バロンズ:ダウ3万ドル超えでも、この指標の注意

2020年01月20日 06:00

バロンズ誌、今週のカバーはダウ3万ドル乗せ見通しを掲げる。1月13日週にダウは1.8%高の29,348.10ドルまで上昇しただけに、ダウの3万ドル乗せ予想はそれほど勇気ある見立てとは言えない。しかし、3万ドル突破はバロンズ誌が2017年に予想した当時より5年早くやってくることになる。

ダウの急速な上昇(年初の約2週間で2.8%高)をめぐり、市場関係者の一部は米中貿易協議の第1段階の合意を挙げ、ある者はFedの保有資産拡大を挙げる。何か普通でないことが起きているかのようだが、いずれにしても投資家は①低金利、②低インフレ、③米企業の膨大なキャッシュリターン――に反応しているのではないだろうか。

幾つかの指標をみると、強気相場が終了するようには見えない。例えば、S&P500種株価指数は2019年10月2日から2020年1月16日までの74日間に15%上昇したが、これは2009年6月19日までの74日間では29%高、1999年1月25日までの74日間では29%高だった。今の15%高は1997年や1968年に近く、これらの時期は強気相場が幕を下ろした時点に相当しない。ダウ3万ドルは通過点に過ぎないと考えられよう。

移動平均の乖離をみても、同様なことが言える。足元で20日、50日、100日、200日の移動平均は全て上昇しており、これら4つの移動平均線が全て61日以上にわたって上昇したのは、1928年以降で11回しかない。こうした状況が発生してから1年後のリターンは中央値で11.6%高であり、例外はブラックマンデーが発生した6ヵ月前の1987年4月のみだ。ダウの3万ドル突破は、通過点に過ぎないのではないか。詳細は、本誌をご参照下さい。

当サイトが定点観測するアップ・アンド・ダウン・ウォール・ストリート、今週はカバーに反し慎重な米株見通しを取り上げる。抄訳は、以下の通り。

(カバー写真:Glen MacLarty/Flickr)

米株市場のこの下落要因に気をつけよ―Beware This Looming Stock Market Killer.

米債市場は足元、ダウが3万ドルへ向かう過程で最良の支援材料のように見えるが、米債市場は米株高の障害となりうる日が来るのだろうか?

米債は低い利回りにより米株に投資妙味を与え、米株以外の選択肢はないというTINAシンドローム(There Is No Alternative to stocks)を高めてきた。S&P500の配当利回りは、米10年債利回りとほぼ変わらない。

そして、低金利は企業の借入を支えてきた。年初から投資適格級の社債発行高は600億ドルに達し、利回りが上昇中だった2018年の同時期を70%近く上回る。金利低下が自社株買いを支え、1株利益を押し上げてきた。怒涛のような社債発行は幸い、投資家の強い需要で吸収されている。債券ファンドへの資金流入は足元、年間ベースで1兆ドルに達する勢いだ。

米株と米債の良好な関係は、予想されていない利回りの上昇によって脅威にさらされかねない。一部のエコノミストによれば、インフレの死を宣言するのは時期尚早だ。

BCAリサーチのピーター・ベレジン首席グローバル・ストラテジストいわく、利回りの急伸は、生産性や賃金の上昇が単位労働コストを押し上げる時を除き、物価の突然の上振れによってのみ生じてきた。また、企業が労働コストを上乗せできない場合、企業の利ザヤは縮小する。物価上昇が利回りを押し上げる場合などを含め、株式にとってはポジティブな材料ではない。

オカシオ―コルテス下院議員は「ダウが上昇する一方で賃金は伸びていない」と批判するが、賃金は確実に上昇しつつある。米12月雇用統計では前年比で3%を割り込み鈍化したように見えるが、アトランタ地区連銀が公表する賃金伸び率トラッカーによれば、前年比で3.7%上昇していた。ブリーン・キャピタルによれば、米雇用統計とアトランタ地区連銀の数字の違いは、米雇用統計では高賃金が多いベビーブーマーが引退に合わせ減少すると共に、新たに労働市場に参入した低賃金の若者が増加し、賃金の伸びを抑えていることが背景にある。対して、アトランタ地区連銀の場合は賃金の中央値であり、こうした歪みを低減させうる。

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(作成:My Big Apple NY)

さらに、Fedは堅調な経済に反し予防的利下げに踏み切った。かつての利下げは雇用鈍化をもたらすような景気減速局面で行なわれてきた半面、今回は潜在成長を超える経済拡大期、加えて資本市場や労働市場が力強さを維持するなかで実施された。バンク・オブ・アメリカのエコノミストは「Fedは貿易戦争のショックを緩和させるだけでなく、次の景気後退局面までに労働市場の力強さを維持し、物価を目標値の2%を上回る水準へ引き上げようとしている」と分析する。

Fedによる年内金利据え置きは、明らかに公開市場操作で流動性を潤沢にさせる目的があるのだろう。とはいえ、企業が社債発行に積極的なだけに、長期債利回りが上昇しないとは限らない

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(作成:My Big Apple NY)

加えて、連邦政府は20年債を発行するように、長期債ゾーンの供給を拡大する方針だ。マイナス金利の市場規模も、2019年の18兆ドルから直近では11兆ドルへ縮小しつつある。こうした状況下、BCAリサーチは保有年限の短期化を推奨する。

2018年後半に米10年債利回りが3%を超えた局面で、ナスダックは20%安となる弱気相場入りに直面した。利回りの上昇がゆるやかでも、ダウは3万ドル超えに合わせつまずいてもおかしくない。


ダウ3万ドル突破を視野に入れる段階で、個人投資家の間で楽観論が広がりつつあります。独アリアンツによる個人投資家サーベイでは2019年10~12月に39%が米株相場の急落を予想するにとどまり、前期の48%から急低下していました。同様に、バンクレートの金融見通し調査でも、個人投資家の43%が2020年に家計が上向くと予想。2018年の税制改革法案施行から3年目を迎えながら、2019年の44%と、さほど変わりません。果たして彼らの楽観度は正しいのか、Fedが年内据え置きで経済をサポートするなか、トランプ政権の政策がカギを握ります。


編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK -」2020年1月19日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。

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