依存症者とその家族が希望あふれる1年になりますように!

皆さま、新年明けましておめでとうございます。
本年もどうぞ宜しくお願い致します。

Arce/写真AC

さて、2020年を迎えて私も人生の折り返し地点を過ぎ、つくづく考えたのは、日本は依存症者とその家族に対し、理解が進んでおらず、あまりに過酷すぎるということです。

以前、依存症に関わっているお医者様が講演で、「依存症になったことが不幸なのではない。日本で依存症を発症したことが不幸なのだ。」という言葉を述べられた方がいて、本当にそうだよな・・・と思いました。

アルコールとギャンブルは、産業擁護のために自己責任論にとどめようとする動きが根強く、薬物は、他の問題のスケープゴートとして、叩かれ、なんでもかんでも薬物のせいにされがちです。
どれをとっても依存症者の人権は簡単に踏みにじられています。

けれどもここ数年で理解者が増えてきたこともまた事実です。
嘆いていてもはじまらないし、今年も田中紀子動きます!(笑)

で、依存症者とその家族が希望を持てるためにどんなことをやるか?
今年の目標を3つ決めました。

1)ギャンブル依存症対策を利権とする動きを徹底排除

現在、秋元司議員の収賄容疑で揺れている、カジノ問題ですが、この問題で判明してきたことは、ギャンブル依存症対策でさえ、利権として利用しようとする輩が現れたこと。

大阪IRに飛び火したカジノ疑獄の問題点

NHKニュースより:編集部

いいですか、先行研究が何も出ていないのに、民間事業者がそうそう画期的なこと発明できるわけがないんですよ。

ギャンブルに限らず、依存症対策というのは国、行政、医療、司法、民間団体などなどが、それぞれ連携して支援から漏れることのないよう、網目(セイフティーネット)を張り巡らせていくものなんです。
関わってくれる人を増やして網目を細かくしていくことなんですよ。

それをですね、今はカジノを焦るばかりに、利権を狙う企業が「こんな画期的な方法やります!」ってことを言いたがり過ぎているんですですね。
つまりパフォーマンスばかりで、実がないんですよ。

それはなぜかと言えば、依存症対策を旗頭に「自分だけが得をしたいから」なんですよね。
なので、こういう人たちの動きに対し、はっきりと線引きをし、本当に依存症対策に協力しよう!と思っている、業者を作っていく必要があります。

利益相反にならない公平性、透明性のある関係を構築していくこと、難しいけれど突破口を開いていきたいと思っています。

2)リカバリーカルチャーの実現

現在、私も高知東生さんと「たかりこチャンネル」をやっておりますが、

たかりこチャンネル

依存症問題を抱えた人が、回復しその回復プロセスを様々に発信していくことを、「リカバリーカルチャー」と呼ぶんですね。

欧米諸国には良い作品が沢山ありますよね。日本人もそれら作品で感激してますよ。
エミネムは「Recovery」という曲を作っていますし、映画やドラマはそれこそ沢山ありますけど、最近ではエルトンジョンの自伝的映画「ロケットマン」よかったですよね~。

こういう、明るく希望が見える回復のストーリーが作られていくように、働きかけていきたいな~と思っています。

よくあるアルコール、薬物、ギャンブルの悲惨な話しでなく、あくまでも「回復」に焦点をあてたストーリーを広めていくことに意義があると思っています。

3)当事者、家族の発信する勇気と行動

今、当会では当事者、家族が共同で、相談者の相談から、講演活動、メッセージ活動、資料作り、制作活動など、様々なことを一緒にやり始めています。

当会を作った時「顔出し実名などとんでもない!」とのことで、私くらいしかその役割を引き受けられる人がいなかったんですよね。
でも、この5年の間でどんどん変わってきて、当事者も家族も顔出し実名で、地域で活動にあたり、交渉したり連携したり、メディアに出たりして実に頼もしい限りです。

ただこういった活動ができる人もまだまだ数が少なく、地域も偏っているので、当事者、家族が「誰かがやってくれる」という甘えを捨て、「自分にできることを精一杯やる」という方向性になれるよう、仲間たちと、連携や勉強会、そして何よりも自分たちの使命について絆を深めていきたいと思っています。

自分たちが発信し、存在に気づいて貰わなければ、社会を変えることも、理解して貰うこともできっこないんです。

2020年は、5年間の活動を経て、今何をやらなくちゃいけないのか?
ハッキリとやるべきことが見えてきました。
今年は、なんか一つ階段が登れそうな気がしています。
仲間と共に頑張って参りますので、皆さま本年も引き続きご指導、ご鞭撻のほど宜しくお願い致します。


田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト