ゴーン被告会見:ここは情報戦に負けないでしっかり主張して!

8日に日産自動車の前会長カルロスゴーン被告が逃亡先のレバノンで記者会見し、メディアで大きく取り上げられていました。

「陰謀」「起訴事実はクーデター」「日本政府の関係者も関与している」「証拠文書とともに実名を挙げる」などと、会見前から言われていましたので、私も注目をしていました。一問一答の質疑などを私もニュースで見ましたけれども、見る限りでは一貫して無実と言ってきたこと、あるいは陰謀とまで言ってきたことについての納得できる説明はありませんでした。

ゴーン氏は、逃亡直後のコメントでこう言っていたんですね。

「私は今、レバノンにいる。もはや、有罪が予想される日本の偏った司法制度の下でのとらわれの身ではなくなった。そこでは差別がまん延し人権が侵害され、日本が順守すべき国際法や条約が全くもって軽んじられていた」

「私は裁判から逃れたのではなく、不公平さと政治的な迫害から解き放たれた。ようやくメディアと自由にやりとりできる身となり、来週から始めるつもりだ」

ということは、言いたいから自由になった、メディアともこれで自由にできるんだということなわけですけれども、しかし会見の程度であったならば日産自動車の資金の私的還流という、特別背任などの罪の疑い濃厚と感じます。

ゴーン被告は「日本における裁判の結果の有罪率が99.4%だ!」という。この高確率をとらえて有罪が先にありきだというふうに批判をしました。日本の最新のデータでは有罪率99.9%と高いわけですが、ちなみにアメリカ99.6%、そしてフランスで重度犯罪の1審では92.6%、イギリスは98%、ドイツは96%となっています。

程度の差はあれども、他の国も低くはない、むしろ高いと言えるわけです。さらに日本の場合は、起訴する段階で警察はよく、「公判に耐えられるか、耐えられないか」というようなことを気にすると新聞などでも記事になっています。

「公判に耐えられる」すなわちこれは裁判に勝てるというケースは起訴するのですが、「公判に耐えられない」すなわち、裁判では厳しいなという場合は不起訴処分(起訴されていないので有罪でも無罪でもない)という形を取ることもあります。そういう意味で、日本が不当に高いということではないと私は思います。

さらにゴーン被告は、キャロル夫人と会うことを禁止されていたと思っています。それは、キャロル夫人が資金管理をしていたとされる会社の代表で、事件関係者と接触していたとみられていたからです。要するに共謀者の疑いがあることから、接触禁止という処置がされたので、これは正当性があると思います。

ゴーン氏の会見を受けて日本の検察も異例のコメントを発表しています。

被告人ゴーンは、犯罪に当たり得る行為をしてまで国外逃亡したものであり、今回の会見内容も自らの行為を不当に正当化するものにすぎない。

被告人ゴーンが約130日間にわたって逮捕・勾留され、また、保釈指定条件において妻らとの接触が制限されたのは、現にその後違法な手段で出国して逃亡したことからも明らかなとおり、被告人ゴーンに高度の逃亡のおそれが認められたことや、妻自身が被告人ゴーンがその任務に違背して日産から取得した資金の還流先の関係者であるとともに、その妻を通じて被告人ゴーンが他の事件関係者に口裏合わせを行うなどの罪証隠滅行為を現に行ってきたことを原因とするもので、被告人ゴーン自身の責任に帰着するものである。

また、ゴーン被告は「1日8時間の取り調べがあり、これも非人道的だ」と発していましたけれども、これに対して検察は「1日4時間近くの取り調べだった」と反論しています。

もう皆さんおわかりの通りでゴーン被告が言っていることと検察が言っていることのどちらが本当なんだ?というような議論ですね。本来は裁判の中でしっかりと争ってほしいことなんですが、もはやこれは日本国外での情報戦になっているわけです。

この情報戦次第では、日本の司法は信用できないとか、外国人差別があるとか非人道的だとかそういったことになりかねないわけです。日本の検察はしっかりした取り調べを行ってきたと私は信じたいですけれども、そうであるならば、しっかりと主張してもらいたいと思います。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年1月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。