「二段階革命」を狙う日本共産党「野党連合政権」の危険性

日本共産党の「二段階革命」とは何か

日本共産党は「二段階革命」を党の基本方針としている。「二段階革命」とは「現代日本の異常な対米従属と大企業・財界の横暴な支配を打破する民主主義革命(「民主連合政府」)をまず実現し、次いで社会主義・共産主義革命(「共産党政府」)の実現に進む日本共産党の革命戦略である」(党綱領四及び五参照)。

すなわち、日本共産党の究極の目的は、「二段階革命」によって、日本を共産化する「共産党政府」を樹立し、「共産主義革命」を実現することである。

2019参院選共産党公約より

「二段階革命」は自由民主主義体制と根本的に矛盾する

しかし、日本共産党が「二段階革命」によって「共産党政府」を樹立し、「共産主義革命」を実現することは、日本社会及び現行憲法体制の根幹である自由民主主義体制と根本的に対立し矛盾する。

なぜなら、旧ソ連、旧東欧、中国、北朝鮮、旧民主カンボジア(「ポルポト政権」)をはじめとして、これまでに出現した「共産主義国家」のうちで、自由と民主主義を尊重し、これらと両立した共産主義国家などは歴史上一切存在しないからである。

このことは、旧ソ連共産党による徹底した言論統制、人民の敵、大量粛清、強制収容所、旧東ドイツ社会主義統一党の秘密警察(「シュタージ」)、密告制度、北朝鮮労働党の恐怖政治、公開銃殺、中国共産党の文化大革命、天安門虐殺事件、香港、チベット、ウイグルへの人権弾圧、旧民主カンボジアポルポト政権の大量虐殺など、枚挙に暇がない。

これらの現象は、いずれも、共産主義国家のイデオロギーである「マルクス・レーニン主義」(日本共産党はこれを「科学的社会主義」と称している)が、暴力革命による「プロレタリアート独裁」の樹立を理論的核心とするものだからである。

「プロレタリアート独裁」とは、「資本主義から共産主義への過度期の国家がプロレタリアート独裁」(マルクス著「ゴーダ綱領批判」)であり、共産主義革命に反対する反革命勢力を法律によらず暴力で弾圧し殲滅する労働者階級の権力であり、その実態は「共産党一党独裁」である(レーニン著「国家と革命」、同「プロレタリア革命と背教者カウツキー」、スターリン著「レーニン主義の基礎」)。

このような「プロレタリアート独裁」即ち「共産党一党独裁」が自由と民主主義に基づく日本社会及び現行憲法体制と根本的に対立し矛盾することは言うまでもない。しかるに、日本共産党は、現在も党規約2条で「マルクス・レーニン主義」(「科学的社会主義」)を党の理論的基礎とし、「社会主義をめざす権力」(党綱領五=17)と称して、「プロレタリアート独裁」を放棄せずに堅持しているのである(宮本顕治著「日本革命の展望」、不破哲三著「人民的議会主義」)。

「敵の出方論」という名の暴力革命を放棄しない共産党

のみならず、日本共産党は、「革命が平和的か暴力的かは敵の出方による」との「敵の出方論」(宮本顕治著「日本革命の展望」、不破哲三著「人民的議会主義」)を現在も放棄せずに堅持している。

これは、敵即ち反革命勢力の出方によっては暴力的弾圧・殲滅を排除しない、形を変えた「暴力革命」に他ならない。

会談後、報道陣の取材に応じる枝野、志位両党首(日本共産党HPより)

「二段階革命」の戦略としての野党連合政権

日本共産党は、安倍自民党政権打倒を目指し、野党共闘による「野党連合政権」の樹立を立憲、国民などの他の野党に呼びかけている。

立憲の安住淳国対委員長は、1月14日共産党28回党大会に党を代表して出席し、「共産党との協力の先には政権が見えてくる」などと述べ、近い将来共産党と政権を共にするかのような挨拶をしている。

また、共産党の志位委員長も、昨年12月19日のBSフジ「プライムニュース」で、推されれば総理大臣を引き受けると述べている。

しかし、共産党にとっては、「野党連合政権」は、あくまでも「二段階革命」による「共産党政府」樹立と、「共産主義革命」実現のための革命戦略に過ぎず、「野党連合政権」が終着駅ではあり得ない。

したがって、立憲、国民などの野党各党は、共産党のこのような革命戦略の危険性を認識し警戒を怠るべきではない。

自由民主主義社会は体制破壊にも寛容であっていいのか

日本共産党の「非合法化」については様々な意見があろう。少なくとも現行憲法体制を守っている限りは、その存在と、言論の自由及び政治活動の自由は認められるべきであるとの意見もあろう。

しかし、他面において、「自由と民主主義」に基づく日本社会と現行憲法体制に根本的に対立し矛盾する「マルクス・レーニン主義」(「科学的社会主義」)を党是とし、「二段階革命」によって「共産党政府」を樹立し、「共産主義革命」の実現を党綱領で堂々と宣言する政党の存在が、「自由民主主義社会」において果たして許されるのかどうか、については検討の必要があろう。

なぜなら、自由民主主義社会は、自らを否定し破壊する政治勢力に対してもなお「寛容」であり続けるべきかどうかの根本的問題だからである。

これについては、ドイツ・ワイマール憲法体制下で「民主主義的選挙」を利用して、全体主義独裁体制を築き、自由民主主義体制を破壊したナチス・ドイツの深刻な教訓がある。このため、自由民主主義体制のドイツでは現在でもかかる言論の自由を認めず、非合法化されている。極めて妥当であると言えよう。

日本共産党についても同じことが言えるのではないか。少なくとも、日本共産党が西欧諸国の多くの共産党のように、共産主義イデオロギーである「マルクス・レーニン主義」(「科学的社会主義」)及びそれに基づく「プロレタリアート独裁」を党綱領において明確に放棄しない限り、日本共産党の「非合法化」についても検討の必要があると言えよう。周知の通り、米国、韓国、旧西ドイツ等において、共産党は事実上非合法化されている。

なお、日本共産党については、これまでのアゴラ掲載の拙稿を参照されたい(時系列)。

加藤 成一(かとう  せいいち)元弁護士(弁護士資格保有者)
神戸大学法学部卒業。司法試験及び国家公務員採用上級甲種法律職試験合格。最高裁判所司法研修所司法修習生終了。元日本弁護士連合会代議員。弁護士実務経験30年。ライフワークは外交安全保障研究。