台湾総統選にも影…世界はネット諜報戦時代に突入した --- 本元 勝

2020年01月13日 06:01

台湾で総統・副総統及び立法委員選挙が11日、投開票された。総統・副総統選は事前予想通り、現職である民主進歩党の蔡英文氏が過去最高の817万票を獲得し、再選を果たした。

勝利を祝う蔡英文陣営(民進党Facebookライブより)

また、立法委員選も民主進歩党が113定員の過半数を超える61議席を獲得し第1党となった。しかし、立法委員選の総獲得票数において民進党と国民党の差は、わずか8.7万票差の僅差であり、ねじれた可能性もあった訳で、最後まで台湾民意は揺れていたと言えよう。やはり、香港問題が台湾総統選に多大な影響を与えたことは間違いない。

台湾国民の政治に関する関心は老若男女に関わらず、以前から強い。そして、特に若い世代の政治への関心の高さには驚くべきものがある。台湾では特に若い世代の得票率が高く重要となるため、以前から政治の選挙活動は、若者に影響力を持つネットタレントなどを多用した広報・宣伝活動を行っている。

特に今回の選挙では、日本在住の台湾人の留学生や社会人、特に20代の多くの若者が選挙に投票するために、わざわざ台湾に帰国したという。実際、選挙前日金曜日の東京-台湾行きのフライトは多くの便が満席状態で、当日価格は普段の3倍近くに跳ね上がっていた。

去る12月31日、蔡政権は駆け込みで「反浸透法」という法律を可決した。これは選挙期間中、外国の敵対勢力とみなされる団体やそれらに所属又は支援されている個人が、政治や選挙に影響を及ぼすことを禁止した法律である。

ちなみに、この中国語の浸透とは日本語では工作活動と訳される。これらに違反した場合、懲役5年以下、又は1,000万NTD(約3,600万円)の重たい罰が科される。

蔡政権がこの法律を急造した理由には、オーストラリアに亡命申請した中国の元工作員を名乗る男性(王力強氏)が、約1年前に行われた台湾統一地方選挙の際に、台湾でネット専門工作チームを編成し、ネット世論を誘導する工作や資金提供をしたとは証言したことが11月下旬に豪州メディアを通じて判明したからだという。また、この男性は香港での工作についても証言している。

中国の工作活動を告白した王力強氏(BBCニュースより)

外国勢力や敵対的集団、組織の政治や選挙介入といえば、スパイ映画さながらではあるが、他にも近年ではアメリカ大統領選、英国EU離脱住民投票、英国総選挙、香港デモなどに外国の介入が疑われている。そして、これらに共通していると思われるのが、SNSや動画媒体による情報発信と拡散が行われ、デモが頻発していることである。

すでに世論形成や醸成の仕組みは、完全にSNSや動画メディア等に移行しており、これらが過去に戻ることはないだろう。ネットによる情報収集とコミュニケーションが進んだ大きな理由のひとつには、選択肢の多さが挙げられる。そして、利用者がその大量の記事や書き込みの中から信用度を図るための方法として、無意識に選んでしまっているのが、当該情報の量なのである。

そして、無条件で情報が多数存在すれば信用する傾向が否めない。よく話題となるネットの炎上も同じ理屈で発生している。意見が多い方が善であり、多数民意であると思い込み賛同してしまう。

photoB/写真AC

「あなたは、何故その意見や思考に行きついたのか?」と問えば、ネットにたくさん情報が出ているから、みんなが知っていて、それは既に常識であり、間違いない事実である。何ら根拠もなく、実際に見たことも、直接聞いたこともない事柄に関し、情報がたくさん出ているからというだけで盲信してしまう危険性。

今ネットには無数の誘導が敷かれている。これが、企業のマーケティング程度なら、何ら問題はない。しかし、政治や選挙にまで影響を及ぼすとなると、国や社会の体制や仕組みの崩壊にまで繋がるリスクすらある。

ひとつの組織や団体が、インターネット上で多数のアカウントを持ち、それらを駆使し大量のニセ情報と世論を構築し、市民を大勢と見せ掛けた方向に誘導できるのである。当然、その危機は、日本国内も例外ではない。

しかし、ネット工作により大衆煽動が容易になったことで、世界中で大規模な暴動や紛争はいとも簡単に起こすことが可能になり、戦争でさえわずかな時間で起こる可能性すら出てきた。

昨年、アメリカ議会が香港介入を議決した日、中国の主要なSNSが反米コメントで荒れた。普段は政治に関心を示さず、あまり口にもしない中国人の反米感情を見て、米中開戦に対する不安を超えた恐怖を覚えたのを記憶している。

これもフェイクかもしれないが、フェイクでも人を煽動できる現実が、今世界中にあるのである。そして、そこには当然日本も含まれていることを、全ての日本人は今すぐ認識する必要があるのではないだろうか。

本元 勝 アジアM&Aコンサルタント

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