アメリカとイラン:二つの正義の衝突

2020年01月09日 14:01

アメリカのトランプ大統領の命令で、イランの革命防衛隊の「コッズ部隊」を率いるソレイマニ司令官が殺害され、両国の緊張が一気に高まった。

トランプ大統領(Gage Skidmore / flickr)、ソレイマニ司令官(Wikipedia)

この現象を単純に「他人を殺してはなりません」という市民道徳レベルで解釈するのは誤っている。

政治という現象が興味深くもあり、残酷でもあると思うのは、正義がひとつではないからだ。二つの正義が衝突する所に政治の難しさがあるといってよい。

ソレイマニ氏はイランの立場から見れば、「司令官」であり、「英雄」であろうが、アメリカの立場からみれば「テロ組織を率いるテロリストの親玉」ということになる。私にはどちらが正しいと判断することが出来ない。ただ、自由と民主主義、そして基本的人権を尊重する日本国民としては、アメリカの立場に立たざるをえないと「政治的に」判断するだけだ。

私はイスラム教徒でないし、ましてやシーア派ではない。従って、彼らの論理に従うことは出来ない。しかし、絶対的に自由と民主主義が正しいと断言することは出来ない。「リベラル」の人々は「自由と民主主義」を普遍的な正義と信じ込むが、その態度はいささか傲慢だ。自由と民主主義を尊重せず、自らの信じる神の命に従って生きるという立場があることは否定できない。

日本では誤解している人も多いが、他者の論理を理解することは、他者の論理に従うことを意味していない。その論理を理解するが故に、その論理には従わないということもありうるのだ。

例えば、私は元日本共産党院でジャーナリストの篠原常一郎先生と『なぜ彼らは北朝鮮のチュチェ思想に従うのか』という本を出版させていただいた。本書では北朝鮮の人民を統治する狂気じみた主体思想の論理、そしてその論理に従って、日本国内で活動する人々の実体について書いたが、私も篠原先生も主体思想の信奉者ではない。異形の国家、北朝鮮の行動を理解するためには、彼らの論理を知ることが必要だと考えるから、この思想を調べたのだ。

イスラム教徒でない私としては、イランの行動を支持することはできない。ただ、彼らの論理を調べておくことは必要だと考える。

イランとアメリカの関係については下記の動画で紹介しましたのでご覧ください。

岩田 温  大和大学政治経済学部講師
1983年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、同大学大学院修了。専攻は政治哲学。著書に『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)『人種差別から読み解く大東亜戦争』『「リベラル」という病』(彩図社)、『逆説の政治哲学』(ベスト新書)、『平和の敵 偽りの立憲主義』(並木書房)、『流されない読書』(扶桑社)などがある。ブログ『岩田温の備忘録

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