発達障がいは個性か?多様性社会って何? --- 飯島 丈治

2019年12月19日 06:00

写真AC

最近、耳にする事が多くなった“多様性社会”とは一体何でしょうか。メディアでも度々取り上げられる“発達障がい”を切り口に、多様性社会とは何かを模索していこうと思います。

日本の未来のキーワード

この多様性社会という言葉は国土交通省が2030年に向け策定したシナリオの中にキーワードとして掲げられています。

今日の日本の社会は高度経済成長と共に築かれたマジョリティの為の仕組みと言えるのではないでしょうか。しかし、その陰でそうした仕組みに馴染めないマイノリティも多く存在しているのも事実です。

近年ではITの技術革新により、SNSが普及し、今までは聞こえてこなかったマイノリティの声が社会に届くようになりました。それから社会は漸く人の多様性を重要視し、認めていこうと画策するまでに至りました。今までは淘汰されていた人間性を尊重し、一般とは少し違うその特性を社会全体で包括して支援していこうとしているのです。

重度障がい者の国会議員の誕生

皆さんの記憶にも新しい、令和元年の参院選にて重度障がい者の舩後(ふなご)靖彦さん、木村英子さんが国会議員として当選しました。慣習では考えられない異例の出来事に青天の霹靂だった方も多いのではないでしょうか。

舩後靖彦氏、木村英子氏(れいわ新選組サイトより:編集部)

特筆すべきは御二人を支持した民意と、当選するや否や早急に改修工事や参加方法の特例措置等、全面的な支援を行った国会の対応の早さです。

障がい者支援の考え方に“合理的配慮の提供”が文科省から提唱されています。要約すると「自力で何とかならない問題を抱えている人には、手を貸せる人が出来る範囲の手助けをしましょう! 」という意味合いです。

今回の出来事は正に日本が多様性社会の実現に向けて、合理的配慮の提供がなされた実例と言えるのではないでしょうか。

メディアから見る発達障がいの問題

“発達障がい”最近では“何となく知っている“という方も増えて来ているのではないでしょうか。メディアでの積極的な情報発信が影響していると思います。

発達障がいに限りませんが、マイノリティの問題については先ず“知ってもらう”事が何よりも大切です。故にメディアで取り上げられる事は大変喜ばしく思います。

しかし、その取り上げ方について首を傾げる部分は主張していかなければなりません。

それは発達障がいの受け止め方・理解を一般に丸投げしている点です。全く発達障がいの知識のない方にとって、発達障がいのセンシティブな特性はどう理解して良いか非常に難しい部分が有ると私は強く感じています。

例えば、NHKの番組で発達障がいの“困りごと”が紹介されると聞き手のタレントが「私も似たような思いをした事がある」だとか「誰でも同じような失敗をするよ。全然“普通“じゃない? 」だとか、良い意味で“寄り添い“を示そうと発言される場面を拝見します。これには違和感が残ります。

しかし、知識のない人がそう感じるのは当然なのかもしれません。発達障がいの対義語として所謂“普通に”発達・発育した人を“定型発達”と呼称しますが、とは言え発達障がいが定型から全く逸脱した存在な訳ではないのです。

一見すると異質に感じる様子も、特定の感覚・機能が鈍感あるいは敏感であるためだったり、発達の程度が同年代の平均と比べて顕著に遅れていたりすることから起きています。

つまり、発達障がいの“困りごと”というのは一般的な定型発達の人から見ても日常的なことの延長線上にあると言えます。

その事から発達障がいの本当の問題とは、先程のメディアでのタレントの反応然り、一般の人から見て困りごとの“深刻さ”が感覚的に理解しにくいところにあります。これは周囲との人間関係・コミュニケーションの間に大きな摩擦を生むことになります。

周囲の人間関係のギャップ

しらた/イラストAC

一つ例を紹介します。発達障がいの一つであるADHD/注意欠陥多動性障がいには“忘れ物が多い”という特性があります。

ここまでは“普通”に感じる人も多いでしょうか?誰しもが一度や二度「絶対に忘れてはいけないものをすっかり忘れてしまい、大失敗した」なんて経験は持っているのかもしれません。

しかし、ADHDではそれが日常的に頻繁に起きてしまいます。それによって「どうしてこんなにミスが多いんだ!」と周囲から叱責され、単に自分で“気を付けている”くらいではどうにもならない問題に発展します。

そのままにすればやがて周囲から疎ましく思われ、当人は自己嫌悪に陥り、気力を失い、孤立してしまう深刻な事態に追い込まれ兼ねません。

これが発達障がいと診断済みの場合は周囲の支援者と手立てを考えられるかもしれませんが、未診断の場合は原因も分からず、本人の怠慢や親の教育不足だと周囲から責め立てられることが多いのです。

これは決して珍しいケースではありません。小中学生の6.5%、60万人、40人学級で考えると1クラスに2,3人の割合で発達障がいの可能性があり、そのうち4割ほどが何の支援も受けていないという文部科学省のデータ(リンク先は日経電子版)があるくらいです。

飯島 丈治(いいじま ともはる)
肩書・発達障害コミュニケーション初級指導者/チャイルドカウンセラー/家族療法カウンセラー
1988年生まれ。中学時代から10数年心の病に苦しみ、障がいや心理学を学んだ経験から同じように苦しむ子どもたちのサポート業務に従事。発達障がいや不登校などの当事者支援に取り組む。

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