大塚家具とヤマダの提携。結果を残して一蹴してもらいたい

尾藤 克之

大塚家具が業務提携したヤマダ電機に身売りすることになった。ヤマダが30日付で大塚家具を子会社化した。

約44億円の第三者割当増資を引き受け、出資比率は議決権ベースで51.74%。約22億円の新株予約権も手にすることになる。ヤマダはいい買い物をしたと思う。

今回は、15冊目の著書『「明日やろう」「後でやろう」がなくなる すぐやるスイッチ』(総合法令出版)から、理不尽な社会を行く抜く方法について紹介したい。

私が20代の頃の話になる

当時、私が中心となり進めていたプロジェクトがあった。簡単に言えばピアノの販路開拓プロジェクトである。当時のピアノ市場は、ヤマハとカワイで約9割のシェアを占めていた。

しかし、それ以外にも多くのピアノメーカーがあり、大手メーカーに対抗すべくピアノ組合を設立していた。とはいえ、この販路開拓はそう簡単なことではない。

想定された販売チャネルはホームセンター、通信販売、音楽大学等での実演販売、百貨店の4経路。チャネル先の担当者と交渉していくと、案の定、当初想定されたチャネルは全滅となる。価格的な問題と、ピアノの大きさの問題がクリアできない。

この結果に釈然としない私は、数日頭を空っぽにして、なんとか別の可能性がないものか模索した。その結果、一つの可能性が浮かび上がる。それはショールーム販売。これなら実現できるかもしれないと考えた。

当時、大きなショールームを所有し、ピアノを置くことができて、価格的な問題をクリアできる場所は日本に1カ所しかなかった。それが大塚家具である。

早速連絡をしてみたところ、現社長(当時は経営企画室長)とコンタクトが取れ、幸運にもすぐに当時の社長(父親)と面会することができた。

現社長(当時は経営企画室長)は情熱的でかつロジカルだった。ピアノ組合の話を聞くなり、「このデザイン力を活かすなら当社のショールーム販売はベターでしょう」「デザインはヤマハ、カワイに劣るとは思えません」「大手よりもピアノ組合の製品に興味があります」というものだった。その他、いくつかの示唆をいただいた。

結果的に、ショールーム販売は実現をして話題になる。しかし、最終報告会を前に、私はプロジェクトから外れることになる。理由はいくつかあるが、これはコンサル業界ではよくある話。そのため、さほど気にしてはいなかった。

少々話を変えるが、国内の楽器市場は厳しい状態にある。パールリバー(中国製)がヤマハに肉薄し、三益楽器(韓国)はカワイの発行済株式を買増しするなど厳しい環境にある。

「平成29年工業統計調査品目編」(経済産業省)によると、平成28年における静岡県におけるピアノ出荷量は3万5826台、出荷額は184億3300万円。ピアノ輸出(平成30年)は、数量32,438台、金額182億7243万円でともに全国1位である。海外に販路を見出している状態だが、ここはショールーム販売に目を向けてはと思うがいかがだろうか。

大塚家具のポテンシャルを最大限活かすことができれば、可能性もひろがっていく。ヤマダにはその辺りのマネジメントを期待している。

結果を残して一蹴せよ

実は最終的にプロジェクトは頓挫した。私が外れたあと、ショールームに置くピアノをめぐって調整がうまくいかなかった。

そしてなぜか、最終的に頓挫した責任は、私に押し付けられることになった。まったくの想定外だった。

「君はトラブルを引き起こして投げ出したそうだな!」
「責任を上司に押し付けるなどけしからんヤツだ!」

私は役員に毎日呼び出され、詰問を受けて、強引に謝罪文を書かされた。そして1週間後、新規開拓専門部署に異動になる。その後、自分なりに検証し退職を決意する。

辞める際には「訴訟をしない」「外部ユニオンに入会しない」「会社に敵対姿勢を持たない」など幾つかの書類にサインをしなければいけなかった。いまの時代なら事件になった事案(苦笑)。お陰さまで労働問題や人事に詳しくなる副次的効果もあったが。。。

さて、今回の大塚家具とヤマダの業務提携、現時点では批判記事が圧倒的に多い。個人的には結果を残して一蹴してもらいたいと思う。そんな期待をしている1人でもある。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※15冊目の著書『すぐやるスイッチ』(総合法令出版)を出版しました。