ゴーン逃亡で暗躍の支援組織の違法性を追え

中村 仁

人質救出もする民間軍事警備会社

日産の前会長のゴーン被告事件のハイライトは海外逃亡であり、被告のレバノン人脈の警備会社が関与したと、伝えられています。この海外逃亡が密出国で違法なら、支援した組織も違法な犯罪に荷担したことになります。とにかく穴だらけの危機管理網が国際的に知れわたりました。多数の外国人が夏の東京五輪で来日することだし、日本は危機管理網を急ぎ洗い直す時です。

TBS NEWSより編集部引用

法務・検察当局はゴーン被告、その妻を国際警察機構に国際手配しました。逃亡支援組織ついても足取りを明らかにし、危機管理網がやすやすと破られないようにする必要があります。神出鬼没の組織であっても、総力をあげて暗躍の実態に迫るべきです。

このような逃亡支援組織の存在を最初に報道したのは、米紙ウォールストリート・ジャーナルでした。「組織は複数の国籍10―15人で構成され、数か月前から準備を始めた。日本を20回以上訪問し、10か所以上の空港を下見し、穴を見つけた」(1/7)と。下調べのための出入国は違法でなくても、違法な脱出の手引きには違法性がありましょう。

元軍団トップがゴーンの親族

その後、読売新聞が「レバノン人脈が暗躍/ゴーン被告の親族と接点/民間軍事警備は海外で一般的」(1/11)という見出しの記事を掲載しました。

協力者はレバノン生まれで、民兵組織・レバノン軍団に所属し、その後、警備会社から仕事を請け負い、イラクやアフガンで人質救出を専門にしていた。軍団の元最高司令官の妻がゴーン被告の親族だ。

リスクがあってもカネになるのでしょう。

さらに軍事警備組織といえば、自衛隊かガードマンの警備会社くらいしか思いつかない日本人とって、「海外の実態というのは、そういうことなのか」という情報が書かれています。

軍事警備会社は、正規軍だけては手が回らない紛争地域での物資輸送、要人警護が主だった。その後、戦闘そのもの、軍事コンサルティング、人質救済まで手掛けるようになった。顧客も国家、国際機関、民間会社、個人に拡大した。

「報酬は軍人の10倍。優秀な軍人が転身している。

報酬が10倍になるなら、軍をやめ、小回りのきく工作部隊を組織するのでしょうか。

敬礼するグリーンベレー隊員(※写真は本文に関係ありません Samuel King Jr/flickr)

“007並み”の暗躍で逃亡支援

“007並み”の暗躍をする組織がいくらでもあるというのでしょう。ゴーン被告の自宅に監視カメラを設置、1か月分の映像をまとめて裁判所に提出、探偵会社が被告を尾行という程度では、どうしようもない。おまけに「保釈逃走罪」が法律に規定されてない。

逃走に気づいても逮捕ができないのか。それとも、保釈条件に違反すると、保釈は取り消しになる。つまり再び拘留されるから、逮捕と同じことになるという解釈でしょうか。

中東やアフリカで経済活動をする日本企業は多いから、日本企業を顧客にしたい警備会社が日本に支店を置くこともあるそうです。紛争地域では、違法か合法かを問う意味がないようなものの、日本で検察に逮捕され、保釈中の人物を大きな箱に隠し、出国させることは許されない。出入国管理法違反のある通関手続きだったら、違法な犯罪です。

ゴーン被告は逃亡費用として、10億円とか20億円とかのカネを払ったとか。そこから現地関係者に違法な賄賂、買収工作の資金も恐らく支払われたのではないでしょうか。

ゴーン被告の乗ったプライベート・ジェット機のパイロットら7人を、トルコ当局が拘束したとの報道です。国際的な情報交換を密にし、真相の解明に迫ってほしいものです。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。