元旦スペシャル:「令」が変化する!

中田 宏

令和2年(2020年)
新年あけましておめでとうございます。
今年も当ブログを宜しくお願い致します。

日頃、ニュースをコン詰めて見たり、疑問があっても聞いたり、なかなか出来ないですよね。
それでも関心がないわけでは無い、そんな世の中について、私、中田宏がわかりやすくお伝えすしますので、是非みなさんが考えるきっかけになればと思います。

さて、令和元年の年末に選ばれた漢字も、私が選んだ漢字も、令和の「令」でした。
令には「立派な」とか「良い」と言う意味が込められています。

そんな縁起の良い「令」に冷や水をかけるつもりではありませんが、私は今年2020年を表す漢字としてずばり「冷」という漢字を選びたいと思います。「令」と言う漢字に「にすい」がついて「冷」になってしまうわけです。

理由を説明すると2018年はアメリカが中国に制裁関税を課すことで、米中貿易摩擦が始まりました。

やがてこれは、米中貿易戦争とも言われるようになりました。このことについて私はかなり早い段階から「これは、長引くぞ」と言ってきました。

と言うのも、中国が譲れないであろう、「知的財産の保護」や「国有企業への補助金」などについてアメリカとの交渉事項に入っていたからです。さらに、2018年10月にはアメリカのペンス副大統領が演説をしました。40分間行われた演説の全てが中国に批判的な論でした。こうしたことから、アメリカの対中方針が明らかになり、これは単なる貿易争いではなく覇権争いだと認識し、そして今日これは新冷戦だと言うことです。

先の冷戦は第二次世界大戦が終わった後から、1989年までの40年以上続きました。40年以上続いたアメリカを中心とした資本主義・自由主義陣営の西側諸国と、ソ連を中心とした共産主義・社会主義陣営の東側諸国との対立構造でした。歴史的には民主主義国、資本主義国が勝ちましたが、今は新しい冷戦時代になります。

その本質は「IT技術の進展」です。

生活もビジネスもIT化によってがらりと変わりました。最近では「データ経済」とも言われるようになってきましたが、企業ならば情報を押さえたものが、マーケットを押さえる、国ならば経済を押さえることが、安全保障を押さえる事になります。一国の情報を抑えれば、国民生活の全てを把握できることに繋がりますし、社会をパニックに陥らせることも可能になります。その意味でも日本やアメリカでも情報セキュリティと言うことが大きく言われるようになりました。

例えば通信はすでに4Gから5Gへの時代に突入しています。5Gになれば通信速度は4Gにくらべて実効速度が100倍、そして1ミリビョウの遅れしかありません。そうなれば、映画を2時間分ダウンロードするのに今までは5分ほど掛かっていたのが、これからは2〜3秒になります。

だから5Gがあってこそ、自動運転も可能になるわけですし、遠隔地の人を手術する遠隔医療が可能になったり、あらゆるものがインターネットと繋がるIOTの世界が実現するわけですすなわち5Gを押さえることは、社会インフラを押さえることであり、経済を抑えることであり、軍事を抑えることであり、世界の覇権を抑えることになるわけです。

2018年8月、アメリカは国防権限法と言う法律によって、中国のファーウェイやZTEといった企業などの製品を、アメリカ政府の関連施設などが調達すことを禁止しました。

そしてアメリカはこうした中国勢の排除を同盟国に求めています。これに応じて、オーストラリア、ニュージーランド、日本なども政府が調達しない方針を固めました。カナダも独自の対応をとっており、イギリスでも5Gネットワークの構築には今後注意する必要があるとして、すでにブリティッシュテレコムなどはファーウェイからの調達をやめました。

かつての冷戦期には、共産主義諸国への軍事技術・戦略物資の輸出規制(或いは禁輸)のために発足された、アイスランドを除く北大西洋条約機構(NATO)加盟諸国と日本、オーストラリアの17ヵ国が参加する対共産圏輸出統制委員会(COCOM(ココム))がありました。冷戦が終結してすでになくなっていますが、アメリカの国防権限法はこれに変わるものと言えます。

一方で中国はファーウェイなどの技術を各国に積極的に輸出を図っていますし、一帯一路構想への参加を呼びかけています。こうしたことから、今後アメリカを中心とする新西側と、中国、ロシアと一帯一路構想に積極的に参加する国の新東側が形成されると私は見ています。

今年はアメリカの大統領選挙があります。そしてG7の議長国はアメリカです。したがって、こうした新西側の動きは活発になっていくと思います。

かつての冷戦が40年以上に渡ったように、今回の新冷戦も2〜3年では終わらないでしょう。これから長く続くこうした国際情勢の中で我々は生きていくことになるでしょう。我々の生活はまさに国際情勢抜きには成り立ちません。

敗戦から冷戦期の間、日本人は懸命に働いて高度経済成長してきました。個々人だけが発展すると言うこともあり得ません。これからも国際情勢や社会の変化に関心を持ちながら、個人と日本の発展が一緒になっていく。これが望ましい姿だと思います。

令和2年皆さんと一緒に良い年にしていきたいと思います。
本年も改めてどうぞ宜しくお願い致します。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。