された業者の利益を守るようになったときに、必ず求められるものである。そのとき、規制の内容を変えても、業者中心の視点は変わらない。真の規制改革は、行政の対象を業者から国民へ転換することなのである。

規制改革による成長戦略を掲げるアベノミクスは、これまでの政治手法からの完全な脱却を目指すものとして、従来型の規制の手直しではなくて、真の規制改革を断行するものでなくてはならない。そうでなければ、アベノミクスの成功はない。そうした大きな流れのなかで、金融庁は、真の規制改革を断行しているのだ。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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