アメリカ弾劾裁判は茶番

岡本 裕明

これほどくだらない茶番劇はない、というのが私が感じる今回のアメリカの弾劾裁判であります。結論がわかっているこのふざけた寸劇で一番目立ったのはもうすぐ80歳になる下院議長で民主党のナンシーペロシ氏であります。投票の結果、弾劾が決まった時の彼女の嬉しそうな顔は自己満足の何物でもありません。

(トランプ大統領ツイッターから:編集部)

(トランプ大統領ツイッターから:編集部)

トランプ大統領がウクライナ大統領との取引でバイデン元副大統領とウクライナの関係解明を目指し、圧力をかけた、というのがもともとのスタートでありますが、バイデン氏は次期大統領選の民主党の最有力候補の一人だったということもあり、民主党のメンツを潰されたという感情が前面に出た裁判でありました。

民主党がそこまで躍起になったもう一つの理由は党の大統領候補が20名以上も乱立した中、党そのものが2分裂化し、より社会主義的思想の左派(サンダース氏、ウォーレン氏)の騰勢が強まったことがあります。そこまで極端な思想が跋扈すればアメリカの変化が大きすぎて反発が予想され、民主党としても手を焼くだろうと民主党幹部は考えたはずです。ならばより中道に近いバイデン氏はトランプ氏への対抗馬としては絶対不可欠な候補者であったと考えられます。

結局、今回の一件で一時期バイデン氏の支持率は落ち、ウォーレン氏がトップに立つという珍事すら起きたものの経済界を中心にウォーレン氏の政策について強いバッシングが起き、急速に勢いを失い、現時点ではバイデン氏とサンダース氏がトップ争いをしている状況です。

ただし、まだ数字が上がってこない同じく中道左派のブルームバーグ氏が年明けからどこまで追い上げるかによりバイデン氏とブルームバーグ氏が票を食い合う形になるのでしょう。そういう意味では民主党の焦点はボケまくりで結局、どうしたいのかわからない中で民主党と共和党支持者の明白な壁を作ったのみならず、主流の無党派をよりしらけさせたと考えています。

そういう意味ではなぜ、民主党がここまで大した案件ではないのに弾劾裁判まで突っ走ったか、不思議でありますが、個人的にはナンシー・ペロシ氏の暴走でそれを止められる民主党幹部がいなかった、というのが真相ではないかと思います。誰のための弾劾裁判だったかといえばペロシ氏のプライドのためだった、とすればすっきりします。とすれば昨夜で彼女の役割は終わったとみてもよいと思います。なぜならトランプ大統領を史上3人目の弾劾訴追に追い込んだわけですから。

ただし、私は大統領選挙でトランプ氏が有利か、という点については否とみています。この大統領選挙は曲者でアメリカ国民が分裂すればするほど全く行方が分からなくなる混迷となります。事実、今回の弾劾に関して無党派層ですら弾劾賛成47%、反対46%と完全に二分してしまっているのです。

個人的には垢のついていないブルームバーグ氏がキーだとみています。彼の支持率が急上昇し、民主党代表候補となればトランプ氏の再選には赤信号が灯る公算はあります。それはアメリカ経済がマクロ的にどれだけ良くても人々の暮らしが物価高でどうにもならないところまで追いやられておりアメリカ国民だけにしかわからない苦悩が感じられるからです。

そういう点からすればこの弾劾裁判は茶番でありますが、トランプ大統領は分断化するアメリカという大きなチャレンジに挑まねばならないことになりそうです。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年12月20日の記事より転載させていただきました。