何もしないことは患者を見殺しにすること!? 心に残る『ドクターX』の言葉

2019年12月20日 11:30

『ドクターX』最終回を見た。大門未知子医師の「何もしないことは、患者を見殺しにすることよ!」、手術室の看護師の「命の前で迷っている人は医師ではない」という言葉が心に残った。もし、何もしなければ、半年後に100%確実に死がある患者さんが、1%でも可能性のある治療法に賭けてもいいと言い、家族がそれを願った時でも何もしないのが医療なのか、と私も思う。

もちろん、テレビの世界のドクターXは失敗しないので、そんな気楽なことが言えるのだという人が多いだろう。しかし、心臓移植も、骨髄移植も失敗から学んで、医療として定着した。その成功に必要なのは、科学的な思考力だ。

西田敏行が演じる院長が「実験的手術をした奴は、医師の風上にもおけん」と大門医師を非難した時、院長の姿が、昔の魚市場の近くにある病院の、標準治療絶対の権威主義者と重なって見えたのは私だけだろうか?医学が急速に進化していることにも気づかず、10年前の米国の医療を追いかけているだけで日本が救えるのか?

しかし、新しい医療に挑戦する課題は、医療関係者だけの問題ではない。日本には何も考えない馬鹿メディアという大きな壁がある。数年前、何もしなければ確実な死が待っている患者に対して、その患者さんたちを救おうと挑んだ医師がいた。確実な死が待っていた患者の半数が救われたにもかかわらず、馬鹿メディアが「半数が亡くなった」と非難して、日本の財産を潰してしまった。宇和島の病腎移植をした医師を、私がたたえた時も、まるで医師を犯罪者扱いしたメディアと真っ向から対立した。今や、病腎移植は先進医療として認められている。しかし、メディアの反省の声は聞こえてこない。

さらに、彼らは、風疹ワクチンも、副反応のようなものが起これば役所を非難し、風疹が流行すれば、また、何をしているのだと役所を非難する。子宮頸がんワクチンも、ストップさせ、ワクチンを行っている国では子宮頸がんが減ってきているにも関わらず、日本だけ、その頻度が高止まりしている。何もしないだけでなく、明らかに日本の公衆衛生行政を歪めているが、自己責任の欠片もない。治療法のない重篤な病気だ。

日本ではCAR-T細胞療法を受けることができない小児がん患者が、中国で治療を受けているという話を耳にした。これまでは先端的医療を求めて米国に向かっていたが、CAR-T細胞療法は、その治療を受けるだけで5000万円の経費が必要で、その他の経費を含めると1億円くらいかかってしまう。特許があいまいな盲点をついて、中国では数百万円でできるのだそうだ(価格については、伝聞であるので確証はないが、患者さんが中国で治療を受けているのは事実だ)。

目の前に救える命があるのに救えない。がん遺伝子パネル検査を保険で受けても、見つかった薬が保険で利用できない。「桜」で大騒ぎする時間があれば、「命を救う」ことに時間を費やせないのかと思う。

「がん医療は、画像処理などを含めた人工知能、ゲノム情報を利用した免疫療法・リキッドバイオプシーなどの活用によって激変する」と予測している。オーダーメイド医療を提唱したのが1996年で、それが根付くまでに20年以上かかったが、今回は5年で変化が起こると考えている。

もっと、議員たちは「命」をどうするのかに時間をかけて議論をして欲しいものだ。「コンクリートから人へ」はどこへ行ったのか。「人の命より桜なのか」?


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2019年12月19日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。

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中村 祐輔
医学者、内閣府SIPディレクター

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