社外取締役制度は「お楽しみ福袋」に似ている(と思う...閲覧注意)

2020年01月07日 06:00

本日は一部の有識者の方からお叱りを受けそうな内容です。近時の企業統治改革の影響で、コーポレートガバナンス関連のお仕事(たとえば機関設計の変更等)をさせていただいたり、(もちろん無償で)社外役員のご紹介などもさせていただく機会が増えました。そういった機会が増えると同時に「社外取締役を導入すると企業価値が上がるのか」とか「社外役員は不祥事を防止できるか」といった議論の虚しさ(怪しさ?)をひしひしと感じています。

Hinamalu/写真AC(編集部)

たとえばある上場会社に3人の社外取締役さんがいたとします(取締役の合計数は社内を含めて8名)。3人の出自は経営者OB、弁護士、著名コンサルタント。現実には、この3人の相互作用によって緩い関係が成立する場合もあれば、きわめて現経営者と敵対的な厳しい関係が成立する場合もあります。つまりどんな出自の組み合わせであっても、3人の組み合わせによる相互作用が重要であり、ガバナンス報告書に書かれているような個々の能力などあまり関係ないと思います。

また、同じ3人の組み合わせであったとしても、任期の古い順からA、B、Cなのか、B、C、Aなのかによっても社外取締役の活動の実相が変わります。A→B→Cの順で社外取締役に就任したために攻めにも守りにも厳しい職務遂行が果たせるのであって、B→C→Aという順番、もしくはBさんが退任してC→A→Dとなって全く役に立たない「ゆる~いガバナンス」という現実もあります。

ガバナンス・コードにおいて「取締役会の実効性評価」の実施というのが要請されています。すでに多くの上場会社で実施されており、実際に真剣に取り組んでみると、8人で構成されている取締役会の「雰囲気」(あえて「実効性」とは言いません)は、外から変えられるものではなく、たまたま8人が、その順番で取締役になった、ということによる相互作用によって作られる、というのがホンネのところではないでしょうか。

もし外から変えられることがあるとすれば、「35%を保有する大株主が、うちの会社を子会社化するらしい」といった噂が役員会に流れて、大株主から派遣されている社外取締役さん以外が「一枚岩になる」ということくらいかと。。

社外取締役が増える、となりますと、なんとなく「健全なリスクテイクに資する」とか「経営陣の暴走を止めることができる」という気がするわけですが、それは増員された社外役員制度を運用してみないとわからないですね。なんか得した気分でその会社の株を買ってみても、開けてみないとわからない、まさにお正月の福袋と同じです。

機関投資家の方々が、なんとか中身を覗こうとして袋に小さな穴を開けてみるのですが、「なんだ、お飾りばっかじゃねえか!」と後悔するだけかもしれませんよ(笑)。

PS…「福袋」といっても最近は中身が見えるものも多いので、昔のようなワクワク感がなくなってしまったかもしれませんが。実は私もお正月の家電量販店の「福袋」だけは購入してしまうのですよね。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録 42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年1月7日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。

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