先発機会増の久保建英、マジョルカ監督が起用に慎重だったワケ

白石 和幸

レアル・マドリードからマジョルカにレンタル移籍した久保建英は当初出番が少なく「なぜ彼を頻繁に起用しないのか」という批判がビセンテ・モレノ監督に向けられていた。久保は逸材であるということからレアル・マドリードに加入した選手だ。マジョルカのファンは彼のプレーを見ることも試合観戦に来る理由のひとつだった。

「モレノ監督が久保に先発出場させるだけの信頼を寄せるのはいつのことだ」という質問が同チームのファンの間で問われるようになっていた。この問いは同チームのフロント陣も表には出さないが同様の質問を監督に向けていたようだった。何しろ、レアル・マドリードの方からも彼を出場させるようにとプレッシャーがかかっていたという。

マジョルカでも国の代表チームに選らばれている外人選手がプレーしているが、彼らの出身国ではマジョルカでプレーしていることがビジネスには繋がらない。しかし、久保の場合は違う。日本でビジネスに繋がるとマジョルカは見ている。実際、マジョルカのマーケティングと広報担当がビジネスの市場開拓で既に日本を訪問している。

同じ考えはレアル・マドリードも持っているようだ。何しろ、久保はレアル・マドリードの選手だからだ。ところが、それも建英が頻繁に試合でプレーしないことにはビジネスにならないというわけだ。

特に、そのビジネスの種をまいてくれるのが日本からの報道陣だ。試合ごとに数十人の日本人記者が会見に臨むようになっている。マジョルカ島にも久保選手について日々取材できるように数人の記者が駐在している。大久保と家永が所属していたころに比べ報道陣への規制は厳しくなっていることから本人とのインタビューや練習の視察も容易ではなくなっている。(参照:elconfidencial.com

久保は人並み外れた優秀な選手と評価されている。モレノ監督もそれを認めているようだ。しかし、監督は強固に固まったチーム作りを優先している。久保に望んでいるのは攻撃力もそうだが、試合中にチームがボールを保持していない時の守備力も監督は期待していたようだ。

彼にボールを持たせれば鋭角に動きドリブルが巧みなのも知っている。あとは守りに回った時のチームワークの取れた守備力を彼に期待していたようだ。監督は久保が向上心の高い選手だということは知っていた。

11月に入って監督が期待していたようなプレーを見せるようになった。それで先発出場の機会も増えた。11月末の時点で1得点も挙げた。チームメートでミッドフィルターのマーク・ペドゥラサはラジオ「コーペ」のインタビューの中で久保のことを「彼にボールをパスすれば解決してくれる。ペナルティーを誘うこともできる」と語って「メッシに良く似ている」と称賛した。(参照:diariodemallorca.eselespanol.com

モレノ監督はこれまで1部リーグで監督を務めたことがない。2部リーグB級に降格していたマジョルカを2部A級に昇格させ、今期から1部リーグに復帰させた実績の持ち主だ。1部リーグは初経験ということ。しかも、名門レアル・マドリードの将来有望な選手を預かっているということから当初は久保の試合での起用にもより慎重になっていたようだ。

しかし、今では久保が試合でチームメートから信頼を寄せられているということで先発に欠かせない選手となっている。

現在チームは20チームの中で17位にあるが、これからチームの飛躍を期待したい。

白石 和幸
貿易コンサルタント、国際政治外交研究家