構想が進むスマートシティへの賛否

2020年01月08日 14:00

世界最大の家電見本市、CES(旧 Consumer Electronic Show)がラスベガスで始まります。かつては本当に家電見本市だったのですが、現在は自動車各社をはじめ、世界最先端のテクノロジーと近未来の生活を提案する世界で最も注目される見本市の一つであります。

(写真ACから:編集部)

(写真ACから:編集部)

そして今年のテーマに上がりそうなのがスマートシティであります。

我々が今享受しているスマホを介した様々な技術、例えばセキュリティ、見守り、風呂のお湯張りといった便利さの追求だけではなく、AIを搭載した最新の冷蔵庫や洗濯機などがすでに家電量販店などにはお目見えしています。これを更に拡大したのがスマート住宅でエネルギー効率や室温管理、健康、環境への配慮や適合が備わります。我々がよく耳にする自動運転の車や電気自動車も近未来社会に必要です。

ドローンによる配達、暑すぎず寒すぎない気象コントロール(多分ドーム型の天井にシールドをつけるのでしょう)、買い物はもちろん電子マネーですが、顔認証でカードも財布も持たずということになります。食生活では健康管理をAIが提案し、財務管理ではお金の使い過ぎや将来設計をAIが提案します。

つまり、われわれが今、経験しつつある数々の便利なツールはスマートライフをするためのパーツの一つひとつということになります。これらを生活全般に取り込み、街全体で供給する仕組みがスマートシティであります。もやは完全にSFの世界かもしれません。

トヨタがスマートシティ開発に名乗りを上げます。静岡県裾野市にある工場跡地、70万平米の敷地を使ったスマートシティ建設を21年にも着工するそうです。実験としてはわかりますが、裾野市では職住接近が実現できないかもしれません。

北米では職住接近がスマートシティの前提の一つとなります。在宅勤務が当たり前になる時代が来るのかもしれませんが、それでも会社という組織上、社員の融合やコミュニティ(それこそリアルSNSの一環かもしれませんが)が必要でその前提に立てばやはり都市におけるスマートシティの実現化が重要になると思います。

そのコンセプトで今、進んでいるのがカナダのトロントであります。街の中心地からさほど遠くないところでグーグルの関連会社を通じて準備が進んでいます。ただし、規模は5万平米ですから上述のトヨタのそれに比べて相当小さく、街というより大規模総合開発の域を抜けません。もともとは77万平米程度の開発を目指したのですが、市民や当局を巻き込んで大論争になっている経緯があります。許認可も暫定の域を出ず、今年本格的な許可取得を目指すものと思われます。

大論争の理由はデータの取り扱いであります。スマートシティに住む限りあらゆる個人データはデジタル化されスマートシティ管理者に吸い上げられます。そのデータを表向きはビックデータとするので個人のプライバシーには触れないということですが、実態はすべてを握られているのです。すべてとは家計簿、貯金といった財務から体重、身長、既往症といった身体的データ、友人関係や会社関係、嗜好や趣味、行動パタン、判断基準…といったあらゆる分野になるでしょう。(もちろん、それをOKとした場合だろうと推測はしますが。)

つまり便利の代償に自分をさらけ出す必要があることにプライバシーを重んじる欧米では当然の議論となるのであります。

AIの進化について最大のハードルは倫理なのだろうと思います。人間の本来持つ感性や能力、資質等に対してデジタル化された技術とどこまで融合できるか、ということかと思います。特に技術の進化が人間の同期能力(=理解し、承認する能力)をはるかに超えるスピードで進むため、「技術は便利だと理解できるよ、だけど、俺、そんな世界は嫌だ」と拒否反応を示しているのであります。

これは世代を超えないとなかなか理解できないでしょう。例えば今の子どもたちはそれが当たり前だと思うかもしれないので個人データの「吸い上げ」に何ら抵抗を示さない公算は高いと思います。例えば中国で顔認証カメラがあらゆるところに設置されていますが、若い中国人たちはそれが当たり前でなんら抵抗を示さない傾向が見て取れます。日本でも海外旅行から帰ってきたとき、顔認証で入国していますが、あれでデータを抜き取られているという意識を持っている人は少ないでしょう。でも実際は個人情報を提供しているのです。

人間はデジタルではない、もっとアナログ的な良さがあると抵抗を示す限り、スマートシティへの賛否への議論が収まることはないでしょう。お前はどうなのか、と言われれば少しずつ、デジタルとメンタルの融合を進めているけれどこの乖離はもっと広がるので別に最先端の技術を追いかけず、自分のペースに任せて吸収していく、という感じです。もちろん、私の年齢がそうさせるのだろうと察しますが。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月8日の記事より転載させていただきました。

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