朝鮮半島、2020年の展開

岡本 裕明

2020年の朝鮮半島情勢がどうなるか、このところ、目立った動きがなく、ニュースもやや古いものの焼き直しが多くなっていますが、ここからどうなるのか、考えてみたいと思います。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

朝鮮半島の関係を考える場合、切り口がいくつかあります。北朝鮮/アメリカ、韓国/アメリカ、北朝鮮/韓国、北朝鮮/中国が軸でここに日本やロシアなどが加わってきます。どの関係もシーソーのような連携関係があり、どちらかに偏るとどこかに歪ができるという状態にあります。

この中でまず注目したいのが韓国で行われる4月15日の総選挙があります。韓国総選挙は一院制、任期4年で議席数300を争います。現勢力図は中道左派の「共に民主党」が129、中道右派の自由韓国党が108、中道右派の「正しい未来党」が20などとなっています。

国民世論は革新3割、保守3割、無党派4割とされ、無党派の取り込みがキーになります。チョグク元法相問題は若者の無党派に悪影響を与えたとされ、また若年層の失業率が7%を超える中、経済音痴の文大統領への批判の声は高まりそうです。

韓国は総選挙に向けて政府高官経験者が職をなげうって政治家になる動きが異様に強く、「共に民主党」の候補者の3分の1がそのような経歴者となっています。一部からは政府で勤めたのは政治家になるための踏み台だったのか、という見方もあり、これもまた冷たい目線で捉えられています。

個人的にはこの選挙は与野党が思った以上に接戦ないし、逆転劇、ないし、与党が連立政権を強いられる公算もあり、文政権には厳しい状況になる可能性を見ています。特に文大統領が北との融和策を通じて踏み込んだ関係を築くことで自身の評価につなげようとしてきたものの金正恩氏からは冷たい姿勢、アメリカからは厳しく監視されている中、ポイントゲットできるものが目先何もなく、韓国国内が大きく揺れる公算も無きにしも非ず、と考えます。

一方、アメリカとの関係ですが、駐留米軍の費用負担への圧力は今後、より一層高まるとみています。トランプ大統領はイランとの外交戦で一応の節目をつけ、中国との通商交渉も第一弾が終わり、次のターゲットに目線を移すとみています。その一つは対北朝鮮と米韓関係ではないかとみています。総選挙を控える韓国に更なるプレッシャーをかけ、国内世論を変える作戦にあるとみています。

これはトランプ大統領自身も大統領選を控える中、「戦勝品」をどれだけ積み上げられるかが選挙対策になると考えるはずで、過去4年、まだ十分に踏み込めず、明白な成果もない朝鮮半島情勢にいよいよメスを入れる公算はあるでしょう。

では北朝鮮はどうなのか、ですが、ここにきて北朝鮮の外務大臣を軍出身者であるリ ソングォン氏を任命したようであり、より強硬なスタンスで臨んでくるのではないか、とみられています。しかし、これは北朝鮮をより難しい立場に追い込む可能性はあり、ソレイマニ司令官暗殺を見た金正恩氏は「口撃」はできるものの外交的勝利を得ることはないとみています。

中国はそんな北朝鮮に手を差し伸べるか、でありますが、今はタイミングが悪いと見るのではないでしょうか?基本的には北朝鮮を取り込みたいと考えていますが、人権問題で外圧があり、台湾でも負け、国内問題も山積している中、火中の栗を拾う余裕がないように感じます。

こう見ると個人的には今年前半に朝鮮半島に対してアメリカによる強い影響力が顕示されるように感じます。文大統領はレイムダック化、金正恩氏も八方ふさがりになり朝鮮半島の次の動きに向けた試金石となってもおかしくないとみています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年1月22日の記事より転載させていただきました。