規制改革における業者の視点から国民の視点へ

2019年12月17日 11:30

規制改革とは、基本的に、顧客の利益を守るという規制の本旨が機能しなくなり、逆に、規制によって保護された業者の利益を守るようになったときに、必ず求められるものである。

画像:123RF

例えば、電気事業では、戦後経済復興のなかで、電気の安定供給体制の確立という産業政策課題のもと、電気事業者の地域割り独占体制が認められてきて、それはそれで、国益というか、国民の利益に適った仕組みであったことに間違いないが、発電等の電力供給の構造が変わり、また、電力を相対化するような総合的なエネルギー供給の仕組みが変わったとき、逆に、国民の利益に反するとまではいわないまでも、適わなくなったことも事実であって、故に規制改革が断行されたのである。

この場合、国民の利益の視点にたって、総合的なエネルギー政策の刷新が求められるときに、既成の電気事業者の改革という側面よりも、新規業者の参入という側面が前面に出ることは当然であって、同時に、業者の定義そのものも抜本的に変えられるわけで、もはや、業者の視点が消滅しなければならないのである。

同じことは、金融についてもいえる。現在の金融の構造は、昭和の戦後復興体制を支えたものを継承しており、電気事業と同じように、古色蒼然たる要素を強く残している。これは、とうに気付かれていたことで、事実、新規参入を促す改革はなされてきたのである。しかし、それは、どこまでも、金融機関の視点であった。

つまり、金融においては、本質的な規制改革はなされたことがなく、単に、規制の参入障壁を少し変更することで、多少の新規参入を受け入れてきただけなのである。それにより促されたのは、顧客の利益の視点での競争ではなくて、金融機関の利益の視点での競争にすぎなかったといえる。

しかし、現在の金融庁が推進する改革は、全く次元が異なり、昭和の戦後復興体制のときの金融構造自体を解体するものである。そういう意味で、電気事業の改革と同じ次元にあるのだが、より優れている点は、国民の利益の視点が明瞭であることである。

そして、何よりも重要なのは、金融庁自身の改革が断行されていることである。これは、電気事業改革において経済産業省の抜本的改革が行われたという事実がないのと好対照である。

 

森本紀行
HCアセットマネジメント株式会社 代表取締役社長
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